首相のチャンスを逃した橋下

大阪市長橋下の風俗業発言で、彼の野望であろうはずの内閣総理大臣の座は遠のいた。

これまでも本音トークを連発して、政治家としての危うさを感じてはいたが、「(第二次大戦中の)慰安婦制度は必要なのは誰だってわかっている」(13日)という発言で、首相になるチャンスは潰えただろう。地方自治体であっても政治家である。こうした意識の持ち主を行政の長にしておいてはいけない。

13日の発言後、自身のツイッターで 弁明をくりかえしたが、汚点はすでに点から穴ほどの大きさに広がった。アメリカ政府が文句を言ってきたからという問題ではない。

少なくとも弁護士資格をもち、大阪市長という役職にある人間がこの程度の意識にいるという事実に愕然とさせられる。慰安婦問題の総体にも通じるが、軍隊という国家組織が公に売春行為を推奨することに問題の核心がある。

社会の中には、いつの世でもカビの生えたみかんは存在する。強姦事件は世界中であとをたたない。それは法の下で裁けばいい話である。

政府が売春行為をシステムとして先導することの異常さを見出せなければ、この人物に市民をリードしていく資質はない。いや、政治家であってはいけない。

売春は世界でももっとも古い職業などと言われるが、歴史が前へ進むという意味は、政治活動としてこうした制度を改めていくことにある。

たぶん人間の尊厳というのは、そうした地道な行為の連続によって手中にできるのである。

この点で橋下は日本人だけでなく、世界中の市民から政治家として不適格であると認められてしまった。

私の中ではもう終わった政治家という領域にはいるかと思う。(敬称略)

油絵画家としての村上春樹

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村上春樹の最新刊が100万部を突破したという。村上ブームは日本だけでなく世界中に広がっている。

最近もブラジルでポルトガル語の『1Q84』が出版され、どういうわけか私がブラジル人の新聞記者に英語でインタビューされたりもした。彼の大ファンではないし、文芸評論家でもないと断ったうえで質問に答えた。

何百、何千という小説家が日本にいながら、村上の本だけがなぜ世界中で桁違いに売れるのか。理由の1つは、絵画でたとえるならば、彼は日本人としては珍しく油絵の画家として成功しているからだろうと思う。

作家大沢在昌が以前、日本人の作家は墨絵の描き手だと述べていた。無駄をそぎ落として、墨の線が醸す風情に作品を託す。油絵のようにブラシで厚く塗らない。

油絵の画家は日本にも大勢いるし、過去に名を馳せた人もいた。だが村上は現代のオイル・ペインティングの技法を圧倒的な形で高みへと到達させた。

村上のつむぐ文章は厚みのある油絵である。僭越ではあるが、私はそう評したい。(敬称略)

ボストン爆破テロから見えてくるもの

マサチューセッツ州ボストンで起きた連続爆破テロからすでに半月がたった。

いちおうアメリカの政治・経済から社会問題までを追っている人間として、同事件に何らかの見方を記さないといけない。ただ現地で取材をしていないし、当件で長い原稿をかいているわけでもない。

それでも半月たって見えてきたものがある。

それは実行犯ツァルナエフ兄弟の動機がイスラム過激派としての聖戦などではなく、単なる「若者の葛藤」の発露だったのではないかということだ。

病院にいる弟は、兄と2人でやった犯行であり、大きな組織(アルカイダ等)が背後にあるわけではないと話しているが、そこに嘘はないように考える。

というのも、アルカイダが背後にあったとすると、2001年9月11日のテロ事件から12年がたっていながら犯行そのものに稚拙さが目立つ。防犯カメラに姿をさらし、爆破後の行動計画も練り込まれていない。

もしイスラム過激派と密接な関係にあるとしたら、この程度のテロ行為では済まなかったはずだ。それは手作りの圧力釜爆弾という点でもみてとれる。

実は元CIA(米中央情報局)のテロ対策室にいたフィリップ・ムッドも同じことを述べている。

「単に人が集まるからという理由でボストンマラソンを選んだ安易さがある。それは大きな組織が背後にいないことをうかがわせる。9.11では19人が関与していた。しかも資金提供者がいて、訓練を施した教官もいた。思想的なバックグランドもしっかりしていた。そして少なくとも3年という歳月の準備期間のあとに犯行におよんでいる」

あのテロ事件と比較すると、兄弟の行動はお粗末である。チェチェンからアメリカにやってきて、社会に馴染めなかった現状への不満と怒り。兄弟がイスラム過激派に共有する思想を宿し、それを実践したようには思えない。

犯行動機を問われたときに、イスラム教徒として崇高な理念があったからだと思わせたいだけのようにも見えるのである。

周囲があ然とするようなことをする。そこから見える犯人像は、コロンバイン高校銃乱射事件の実行犯と似てくる。少なくともアルカイダが操っていないことだけは確かなようである。(敬称略)

英語を聴く

言語は使わないと確実にその力が落ちていく。

母国語であっても例外ではない。国外で日本語を使わない生活を20年も続ければ、言葉は出にくくなるし、語彙力も落ちる。外国語であればなおさらだ。

私は6年前にアメリカから日本に戻って以来、英語力はゆるやかな下り坂を降りている。仕事場で英語を使う機会は多いが、日常生活では英語を必要としない。英語を日常的に使っている人は、たぶん日本人の1%もいないだろう。

それでも「英語を話せるようになりたい」「英語をものにしたい」という方は多い。最近でも大学時代の友人と妻の後輩から、英語がうまくなりたいという主旨の発言を耳にした。

外国に住まずに、日本国内だけで英語を使えるようになるには異常なほどの執着心をもたなくてはいけない。努力なくして外国語をものにできないことは、ほとんどの方が熟知しているとおりだ。

私は英語をしゃべらない日はいまでも声をだして英文を読んでいるし、下記のインターネットラジオでトークショーを聴くことが多い。

日本で市販されている英語教材にくらべると格段にスピードが速いが、それが普通のアメリカ英語である。フォックスニュースのトークショーで、24時間休みなく英語が繰り出される。

ご存じの方も多いだろうが、フォックスニュースは保守派(共和党)に傾斜したメディアである。政治的に私は逆の立場(民主党)にいるが、保守派の論客の話に耳を傾けるのも興味深い。

http://urx.nu/3TOj (HPの画面の左上にある「Listen Live」をクリックすると聴けます)