生まれて初めて千代田区千鳥ヶ淵の桜を見にいった。
皇居のお堀にそって約700メートル。260本の桜が花弁を風にそよがせていた。折り重なるように枝をのばした木々は花のトンネルをつくり、見物客がそこを抜けていく。
木の下での宴会がまったく見られないところがいい。
薄ピンクの花冠をよく見ると、どこか寂寥感を漂わせている。短い命を象徴しているかのようである。お堀に垂れさがるようにして咲くここの桜は、「咲き誇る」というより「咲きこぼれる」という表現がふさわしい。
木々の本数ではここを勝る名所がいくつもあるだろうが、賑やかにして寂寞(せきばく)な桜はそう多くはない。
じつに日本らしい桜である。