北朝鮮の花火

アメリカ連邦上院外交委員会の東アジア太平洋小委員長のジム・ウェブが5日午後、東京の日本外国特派員協会で記者会見を行った。

                    

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「北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射した場合、明らかに国連安保理決議に違反する行為だ。ただ、北朝鮮政府は透明性というものをまったく持たないので、交渉を開始することすらできない。しかも彼らがいったい何を考えているかさえも探れない状態が続いている」

公の席ではほとんど諦めの境地といえる発言である。実際に、アメリカをはじめとする周辺国の韓国や日本がミサイル発射を止めることはできないだろう。国連決議など過去何十年も、特定国の横暴な行為を阻止する効力をほとんど発揮できていない。

イスラエルがイランの核兵器に脅威をいだき、先制攻撃をする可能性を示唆しているが、日本は北朝鮮にその素振りどころか、意気込みさえも見せない。もちろん先制攻撃をしたあとの因果関係を考慮すると、攻撃などしかけない方がいいのだが、精神性という点において、いまの日本人には北朝鮮と戦うオプションは持たない。

仮にミサイル攻撃された場合、国民はどうすべきかの議論すら起こらない。来週にもミサイル発射となる可能性が高いが、傍観者のままだ。

私は上院議員に対し、アメリカの北朝鮮への諜報活動について訊いた。「本当は公表できない内容を抱えているのではないか」という質問だ。

「いまの北朝鮮からは本当に情報がとれない。オペイク(Opaque:くすんでる)!」

昨春、首都ピョンヤンに滞在したが、そのくすんだ部分の中心部が見えたわけでもない。それほど厚いベールに覆われてる。

わかっているのは4月15日が故金日成の生誕100周年で、軍事、経済、政治を強化する「強盛大国」を目指しているということだけだ。あの国に足を踏み入れれば、国民が信奉しているのは金正日でも金正恩でもなく、いまでも金日成であることが分かる。その延長線上にICBMの発射があるのだ。

そう考えると、ミサイル発射は式典を祝うための大がかりな花火というレベルかもしれない。(敬称略)