外国特派員協会という団体

このブログを読んで頂いている方は、日本外国特派員協会という名前が当欄によく登場することにお気づきかと思う。

外国からきている特派員が中心となったクラブで、よく外国人記者クラブという言い方をされたりもする。正会員は約200名。日本のメディア関係者や財界の人たちも準メンバーとして会員になれる。総会員数は約1900名だ。

私は正会員なので、協会によく出入りしている。事務方の職員も大勢いるが、協会の方向性を決めるのは特派員が運営する理事会の仕事だ。その中にたくさんの委員会がある。

私は図書委員を務めている。もちろん無報酬である。むしろ月々の会費を払って仕事もしているという立場だ。社会貢献と呼べるほど大げさではないが、社会で起きていることをメディアを通じて伝える仕事として少しでも役に立つのであればと思ってやっている。

委員同士の連絡や会議、そしてイベントの司会など、いくつかやるべき実務があり、なかなか刺激的である。ただ近年、特派員の資質が問われてもいる。

20年以上も正会員のヨーロッパ出身の特派員がいう。

「優秀な記者はみんな中国にいってしまった。東京に残っているのは経験の少ない記者か、イマイチの連中ばかり」

欧米メディアの本社は過去10年ほど、日本よりも中国の方が重要というスタンスなのである。私も6年前にワシントンから東京にもどり、ここに残っている人間なので「イマイチ」と言われないような仕事をするしかない。

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            今月7日のイベントにてMC

ミッシェル・オバマからのメール

朝、メールをチェックするとオバマ夫人のミッシェルから1本のメールが来ていた。

私が夫人と個人的に親しいというわけではない。以前にも書いたが、ホワイトハウスのメールリストに登録されているので、時々大統領や夫人からの挨拶が届くだけだ。

今朝のメール内容は、夫が昨年再選を果たし、大統領2期目に突入してからちょうど今日で1年がたちました。いまでもバラックを信じていますというものだった。

「夫だからというより、政治家として抱く将来のビジョンを信頼しています」

日本ではなかなか身内を褒めないが、アメリカではごく普通の所作である。あと3年、夫を支え続けていきたいし、皆さんの支援も必要ですという内容だった。

アメリカ政府内には表にでない陰謀や、盗聴にからむ秘密工作が渦を巻いている。だから、こうした表面的な肯定話をきくと、多くの人は「きれい事を言って」と思うことだろう。

だが、アメリカ文化の本質はこうしたきれい事なのだろうと思う。この前向きな姿勢と肯定-。何があっても「だいじょうぶだから」と言えるだけの過信と呼んでさしつかえない自信。

普通のアメリカ人とつき合うと、いたるところでこの自信と遭遇する(自分を信じるということ )。だからミッシェルのメールは誇張でもなんでもなく、普通の身性と捉えた方がいいのである。(敬称略)

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by the White House

19世紀後半の陰と陽

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仕事場から歩いて5分のところに三菱一号館美術館がある。

いま『近代への眼差し:印象派と世紀末美術』という展覧会をやっている。この世紀末というのはフランスの19世紀後半という意味だ。

私は美術に造詣が深いわけではないが、芸術作品に直接ふれると人間の生への営みを感じられるので、時間が許すかぎりさまざまなところへ行くようにしている。必ず学ぶものもある。

たとえば、今回の展覧会ではルノアールやモネといった印象派の代表的な画家からフェリックス・ヴァロットンやオディロン・ルドンなどのナビ派の画家まで、39人の作品と相対することができる。

多彩な色と光を駆使した印象派とは対照的に、ヴァロットンやルドンの作品には人生の暗部をモノクロで表現した悲哀があり、同じ時期のフランスに、ここまで真逆の心模様を表現しようとした画家たちがいたのかと思い知らされるのである。

ルノアールの肉感的な裸婦画を観たあとにルドンの石版画を眺めると、陽光の差すセーヌ川の水遊びのあとに、陰鬱な自室にもどって現実の生活に対面するような落差を感じざるをえない。

いつの時代にも陰と陽があるように、印象派の絵画で溢れかえっていると思っていたフランスの19世紀後半にも、物憂げな思索を表現したアーティストがいたのである。

ヴァロットンの木版画は秀逸である。日本のアニメの源泉に触れるような気がした。