ヒラリー有利の数字

hillary6.8.16

ヒラリー・クリントンが民主党の代表候補に決まった。新聞や通信社は「代表候補」ではなく「指名候補」という書き方をする。

意味は夏の全国党大会で「党代表に指名される候補」という意味だが、分かりにくい。だから当ブログではずっと代表候補と書いている。

指名候補という言葉は過去何十年も、アメリカに渡った特派員が使い続けている言葉である。これは英語の「nominated(指名される)」の直訳で、日本語としてしっくりこない。民主党と共和党の代表になりますということだから、代表候補の方が適語と考える。

今年は年頭から「ヒラリー対トランプの戦いになる」と述べてきたので、多くの方から「どちらが勝ちますか」と訊かれる。春先から「ヒラリーが優勢です」と答えている。

すると、「トランプの方が勢いがあるのでは?」という反応をされることがある。確かにトランプは共和党の16人の主要候補を蹴落としてきた勢いがある。

だが11月8日の本選挙は州ごとの取り合いになるため、現時点でもヒラリー優勢という図に変化はない。私はすでに数字を出している。

実はアメリカの有権者の政治志向は4年前とほとんど変わっていない。さまざまな要因を検証し、現時点では「51.5%前後の得票率でヒラリー勝利」と書いておく。現段階でここまで言う人は「たぶん」日本にはいない。

4年前の6月にもオバマ対ロムニーの対決の予想を51%前後でオバマ勝利と記し、その通りの結果になった(大統領選、いまだオバマ有利 )。実際の数字は51.4%。毎日のようにアメリカで公表される世論調査は、対象人数が約1000人で「揺れる表象」に過ぎない。

11月は6000万人対6000万人というレベルの対決である。極言すると、すでに大勢は決まっている。ただアメリカ社会の微細にも目を向ける必要がある。その中でパーセンテージが少し変わってくる。

それから、『日刊ゲンダイ』で大統領選の連載を断続的に行っている(誰が勝つ 「米大統領選」核心リポート )。お読み頂ければ幸いである。

弾丸スピーカー

やはり言っておくものである―。

何をかといえば、「大統領選をライフワークにしている」という主張である。それによって、どこからか私の仕事を垣間見てくれる人がいて、連絡をいただける。ありがたいことである。

放送メディアや活字メディアからの依頼だけでなく、講演の要請もある。

つい先日も新潟県長岡市の団体から講演の依頼を受けた。できるだけ依頼は断らないようにしているので、その日も(*^o^*)で出向くことにした。

講演は午後6時からだった。その日は締切原稿が1本あったので、午後2時までに終わらせて、支度をして東京駅に向かう。

先方から送られてきた新幹線の切符をみると、往復の電車がすでに指定されていた。午後3時40分発の上越新幹線「とき」である。1時間45分で長岡に着く。車内で講演用のパワーポイントの流れを2回、確認する。

長岡駅に着くと、ホームまで担当の方が迎えに来てくれていた。「長岡は山本五十六の出身地なのです」という話を聞きながら会場へ向かう。

打ち合わせもほどほどに講演会場に入ると、すでに聴きにきてくださった方が着席されていた。すぐに本番の時間がきた。

パワーポイントのスライドを替えながら、90分間しゃべり続ける。沈黙は許されない。ひたすらマシンガンのように撃ちまくる・・・そんな印象である。

大統領選について、自分で撮った写真も交えながら話をしたが、相変わらず笑いがとれない。「小さなクスッ」が2回あったか。

笑いが求められていないことは知っている。だが「ハッハッハ」が何重にも合わさった爆笑が会場いっぱいに広がる喜びもあじわってみたい。

以前、タモリがある番組でこう言っていた。

「普段、面白いことを言えない人が、スピーチで面白いことを言えるわけがない」

練り込んだ笑いと、瞬時にして得られる天性の笑いがあるだろうが、私はどちらも持ち合わせていない。

その日の私は、スピーカー(講演者)としてはまあまあだったかもしれないが、聴きにきていただいた方々を楽しませるという点では赤点だっただろう。

講演がおわると帰りの新幹線の時間が迫っていた。長岡は初めて訪れる都市だったが、何も観ず、名物料理も味わえず、また「とき」に乗って午後10時過ぎには東京にもどった。

気持ちいいくらいの弾丸スピーカー・・・しかも打ちのめされた感を携えての帰り道・・・嗚呼

あなたは大丈夫か、世界中で加速するテクノ失業

これが時代の波というものなのかー。

2015年7月末、当欄で「ロボットが人間の職を奪う日がついに到来」という拙稿を執筆し、「テクノロジー失業(以下テクノ失業)」という言葉を使った。

人工知能やロボットの出現により、単純労働だけでなく知的労働の領域にまでテクノロジーが導入されて、勤労者の職が奪われる現実だ。そのテクノ失業がいま、加速度的に世界に広がりを見せている(あなたは大丈夫か、世界中で加速するテクノ失業)。

new-robots

Robots are coming!  (Photo courtesy of Recruitingtimes)

2本のオバマ外交の記事を読み説く:クーリエ・ジャポン

「オバマ・ドクトリン」という言葉はメディアではよく目にするが、それがどのようなものなのか、理解している人はどれだけいるだろうか。

バラク・オバマ大統領の外交政策の基本理念がオバマ・ドクトリンだが、実は、いまだに米国の政治学者たちからも確固たる定義がなされていない。オバマ大統領も、自らは外交のドクトリン(基本原則)を明確に発表していないので、漠然とした外枠が論じられているだけである。

世界の安全保障にもっとも大きな影響を与えるのに、曖昧模糊とした外交方針-。

そんなオバマ・ドクトリンを解き明かす上で、最近「クーリエ・ジャポン」に掲載された2本の米国メディアの長文記事は、実に興味深い多角的、実証的な試みといえる(消極的外交を批判されたオバマは、実は賢明な大統領だった! )。

オバマに望むこと

バラック・オバマが広島で17分間のスピーチを行った。当初は5分前後の所信を述べるだけと伝えられていたので、思いのほか長かった。

「・・・人類はあと戻りのできない価値を携えています。すべての人間は同じ家族の一員であるということを述べなくてはいけません。だから今日、広島の地にきたのです。・・・広島の人たちはもう戦争は望まないでしょう。戦争よりも、日々の生活をよりよくしてくれる科学に身を寄せるはずです・・・(原爆が投下された日)世界は広島で、永遠に変わったのです。広島の子供たちは今後、平和に日々を過ごすことでしょう。それこそが重要なことです。広島の子供たちだけでなく、地球上のすべての子供たちも同じように。それこそが我々が重視しなくてはいけない未来です」

演説内容はよく練り込まれた文章だった。このスピーチは間違いなく、過去7年以上、オバマの主要な演説を書き続けているスピーチライラーのベン・ローズが書いたものである。

大統領と2人で「謝罪の言葉は入れない」、それよりも「未来志向の内容にする」ということが話し合われて17分間の演説になったのだ。

ただ私にはオバマに注文がある。先月12日にブログで書いたとおり(オバマが本当にやるべきこと)、演説だけでなく、いまでも米露が所有する1万5000発以上の核兵器を削減するために、ロシアと協調しなくてはいけない。さらに真の意味での核兵器廃絶のために、核兵器所有国に働きかけないといけない。

それが残り8カ月の任期でオバマがやるべきことである。(敬称略)

obama5.28.16

誰よりも先に着席したオバマ大統領   By the White House