2012年大統領選: レディー・ゴー!

日本では大きな話題になっていないが、2012年の大統領選挙が幕を開けた。

現職大統領オバマは4月5日、再選をめざすと正式に表明したが(アメリカの祭り、カミングバック!)、共和党からの”主要候補”は出遅れ気味だった。しかし5月11日、元下院議長のニュート・ギングリッチが出馬を表明し、事実上の選挙戦がはじまった(”主要候補”としたのは泡沫候補がすでに何人か出馬表明をしているため)。

本選挙は2012年11月6日とまだ先だが、前回の選挙とくらべると出足は遅い。2007年の5月といえば、民主党では主要8候補が登場して第1回討論会が終わっていた。オバマ、ヒラリー、バイデン、エドワーズ、リチャードソンといった顔ぶれである。

だが、今年はギングリッチが宣言どおりにフェイスブックとツイッターで出馬表明したものの、他の共和党候補はいまだに出馬のタイミングを見計らっている。アメリカの選挙には選挙期間が定められていないため、いつ出馬しても構わないからだ。極端な例では前回の大統領選挙が終わってすぐに出馬表明することもできる。

早く選挙戦をはじめれば有利であるとは限らない。なにごともタイミングが大切である。長期間選挙をしていても、有権者は強い関心を示さない。対抗馬がいないところで選挙活動をつづけても盛り上がらず、メディアも関心を払わない。

しかも早い時期に有権者から広い支持を集めてしまうと、あとから出馬する候補たちの格好の標的になり、1対複数候補の構図になって終盤で失墜してしまう可能性がある。ただ出馬表明すれば連邦選挙管理委員会の監視のもとで選挙資金を集めることができる。

オバマは今回の選挙で10億ドル(約800億円)を集めるつもりで4月から集金活動を行っている。共和党候補はすでに現時点でカネ集めでは遅れをとってしまった。

ギングリッチは私がアメリカに住み始めた1982年、すでに下院議員になっていた男で95年から99年までは下院議長をつとめている。ビル・クリントンがモニカ・ルインスキーとホワイトハウス内でみだらな行為を行っていたことを糾弾しつづけたが、同じ時期に22歳下の女性と不倫していたことが後になって発覚し、すっかり信用を失った。ただその女性が現在の妻である。

                                     

   

                  

政治家としても私が知るギングリッチは矛盾だらけの男で、彼にチャンスはないと思っている。(敬称略)

共和党から出馬すると思われる他人物:

・ミット・ロムニー(前マサチューセッツ州知事)In  (6.2.11)

・マイク・ハッカビー(前アーカンソー州知事) Out (5.14.11)

・ドナルド・トランプ(実業家) Out (5.16.11)

・ティム・ポーレンティ(前ミネソタ州知事) In  (5.22.11)

・ロン・ポール(下院議員・テキサス州) In  (5.13.11)

・ミッチ・ダニエルズ(インディアナ州知事) Out (5.22.11)

・サラ・ペイリン(前アラスカ州知事)他

蘇った米企業CEOの法外な報酬

アメリカ企業は何も変わらずー。

先日、アメリカのトップ500企業CEOの2010年度の報酬額が発表された。08年9月のリーマンショック後、不況に突入してから大手企業CEOの報酬は下降していたが、再び上昇気流に乗りはじめている。平均額はなんと900万ドル(約7億2000万円)で、09年比で24%も増えた。

不況の一因が金融業界の歪みであったことは疑いようがない。25年間住んだアメリカから帰国した後も、何度もアメリカ金融機関の周辺を取材し、なぜ大手企業のCEOは法外な報酬を手にし続けるのかを問うた。

不況前、多くの金融機関は膨大な損失を計上し、不良債権を抱えて倒産の瀬戸際に立たされていた。政府から税金を注入してもらわない限り自立再生が困難な企業はリーマンだけではなかった。政府からのカネが入り、彼らは自身で企業体質の歪みをただすかに思われたが、グリーディーな(がめつい)所業はバブルが弾けた後も
変わらなかった。

そして今またCEOの報酬は史上最高額へと駆け上がった。報酬額トップはメディア大手バイアコムのフィリップ・ドーマン氏で、8450万ドル(約67億6000万ドル)、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

試案:東北アップライズ

東北地方を再興するための政府の基本方針が固まりつつある。

法案の名称は「東日本大震災復旧復興対策基本法案」というもので、これだけで官僚が作り上げていることが即答できるほど冗長である。たとえば「フェニックス計画」とか「東北アップライズ」とか、子どもが覚えて参加できるくらいの愛称はつけるべきだ。

内容も、50年か100年に1度あるかないかの都市再興計画の機会であるにもかかわらず、ほとんど「復旧」のレベルを出ていない。仮設住宅の建設は大切だが、その先に見えるのはチマチマした応急措置的な、いかにも小役人が考えそうな町づくりがほとんどである。

それで本当にいいのだろうか。このままでは、何十年か後にはまた同じ運命を辿らないとも限らない。

「高台に住宅を建設する」といった考えを超越した未来型都市づくりの絶好のチャンスのはずである。官邸のホームページで復興構想会議の15委員の顔ぶれを見たが、大学教授と県知事が中心になったメンバーで、旧来型の復興計画しか期待できない。

仮にそのメンバーが斬新な計画を練り上げたところで、最終的には官僚によって「これはできません」「これもだめです」と水増しされて無難なところに着地しそうな気配を感じる。その会議とはまったく別に、20代から40代で構成されたメンバーに、壊滅した三陸海岸の村を造り直すパイロット計画を任せてはどうだろう。

地方自治体の長が超法規的な行政力を発揮して、自由な発想から世界の小都市が真似るモデルシティを建設する。しかも、スピーディーにことを進める。1万人以上の都市ではなく、わざと人口1000人以下の町を選ぶ。

ソフトバンクの孫やビルゲイツのような億万長者を説き伏せると同時に、政府からも特別予算を出させる。すべて特例でコトを進める。もちろん町の人も含め、全国いや全世界からボランティアに来てもらい、建設業者をはじめとするプロ集団の手助けのもとで町造りをする。                       

中国や北朝鮮が高速道路やダムをつくるときに一気に数千人を投入するように、常時3000人くらいがかかれば半年で小さな町は完成する。社会主義的な統制系統でいい。

   

                      

すべての町民が高台に住む必要はない。強度的にどんな津波にも耐えられる鉄筋のハイライズ(高層)をたとえば5棟ほど造ってそこに住んでもらう。私でさえ、これくらいのことは考えられる。

「これはできません」的なマイナス思考ではなく、「これを可能にする」という積極思考でコトを進めてほしいと思うのは私一人ではないはずだ。

ビンラディン殺害のあと

5月2日昼過ぎ、仕事場のある有楽町を歩いていると「号外です」という声が耳にはいった。すぐに一部を手に取ると、朝日新聞の号外で「ビンラディン容疑者死亡か」との大見出しが打たれている。

「来るときが来たか」

仕事場に戻ってインターネットで欧米メディアのニュースを読むと、祭りのような騒ぎになっていた。

今回の殺害作戦はCIAと米海軍の特殊部隊SEAL’sによるもので、最初から拘束ではなく急襲による殺害が目的だったようだ。

ビンラディンは10年前の9.11以降、パキスタンかアフガニスタンに潜伏していると言われていたが、可能性として高いのはパキスタン山間部の村だった。だが、首都イスラマバード郊外にある要塞のような民家に潜伏していた。その場所にいるとの情報は、米軍が拘束したアルカイダ・メンバーへの尋問から得られたものだった。

場所が特定されていたわけではない。ビンラディンの介添え役の男のニックネームが尋問によって判明したのである。そして本名を割り出す。それが2007年のことだと言われる。そこから潜伏場所を特定するのにさらに2、3年かかっている。ということは過去何年もビンラディンは同じ場所にいたということになる。

今後の問題は、ビンラディンの死によってアメリカ人が過去10年抱えてきた目的は達成されても、アメリカと中東諸国の双方がかかえる被害者意識は消えず、国際テロの危険性が失せたわけではないということだ。

パキスタンやアフガニスタンでは、ビンラディンの名前はすでに象徴になってテロ集団としてのアルカイダは脆弱化していた。だが、北アフリカやイラク、世界の他地域でアルカイダの冠を掲げた組織が個別に活動しており、今後も反米主義の流れが弱まるとは思えない。

通常の組織であれば「大将」の首がとられると、部下は意気消沈して瓦解することすらあるが、その可能性はなさそうだ。アメリカ国民が諸手を挙げて歓喜する気持ちはわからなくはないが、テロとの戦いは今後も終わらない。

ただ希望がもてるのは、ジャスミン革命による独裁政権国家での民主化の波が本格化して、中東諸国で思想と行動の自由が保証される流れができつつあることだ。歴史の真理として、民主国家同士の戦争や紛争は極めて少ない。これは青臭い希望などではなく、すべての国家で実現されるべき現実的な希求である。

  

              By the White House

高失業率のアメリカ、でもプログラマー不足

今月17日、シカゴからマイアミに向かう飛行機の中で、ソフトウェア企業の部長と隣り合わせになった。

薄いイエローのポロシャツにブルージーンズといった出で立ちの部長は、どう見ても30代半ばにしか見えない。アメリカ経済に話がおよぶと、ハイテク業界の現状を語ってくれた。

「アメリカの失業率は依然として8.8%で高止まりしていますが、ハイテク業界では人材が足りないんです。特にコンピューターソフトのプログラマーはまったく足りていません。新しい才能がほしい。日本人も、もちろん大歓迎です」

砂漠で水を求めてさまよう旅人のような切迫感があった。背景を聞くと、ハイテク業界、特にネットの世界の今が見えてきた、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。