イーロン・マスクの野望

米ステラ社のCEOで、億万長者のイーロン・マスク氏(54)が5日、新党「アメリカ党」を結成すると表明。トランプ大統領は「馬鹿げている」と批判したが、個人的にはマスク氏の野望を興味深く眺めている。

マスク氏は先月、アメリカには「中間層の8割を代表する政党が必要」と述べると同時に、「この国には民主党と共和党の一党独裁に代わる政党が必要」とも発言し、ビジネスの世界だけでなく政界への強い野心を示した。これまでもアメリカには多くの第3政党が登場したが、民主・共和両党を凌駕するだけの力を持ちえなかったばかりか、持続力もなかったため、政界で生き残ってこられなかった。

たとえばセオドア・ルーズベルト氏が率いた革新党は1912年の大統領選で注目を集めたし、1992年にはロス・ペロー氏が改革党を組織して旋風を巻き起こした。また消費者運動家のラルフ・ネーダー氏は緑の党から1996年だけでなく複数回、大統領選に出馬したが、いずれも民主・共和両党を席捲することはできなかった。

その一つの理由が米政治が2大政党制を基礎にした小選挙区制を敷いているため、ほとんどの選挙区において2大政党の有力な候補者に絞られてしまうことが大きい。さらにアメリカの法制度や政治慣行が2大政党制を優遇するようにできているため、結果として第3政党の候補の進出が抑制されてきた。

絶えず新しいモノを受け入れ、それを自分たちのものにしてきたアメリカではあるが、米政界のこうした古びた慣習はなかなか打破できない。そこにマスク氏は風穴を開けようとしているわけだが、同氏の最終的な夢は「大統領になること」だろうから、是非この新風がホワイトハウスに届くところを見てみたいと思う。

トランプ:イランと全面戦争はせず?

日本時間22日、米軍はイラン国内にある3カ所の核施設を空爆したが、 イランが貯蔵していた濃縮ウランは「ほぼ無傷」だったことが、欧州当局者がまとめた初期評価からみえてきた。トランプ政権は当初、イランの核施設に大打撃を与えたつもりでいたが、実際は「ハズレ」だったのだ。

“If Iran wants to fight, that will be the official end of Iran. Never threaten the United States again! “ (イランが(米国との)戦いを望むなら、その時はイランが本当に終わる時だ。だから決して米国を威嚇するな)

上のコメントはトランプ氏が自身のXで述べたものだが、実はこの発言は2019年5月20日に発したものである。第一次トランプ政権時代から、イランに対して敵対的な態度をとってきているが、それだからといってトランプ氏は本気でイランを「終わり」にしようとは思っていないし、行動にも起こしてこなかった。

トランプ氏はイランとの関係を、現体制の存続を前提としていることが6年前から変わっていない。表面的には過激なことも口にするが、全面戦争でイランを「終わり」にしてしまったあとの責任の方が大きくなり、いまのままでというのが本音として透けてみえる。

インド・パキスタンの停戦合意は本当か

インドとパキスタンは10日、これまで続けてきた軍事攻撃を即時停止し、停戦することで合意したという。両国は1947年の第一次印パ戦争以来、繰り返し衝突してきているので、今回の米国による仲介で今後2度と戦火を交えなくなるとは考えにくいが、取り敢えず、トランプ政権による関与で一時的にせよ、停戦にいたったことはないよりかと思う。

ルビオ国務長官とバンス副大統領が、インドのモディ首相やパキスタンのシャイフ首相らと協議して今回の停戦にいたったようだが、トランプ大統領はさも自分が仲裁にあたったかのような態度で、Xで次ようにコメントをだした。

「米国が仲介した長夜の協議の結果、インドとパキスタンが完全かつ即時の停戦に合意したことを発表できることを嬉しく思う。常識と優れた知性を駆使した両国を祝福する。ありがとうございました」

戦争というものがほとんどの一般市民にとっては不幸しかもたらさないということを両政府の政治家たちは知らなくてはいけない。日本であれば、半世紀以上ものあいだ他国と戦火を交えるということは考えられないが、印パ両国民は「ここまで戦い続けた以上、勝つまでは・・・」との思いがあったと思われる。

たとえばパキスタン側の報道を読むと、「インドからの攻撃に対し国民から『弱腰だ』と受け止められないためにも反撃せざるを得なかった」という記述がある。ここに戦争が長期化してきた理由が潜む。弱腰であっても戦争をしない方がどれほど賢明なチョイスであるかを国民にわからせる必要がある。

こうしたメンタリティーをもつ国民に本当の停戦はくるのだろうか?

トランプ支持率、過去80年で最低

誰も驚かないーー。

トランプ大統領(以下トランプ)の就任後100日目の支持率が39%という数字で、歴代の大統領としては過去80年で最低であることがわかった。

米国だけでなく、日本にいてさえトランプのことを好ましいと思っている人は少なく、それが数字となって表れた。80年前に不人気だった大統領というのはフランクリン・ルーズベルト氏で、第二次世界大戦で米国が疲弊していたことから支持率も低かった。この数字はワシントンポスト紙とABCニュース、Ipsos3社による共同調査によるもの。

いまトランプ氏の経済政策に賛同していない人は多く、「トランプ関税」が3月に発表されて以来、株式市場が混乱しているばかりか、物価上昇への懸念が強まり、不況を憂慮する声も多い。ちなみに、回答者の72%が不況に見舞われると予測している。

私は1982年に留学のために米国に渡って以来、ずっと米大統領の動向や支持率を注視しているが、経済状況の変化が支持率と密接にむすびついている点に着目している。トランプのようなもともと不人気な大統領であっても、経済が好調で、株価もズンズンあがっているような社会状況だと、支持率が高くなる傾向がある。

まだ新政権が始まって3カ月なので今後はどうなるかわからないが、しばらくは辛抱する日々が続きそうだ。

相変わらずの弱腰外交

もっと強く出ていいーー。

ホワイトハウスで日本時間17日、トランプ大統領(以下トランプ)と会談した赤沢経済財政・再生相は、「格下も格下と直接話をしてくれたことに感謝している」と語り、相変わらず日本的な自身を卑下する姿勢でいることに呆れてしまった。

私は1982年にワシントンに渡り、90年からジャーナリストとして日米会談を長い間注視してきたが、日本の首相や閣僚が米大統領におうかがいを立てる姿勢は何十年たってもかわらない。こうした「大統領閣下、お目にかかれて幸栄です」的な態度でいるかぎり、米国に交渉の主導権を握られることは当たり前で、日本的な相手を敬う態度は理解できるのだが、こうした国際的な会談や交渉の場ではマイナスに作用することの方が多いので、強気な姿勢で臨まなくはいけない。

自民党の政治家はすでにこうした交渉術を会得しているかと思っていたが、まだまだ始めから「1本取られる」ような姿勢はいただけない。いくらトランプであっても対等な立場で臨むべきであって、プッシュするくらいであっていい。それによって日米両国の緊密な同盟関係が崩れることはないし、何でも言い合えるという関係こそが重要なのである。

こうした国際交渉の場では、どの国も自国の利益を追求してくるのが当たり前で、トランプが強気で攻めてくるのであれば、日本も負けずに強気で対抗し、日本側の主張をとことん突き詰めていけばいい。(敬称略)