日本人はもっと怒っていい

AIJ投資顧問事件の浅川和彦を覚えていらっしゃるだろうか。

浅川は厚生年金を中心に、顧客から預かった資金の大半にあたる1092億円を損失させた。全国17の基金から248億円をだまし取ってもいる。基金に加入する企業数は3000社にのぼり、一部しか返済できていない。

浅川と共犯2名は昨年6月に逮捕。今月2日、東京地裁で検察側の求刑があり、浅川に懲役15年、3被告に計218億円の追徴金を求めた。もちろん求刑の段階であり、実際の量刑がどれくらいになるかはわからない。

実刑は間違いないだろうが、「この程度でいいのか」というのが個人的な感想である。

またアメリカとの比較で申し訳ないが、2008年12月に詐欺罪で逮捕されたバーナード・マドフという男がいる。ナスダック元会長であり、自ら証券会社を起こして投資家をだました。手口が浅川に似ている。

ただマドフ事件の場合、被害総額が3兆円を超えていたこともあり、裁判所は日本ではあり得ない量刑を言いわたす。禁固150年である。71歳の時に言い渡されたので終身刑という意味である。

しかも懲役ではなく禁固、つまり「死ぬまで独房にいろ」というメッセージだ。それくらい重い罰だった。

アメリカでは禁固100年を超える量刑が言い渡されることがしばしばある。懲罰的な意味合いが含まれる。民事事件でも同様である。被害額が1000万円であるのに対し、懲らしめるという意味で1億円ほどの損害賠償を言い渡したりする。

その背景には、極悪な犯罪者に関しては更生などという悠長なものは念頭にないということだ。それよりも、再び社会に出してはいけないと考える。私はこの論理の方が正しいと思う。日本の量刑はあまい。

マドフは現在、ノースカロライナ州の刑務所に服役中だ。09年、同じ受刑者に殴られて鼻の骨と肋骨を折られている。マドフの証券会社に投資し、損害を被った男だという。