引き分け?ヒラリー惨敗…

このところ大統領選挙の話ばかりで恐縮だが、しばらくこのテーマでおつきあい願いたい。

メガチューズデーでもっとも注目されたオバマとヒラリーの戦いは、数字だけでみれば引き分けである。だが、ヒラリー陣営にとっては「惨敗」以外のなにものでもない。1週間前、陣営はイリノイ州とジョージア州、アイダホ州こそオバマに譲るが、他州はものにできると踏んでいた。私も同じ予想だった。

悪くとも22州のうち15州で勝てると思っていたはずだ。ところが10州にも及ばなかった。オバマが巻き起こした風はいまや疾風となり、竜巻にまだ成長するかにみえる。その風に押されたヒラリーは、ニューヨークでのスピーチでいくぶんか硬い表情で登場し、あらためてオバマを推す有権者の幅の広さを思い知ったはずだ。

ただ、二人が獲得した一般投票数を眺めると、それぞれ約730万票で互角である。エドワーズが選挙戦から降りたことで、リベラル票がオバマに流れたことも影響している。

しかし、今年になってからのカネの集まり方はオバマがほぼ2対1でヒラリーをリードしている。昨年は、ヒラリーの方がオバマより15億円ほど多く集金したが、1月、オバマ陣営は3200万ドルを集金。ヒラリー陣営は1400万ドルにとどまった。

この現象は拙著『大統領はカネで買えるか』を書いた時点では読めなかった。だが本のテーマどおり、カネが集まる候補がほとんどの選挙で優位に立つため、現時点ではオバマ有利に動いている。

オバマは2月も3000万ドルレベルの集金額を見込んでいる。カネ集めですでにヒラリーは負けである。正比例はしないが、「カネと票」は強い相関関係がある。ヒラリー陣営はこれから遊説と同時に選挙資金の集金にもさらなる努力が必要だ。

それでも選挙戦は間違いなく長期戦になる。5月になっても決まらない可能性が高い。ヒラリーの希望は、不利といわれたカリフォルニア州を圧勝した選対の組織力である。投票前日、オバマ有利といわれたカリフォルニア州を見事に圧勝する。

接戦州で何もせずに勝てるほど選挙はあまくない。同州でヒラリー陣営がどれほどのカネと人材をつぎ込んだか、ご想像いただけるだろうか。地を這うようなキャンペーンなくして52%対42%という数字はない。

面白い戦いになるのはこれからである。(敬称略)