ノーベル賞受賞のコツ

オバマがノーベル平和賞を受賞したことで、世界中に賛否両論が渦巻いている。

私は「平和賞にあたいするだけの功績はなにも残していない」という考えなので、個人的にオバマへの愛着はあっても、受賞そのものには反対である。今年1月のブログに、オバマはノーベル平和賞を取るかもしれないとは書いたが( 参照:So long, Bush!)、中東和平を実現させてからという注文をつけた。

オバマはいまだにその分野で大きな1歩さえ踏み出せていない。プラハでの核兵器廃絶への大胆な演説が評価対象ともいわれるが、それとて成果という段階にさえ至っていない。前向きな政治姿勢に対してということだけであれば、評価が甘い。「期待賞」ということであれば極めて異例である。

なぜノーベル賞を受賞できたかという点で、私は一つ思いあたることがある。

90年代半ば、ジョージア州アトランタでノーベル文学賞受賞者の集いがあり、取材したことがある。生存する受賞者がほとんど顔をそろえていた。大江健三郎も出席し、彼に話を聞いた。またナイジェリアの詩人、ウォーレ・ショインカとも話をした。

そこでわかったことがある。それはノーベル賞を取るコツとでもいえるものだ。

文学賞の場合、まず英語で多くの作品が出版されていなくてはいけない。さらに重要なのは歴代の受賞者が「次は誰にするか」という時、推薦する権利があり、影響力を持つということだ。大江はショインカだけでなく、他の受賞者を受賞前から知っていた。もちろんこれだけが理由ではないが、ひとつの力にはなる。

今年の平和賞には205人がノミネートされていた。200倍強の倍率でオバマが選出されたのは、オバマに好意的と伝えられる05年受賞者のムハンマド・エルバラダイや、07年に受賞したアル・ゴアの推薦があったからかもしれない。しかしオバマが「自分を推して」とは言わなかっただろう。

いずれにしても、彼には前を向いて走ってほしいだけである。(敬称略)

        

       By the White House

タイフーン・メロウ

 

        

台風18号が本州を過ぎ去った。数日前、秋雨前線とぶつかるので大雨を降らせると聞いた。関東地方には8日の”夕刻”に通過するとも聞いた。どちらも当たらなかった。コンピューターを導入した予報でも、翌日のことさえわからない。株価の動きに似ている。

18号は国際コード名ではメロウという。ご存じの方も多いだろうが、台風やサイクロン、ハリケーンには国際コード名として男女の名前が交互につけられる習慣がある。

メロウと聞くと、多くの方は「芳醇な」という意味を思い浮かべるかもしれない。だが違う単語である。「メロウな音楽」という方は「Mellow」で、今回の台風のメロウは「Melor」。もともとはフランスの聖者の名前だ。

日本は他国にくらべるとたいへん雨量の多い国で、それが豊饒な大地を生むことにつながっている。ただ梅雨や秋雨という言葉はあっても、雨季という言葉はほとんど使わない。

雨季(レイニーシーズン)という表現は、東南アジアやアフリカなど熱帯地方で使われると思いがちだが、国外の書籍には日本にも雨季があると記されていることが多い。しかも、6,7月の梅雨だけでなく秋の長雨も雨季とされるため、日本には春と秋の2回の雨季があると書かれている。そこに台風が加わる。

そう考えると、日本は年間を通して雨が多く、地震も多いが、自然災害に対する防備策が他国より秀でているかと思う。大雨の被害という点では、最近のインド南部の集中豪雨はすさまじく、150万人が家屋を失ったという。

まだまだ台風シーズンは終わらず、19号が発生すれば今度は女性の名前がつけられるはずである。

Rio!

2016年のオリンピック開催地がリオデジャネイロに決まった。

     

                     

4候補の中ではもっともふさわしい都市だと思う。シカゴと東京(アメリカと日本)は全国民レベルでオリンピックを渇望していただろうか。

そうした空気を選考委員は感じとっていたはずだ。これまで一度もオリンピックが開催されていない南米が選ばれた点は貴重である。私が選考委員でも最初からリオに一票を投じていた。

治安の心配をした人もいようが、中南米のどの都市にいってもファベーラ(スラム街)はある。今年4月に訪れたメキシコシティには中南米最大のファべーラがあって600万人が暮らすが、すでに1968年にオリンピックが開催されている。

リオには3年ほど行っていないが、新興国としての威信にかけても南米らしいエネルギッシュなオリンピックを開催してほしい。人とカネが集まれば大きなプロジェクトが動く。そうすればカネがさらに集まり、流れ、それが世界に還元する。

世界経済、特に貿易については統計にでてくる数字以外のところでカネの流れが増大しているので、貿易赤字が増加したからといってそれで一喜一憂する時代は終わったと思っている。たとえば中国の港からカリフォルニア州ロングビーチに入港した貨物船の実質バリューの約50%だけが中国産であり、残りの半分は自国アメリカを含む他国産である。

すなわち、経済はとうの昔に国境が失せているのだ。南米は距離的には日本から遠いが、経済的な緊密度は深く、リオ五輪でつながりは深度をます。16年はまだ先だが、大いに期待したい。