北朝鮮問題の落とし所(3)

来週9日、南北高官が会談をひらく。韓国の文在寅政権側からの提案だが、なぜ北朝鮮は対話の提案に乗ってきたのか。

北朝鮮側には、圧力をかけ続けてきた日米韓の連携を分断させる意図があるとの報道もあるが、本当だろうか。アメリカ側からの経済制裁が効いてきているからとの見方もあるが、私の考え方は少し違う。

昨年11月、金正恩は火星15号の打ち上げのあと、朝鮮中央通信で「最終的に国家核戦力の完成という歴史的偉業を達成した」と宣言した。「完成」という言葉を使いはしたが、実際のところ核弾頭が機能するかはわからず、ICBMがアメリカ東海岸に本当にとどくかもわからないままだ。

それでも核兵器を持ったという事実は間違いないだろう。日米韓がいくら強力に核兵器の放棄を迫っても金正恩は今後「絶対に」核兵器を放棄しないはずだ。

核こそが唯一の生きる道なので、核兵器を今後放棄することはないと考えなくてはいけない。放棄する時は北朝鮮という国家の崩壊を意味することになる。

北朝鮮がいま望むのは抑止という体制の確立である。昨年12月初旬、国連のジェフリー・フェルトマン事務次長がピョンヤン入りした。そこで北朝鮮側の要望を聞いている。

短期的に北朝鮮が望んでいるのは「抑止力が働く保障体制の確立」であるという。それはアメリカから攻撃されないという確証に他ならない。

やはりアメリカが怖くて怖くてしかたがないのだ。

北朝鮮が核保有国であることは、国際的に認知されていない。誰もが核を保有するとわかっていても認めない。

アメリカはあくまでも放棄をめざすし、圧力をかけることを止めない。それが現実的な流れだ。

そのため韓国と北朝鮮が対話をしても、冬季五輪や離散家族については話し合いができても核放棄については平行線のままのはずだ。

そうなると、核兵器をもったまま米朝は今後も緊張の中でにらみあいをつづけることになる。

中長期的に両サイドが抑止体制を保つようになるのが、私が描くこれからの流れである(北朝鮮問題の落とし所)。(敬称略)

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(平壌郊外にて。2011年)

北朝鮮問題の落とし所(2)

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(北朝鮮側から撮った板門店。2011年)

金正恩に会うために中国共和党幹部の宋濤(そうとう)がピョンヤン入りしていたが、面会できずに北京にもどった。

宋濤は中央対外連絡部長という肩書で、共産党の政治局員ではない。北朝鮮トップに会うには格が下ということもあるが、金正恩が中国からの圧力や対話にはいっさい応じないという頑ななサインでもある。

北朝鮮はアメリカ側からの対話にも一切応じていない。北朝鮮側にしてみると、アメリカや日本からの核兵器放棄といった要求を受け入れるわけにはいかないので、会わないということである。

朝鮮半島周辺で行われる軍事演習を日米韓がやめれば、対話のテーブルにつくことがあるかもしれないが、それで問題が解決するわけではない。むしろ事態は膠着する。

北朝鮮は一度手にした核兵器を放棄しない。小国であればあるほど核兵器という武器にしがみつこうとするはずで、非核化はいまとなってはほとんど無理である。

アメリカ政府が対話へのハードルをさげて米朝会談が実現しても、両国は平行線をたどるだけだ。

核兵器を諦めさせるためにアメリカはさまざまな条件をつけるだろうが、北朝鮮はおいしい汁だけ吸って核廃棄をしない。

となると、交戦的な高官たちは軍事オプションを真剣に考える。北朝鮮市民ではなく、金正恩を含めた政権中枢だけを抹殺できればそれにこしたことはないが、過去も現在も未来も、軍事オプションには強いブレーキが働いている。

結局、現実的な近未来は交戦がないまま、米中間の緊張が維持された状態でにらみ続けるという流れになるはずだ(北朝鮮問題の落とし所)。

イタズラ小僧の石

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Picture from Twitter

北朝鮮がまたミサイルを発射した。

イタズラ小僧が石を投げたら自分の頭上を通過。それを攻撃とみなすのか、それともいつもと同じ実験とみなすのか。日本がつきつけられた課題である。

日本政府は、本土に着弾していないし航空機や船舶に被害がないが厳しく抗議する、といういつもの姿勢である。それで終わる可能性が高い。

1998年に日本列島を通過したミサイル発射の時も「厳重抗議」で終わっている。

トランプであれば軍事行動に移る可能性があるが、そのあとの悲劇的な惨禍を予想すると、やはり手を出せないか・・・。

となると、今回もイタズラ小僧のやりたい放題で終わることになる。日米韓はミサイルが3国のどこかに着弾してほしいと願ってはいないか。そう思えてならない。

その時はイタズラ小僧に立ち上がれないだけの報復を加えられるからだ。

自動的に大規模報復?

お盆でもいつもと変わらずに仕事場に向かう。電車に乗りながらネットラジオでフォックス・ニュースを聴くと、ちょうど北朝鮮問題について議論が交わされていた。

共和党保守派のコメンテーターが嬉々とした声で言った。

「北朝鮮がミサイルをグアムに向けて撃った時点で、アメリカは大規模な報復をしかける。これはもう自動的に行うべき」

久しぶりに戦争ができると思うと嬉しくてしょうがない・・・そんな思いが言葉の裏側にあるようだった。

現時点でも、私は北朝鮮が撃ってくる可能性はかなり低いと考えるが、万が一の事態もある。それほど金正恩は信じられない男である。

ただその時は北朝鮮の攻撃よりもアメリカ側の報復による死傷者や影響の方が甚大になるはずだ。

戦争に付随する悪影響は米軍の報復で想像を絶するレベルにまで達する恐れがある。金正恩が大胆な行動を起こさないことを願うばかりだ。

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2011年4月、北朝鮮を訪れた時の1枚。朝鮮人民軍の少将が韓国との国境付近を案内してくれた。

真剣さが足りない!

北朝鮮がミサイルを発射するたびにメディアはニュースとして取り上げるが、多くの人にとって、すでに「またか」になってしまった。

よほど注視している人か専門家でもない限り、ミサイルの種類に気を配ったりしない。だから 高度が3700キロを超えたICBM「火星14型」が発射されたと聞いても市民の真剣さは増してこない。

さらにトランプが本気で北朝鮮に戦争をしかける可能性をほのめかしても、「他国の話」になってしまった。これが金正恩の狙いであるとは思わないし、そこまで日本人の心を読めていたわけではないだろう。

それでも、現実問題として日本はいま「北の脅威」が脅威でなくなってしまっている。内閣改造の方が国民の関心は高い。

トランプが本当に北朝鮮に先制攻撃をしかけ、朝鮮半島で戦争が起きた場合、地政学的に日本が傍観者でいるわけにはいかないのだ。たとえ数%でも、日本がミサイル攻撃を受ける可能性がある限り、もっと真剣でなくてはいけない。

政府や市民レベルで議論はまったく足りていない。戦うのか、国外に逃げるのか、防空壕を作って逃げ込むのか、それとも政治活動を起こすのかといった具体的な話題がでてきていない。避けて通れない話なのだが・・・。(敬称略)