日米の民主党リーダーへ

大統領選挙は本選挙(11月4日)まであと1か月となった。

多くの方がすでにご承知のように、形勢はオバマ有利で流れている。私はマケインとオバマの戦いについては、ずっとオバマ有利と各種メディアで書いてきた。6月5日のブログ(本選挙の票読み)でも、すでにオバマ優勢と記した。いまでは4カ月前よりもオバマへの追い風が強いし、1か月後、よほどのことがない限り「オバマ大統領誕生」というニュースが世界を駆け巡ると思っている。

9月26日にミシシッピー州で行われた第1回討論会直前、メディアだけでなく政治評論家の多くが討論会の出来いかんで流れが変わるという ニュアンスであった。10月2日の副大統領候補の討論会も同じで、選挙終盤になった今、もっとも大切なのは討論会といわんばかりの空気でさえある。

マケインとオバマは今月7日と15日にも討論会を行うが、何千万人もの有権者が観るわりには、10月に入った段階で、討論会後に支持候補を変える人は少ない。さらに討論会の前後で支持率に大きな変化は生まれない。過去何十年も同じ現象が起きており、今年も同じことが繰り返されている。だが、現場の記者は初めて大統領選をカバーする者も多く、「討論会が決めてになる」と興奮しがちである。討論会のもつ意味を熟慮していないのだ。

私が散見したメディア関係者の中で「支持率は変わらない」という事実をしっかり述べていたのは、CNNの政治分析家ビル・シュナイダーくらいである。さすがにわかっている。インターネットをはじめとして、テレビ、新聞、雑誌といった媒体数と情報量がふえ、今の段階にきて、いまだにマケインかオバマを決めかねている有権者は時代遅れもはなはだしい。

1時間半の討論会を観たあとに支持者を決めるという有権者は、過去2年弱におよぶ大統領選にほとんど関心を払っていなかったことを証明しているようなものである。有権者の30%は民主・共和両党に属さない独立派(インディペンデント)で、確かに態度を決めかねている人はいるが、日本のように公示から投票日まで2週間という短期の戦いではない。アメリカ大統領選での討論会というのは、改めて自分の支持する候補の政策と、政治家として重要な弁論術を「眺める」時間なのである。

たとえば92年の討論会で、パパブッシュとクリントンの支持率は開始前、それぞれ35%対52%だったが、3回の討論会が終了したあと、支持率は34%対43%でむしろクリントンの方が下降した。2000年のブッシュ対ゴアでも46%44%という数字は討論会前後でほとんど変化がなかった。今年も同じである。

支持率が現在オバマ有利に動いているのは、討論会の出来・不出来からではなく、経済危機に絡む市場の混乱と国民が抱えるアメリカ経済への不安感が共和党(現政権)に対して不利に働いているからである。今後1か月、株価の乱高下が繰り返され、銀行倒産などのニュースが流れれば流れるほどオバマ有利に傾く現象は加速する。

日本民主党はすぐにでもアメリカ民主党とオバマの外交担当者に接触すべきである。すでに遅いくらいだが、民主党(次期首相)は直接オバマ政権にアクセスできる外交ルートを今からつくっておくべきである。(敬称略)