変わる面白さ

「ライフワーク」と自称している大統領選挙は、予想通りオバマ勝利に終わった。

多くの媒体から執筆やコメント、出演の依頼を受け、出せるものはほとんど吐き出してしまったという印象が強い。6月初旬、オバマがヒラリーを破って民主党代表候補に決まったときから、11月の本選挙で彼が勝つことは疑う余地がなかった。

共和党大会の前後で「ペイリン現象」なるものが生じたが、それは短期的な時流であって、底流に流れるオバマ支持にはほとんど影響がなかった。それは安心して見ていられた。

だが私は、今年の選挙で二つの過ちを犯した。拙著に記したことが外れたのである。民主党ではヒラリー、共和党ではジュリアーニが本命と書いた。本の原稿を書き終えたのが昨年11月末だったことは言い訳にならない。なぜなら、拙著を読んでいただくのは今年だからである。

昨年の今頃、ヒラリーはオバマに10ポイント以上の差をつけていた。ヒラリーは集金額でもオバマに大きく差をつけていた。ジュリアーニしかりである。だが、結局はヒラリーもジュリアーニも過去の人となり、見事に外れた。

新聞社にいる記者であったら更迭もあったかもしれない。大手新聞社の友人は以前、「政局を外したら部内でなんらかの仕打ちがある」と話していた。フリーランスという立場はありがたく、「どうして外したんですか」と正面から言ってきた人は一人だけだった。

投・開票日はテレビのナマ番組にコメンテーターとして出演し、オバマ次期大統領誕生の瞬間をテレビの中から観られたが、あまりにも予想通りの展開だったので拍子ぬけした。

アメリカの政治勢力図は2000年から変化していない。オバマは、04年にケリーが勝った全州を奪うことは容易に予想できたし、その上でオハイオかフロリダのどちらかで勝てば勝利する流れだった。結局、両州だけでなくバージニア、ノースカロライナ、インディアナという激戦州もオバマが勝ち、圧勝に終わった。

日本では、南部諸州はほぼ無条件で共和党にいくと思っている方がいるが、間違いである。候補の出身地が大きく獲得州に関与する。たとえばカーターが勝った76年、テキサスからルイジアナ、ミシシッピ、アラバマ、ジョージアと続くディープサウスはすべて民主党に流れた。カーターがジョージア州出身だったからである。

逆に80年のレーガンは、現在のリベラル州の代表であるカリフォルニアを確実に獲った。もちろんレーガンがカリフォルニア州知事だったからである。92年、アーカンソー出身のクリントンは同州の他、南部ではルイジアナ、ジョージア、テネシーを奪った。 

オバマが再選をめざす2012年の勢力図は、現在とほぼ同じと予想される。しかし、共和党がカリフォルニア出身の強力な候補を立てると事態は変わってくる。

「変わる面白さ」がアメリカの政治であると知ったのはずいぶん昔のことである。(敬称略)