これからが勝負だが、、、

本当に予期せぬことは起こるものである。これは経験則を超えるという意味でもある。

日本でもアメリカ大統領選挙を丹念に追っている人は多いが、私もその一人であると思っている。公の席で「ライフワーク」とまで豪語している。だが、予期せぬことが起きた。

前回の大統領選についてのブログ(オバマ再選濃厚 )で、討論会を行っても「支持率が大きく動くことはもはや少ない」と書いた。ところが10月3日のオバマ対ロムニーのテレビ討論では、あまりにもオバマの受け答えに精彩がなかったため、ロムニーの支持率が5ポイントほど上昇した。

いまの時期にきての5ポイントは大きい。いま投票が行われれば総得票数ではロムニーが上回るという世論調査の結果もでている。

長い間大統領選を眺めていると、さまざまな角度から情報が入る。また自分で情報を取りにゆくので、幾層にも折り重なった事実が表面に浮上してくる。過去10日ほどはロムニーが盛り返したが、冷静に選挙情勢を眺めると、いまだに「ロムニー勝利」という文字は浮かび上がってこない。

11月6日の投票結果は、総得票数ではなく各州に割り当てられた代議員数の合計で決まる。激戦州ごとの世論調査や経済指標、集金した選挙資金総額、選対の組織力などを総合すると、いまでもオバマが有利という勢力図は動かないと見ている。

11月6日のオバマの得票率は51. 3%から52.5 %の間くらいだろうか。

ただアメリカではいま、大変興味深い現象が起きている。それはオバマほど分断されたアメリカを一つにしたいと断言してきた大統領を知らないが、結果は逆であるということだ。ギャロップ調査の統計では、民主党を支持する有権者の実に90%がオバマを支持する一方で、共和党支持者のオバマ支持率は8%でしかないのだ。

これほど右よりのアメリカ人に毛嫌いされた大統領は初めてだろう。逆に左よりの有権者には圧倒的な支持を受けている。クリントンでさえ共和党員の23%は支持していたのだ。

今後4年間、オバマが大統領でいたとしても、その深い裂け目を埋めることは多難である。(敬称略)

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by the White House

地球儀を抱いて寝ろ!

東京都内でIMF(国際通貨基金)・世界銀行年次総会が開かれている。世界中から中央銀行の総裁や財務関係者が集まっており、昨日、友人のドイツ人記者と共に関係者2人と懇談した。

会議の席や日本の政府関係者には言わないことをズバズバと口にするので気持ちがいい。

「日本国内でビジネスを展開するには相変わらずコストが高い。しかもデフレ状況は続いたままだし、わざと外国企業や外国人を迎え入れないようにしているとしか思えない規制が相変わらず多い。これでは日本の将来は暗い。目の前にあるドアを自分たちで閉じているようなもの」

日本はGDPで中国に抜かれたとはいえ、相変わらず世界3位の位置にいる。外国にとって巨大市場であることに違いはない。

私は「日本企業はどこの国にいっても適応する努力をしている。外国企業も日本市場に合わせて努力すべきだ」と主張した。

だが、彼らの主張は20年以上も変わっていない。

「市場に入ると非関税障壁がいまだに高いしコストも高い。21世紀になっても保守的で保護主義的なアプローチが横行している」

言い争いをしていても埒があかないが、意見が合った点は日本の政治が外を向いていないということだった。

スポーツ選手や研究者の中には世界で羽ばたいている人が少なくない。企業も国外で多角的な事業を展開している。だが、首相の野田の眼は外に向いているだろうか。国内の政局で手一杯という印象である。日本経済を上向かせるビジョンとその行政手腕も期待できない。

さらに2人は新しい財務大臣の城島にまったく期待していなかった。野田政権がもう長くないことは熟知している。ただ、ホスト役である日本の財務相が、官僚のメモなしで諸外国の財務大臣とマクロ経済の議論もできないのが現実である。日本がなめられるのは当然である。

建築家の安藤忠雄が9月下旬、テレビ朝日の報道ステーションに出演し、若者に対して「地球儀を抱いて寝ろ!」と述べていた。日本の国会議員にもぶつけたい言葉である。 (敬称略)

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オバマ再選濃厚

アメリカ大統領選の討論会が日本時間4日、コロラド州デンバーで行われた。

討論内容は予想どおり、政府の役割の重要性を説くオバマと民間に任せた方が社会はうまく回ると主張するロムニーの言い合いだったが、「討論の見栄え」という点ではロムニーが勝っていた。

ロムニーの選対委員長から私のところにマスメールが入り、「(選挙での)勝利はもう目の前」と楽観ムードに満たされたメモが送られてきた。

第1回目の討論会でロムニーに軍配があがっても、あと2回(11日と22日)ある。討論会の出来不出来で支持率が大きく動くことはもはや少ない(初の直接対決:オバマ対ロムニー )。

1984年のレーガン再選時、民主党の候補だったモンデールは第1回目の討論会で現職レーガンを圧倒。流れを引き寄せられるかに見えたが、結果はモンデールが2度と政界には復帰できないと思えるほど惨めな負け方をする。

オバマは討論がうまくないという日本のメディア報道もあったが、4年前の予備選を忘れてしまったのだろうか。今回は準備不足以外の何ものでもない。

大統領としてホワイトハウスで寝起きするようになり、周囲に唾を飛ばしながら議論する相手はいない。というより、オバマの側近で大統領に食い下がって反論する人間はいないと考えた方がいい。

だが、2回目と3回目は徹底的にディベートの練習を重ねて復活するはずである。

しかもオバマ陣営の9月の選挙資金の集金額は約1億5000万ドル(約117億円)という記録的な額で、選挙資金総額でもロムニーに大きく差をつけており、ロムニー陣営が歓喜で舞い上がっている暇はない。

これは私見というより、客観的に選挙の流れをみての発言である。2000年の時は共和党のブッシュが接戦を制すると述べたし、04年も現職ブッシュが民主党ケリーが破って再選されると書いた(2004年10月:ブッシュ再選濃厚 )。

今年はオバマ再選濃厚と書く。(敬称略)