大局と局所

    

by the White House        

                                         

普天間基地の移設先が名護市辺野古に落ち着きそうである。 

今さら鳩山のふがいなさと安全保障問題での意識の低さを語るつもりはない。

結果的に、アメリカ側の主張に負けたということである。最初から辺野古しかないことは、この問題を追ってきた人であればわかっていた。

相撲でいえば、鳩山は立ちあい後まず右にかわり、けたぐりを試みたが相手はまったくたじろがず、そのあと前みつをとって頭をつけて内無双を打ったがそれも効かず、最後は左四つがっぷりに組まれ、横綱(アメリカ)万全の体勢のまま寄り切られたということである。

23日に再び沖縄を訪れた鳩山は知事の仲井真に詫びをいれた。

日米で普天間基地移設に合意ができた1996年の日米特別合同委員会(SACO)からすでに14年。自民党のできないことが民主党では可能、と期待されたが無理だった。

すでにいろいろなメディアで書いたり発言しているが、普天間はいまでも「瑣末な問題」であって、本来ならば首相が出ていくような案件ではない。アメリカで言えば国務・国防両省の次官補レベルで解決すべき問題である。

ブッシュ政権時代の日米交渉担当者が以前、私にこう述べた。

「日本は一坪いくらだとか、滑走路を数メートルずらすとどうなるとか、局所的な議論に終始しがちだ。なぜもっと大局的に基地問題を捉えられないのか」

この指摘は鳩山の思考回路にも見事に適用できる。首相は日米だけでなく、東アジアの近隣諸国にも日本の安全保障政策のビジョンを示せなくていけない。

リーダーとして当然持つべき高い見識があれば、普天間の移設など自民党時代もふくめて10年前にコトが片付いていなくてはいけない。

いまでもオバマは普天間などほとんど気にかけていないはずである。何しろいまでもイラクとアフガニスタンで戦争をしているのだ。自国の兵士が死傷しているのである。それはそれでアメリカの大きな問題ではあるが、スケールの違いは歴然としている。

鳩山が沖縄を訪れて仲井真にコウベを垂れた日、オバマはニューヨーク州ウェストポイント(陸軍士官学校)に足を運び、新しい安全保障ドクトリンを近く発表すると述べた。一国の指導者として、やるべきことをやっているという印象である。

大統領や首相になる政治家は安全保障問題と経済問題だけは精通していなくてはいけない。これはMUSTである。(敬称略)