ピンポン・シスターズ

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8月14日午後12時半。有楽町の日本外国特派員協会の記者会見に現れた「ピンポン・シスターズ」。

彼女たちは帰国後4日間、メディアに出ずっぱりでいささか疲れが見えたが、1時間半におよぶ会見で繰り出された質問に一つ一つ丁寧に答え、好印象を残して去っていた。

ロンドン五輪で彼女たちのハイライトはなんと言っても準決勝のシンガポール戦。メンタルな強さと気合いだけで勝てる相手ではなかった。

練り込まれた戦術があったはずだ。それを3人に訊いたが、福原愛はこうかわした。

「シンガポール出身の記者も来ているので、戦術はあったが言わないことにする」

平野は「実際に戦術もちゃんとあった。けれども気持ちでぶつかっていった」と淡々と語る。石川は「10本返されたら11本決めるという気持ち」と、勝った自信が顔に溢れていた。

彼女たちの上にいるのは中国だが、「中国はライバルというより目標。いまは1ゲームを取るのが精一杯。まず距離を縮めていきたい」(福原)と、まだまだ先が長いことを認めた。

それにしても、質問の受け答えと所作はゴルフの石川遼に通ずる純粋さがあった。狙ってできる身のこなしではない。

何千、何万という数のメディア取材を受けてきただろうが、それでも丁寧な対応ができることに、むしろこちらが驚いた今日の会見だった。(敬称略)

ここも東京都

久しぶりの山歩き。編集関係の男女9人で奥多摩の低山を練り歩いた。

ゆっくりしたペースで歩を進めては腰を降ろし、水を飲んでは飴を食べるといったオジオバのそぞろ歩き。奥多摩湖に着いたときには足腰が「もうこれ以上は行くな」とタオルを投げてきた。ただすぐには痛みを伴わない。

昔から思っていたが、翌日に筋肉や関節が痛いのはいったいどうしたことか。遅発性筋肉痛というらしいが、特に今回は膝がグズグズいっている。豆腐にあたっても崩れそう。

でも東京都下であっても奥多摩までくるとカブトムシがいて、川には沢ガニが遊ぶ。

一時の涼と翌日からの痛みでプラスマイナスぜろか。いやいやプラスの方が大きい、、、、ということにしておこう。

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ある女性写真家のこだわり

2006年秋、まだアメリカの首都ワシントンにいた時のことだ。ある日本人女性から電話がかかってきた。

ドキュメンタリー映画の制作を手がけていた女性は、これからはフリーランスのカメラマン(スチールの写真家)になりたいという。すでに結婚し、息子2人を連れての留学で、修士号取得後の進路がフリーランスのカメラマンなのだがどうだろうかという話だった。

多くの人は「止めておけ」というだろう。経済的に不安定だからだ。

だが会ってすぐに彼女が本気であることに気づいた。だから「やる気になればできます。ぜひやってください」とフリーランスの道を勧めた。

私自身がフリーランスで「飯が喰えていた」こともあるが、知り合いの日本人カメラマンもフリーランスで家族を養っている人が何人もいた。できないことはない。

それから5年以上が経ち、加藤里美は精力的に世界中を飛び歩いていた。昨年、5年ぶりにパキスタンに渡り、再び現地でイマという瞬間を切りとってきた。その成果がいま有楽町の日本外国特派員協会で写真展と結実している。

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「もう組織では働けないです。フリーでいられる精神的な自由さは何ものにも代えがたい」

自信に満ちあふれたカメラマンがそこにいた。(敬称略)

加藤里美写真展は8月31日まで。

Image Caption – Foreign Correspondents’ Club of Japan

依然として僅差の米大統領選

11月6日のアメリカ大統領選投票日まで3ヵ月ほどになった。

今月27日からはフロリダ州タンパで共和党が夏の党大会を、9月3日からはノースカロライナ州シャーロッテで民主党が党大会を開く。そこからが現職オバマと挑戦者ミット・ロムニーによるエンジン全開の戦いが始まる。

相変わらず僅差の戦いが続いているので、大手メディアや学者は大胆に予測しない。私は僅差の戦いでありながら、オバマ再選と書き続けているので、今でもそのスタンスは変わらない。 

確かにオバマの支持率は高くない。というよりも落ちてから留まっているという表現がふさわしい。ギャラップ社の最新世論調査では、オバマの支持率は45%。不支持率が48%で、4年前の熱狂はない。

政府が多くの規制をつくり、社会に関与しすぎるとの考えは保守層だけでなく穏健派の人たちにも広がっている。ただ、それだからといってロムニーの支持率がオバマを圧倒する状況にはなっていない。

全米レベルの失業率は8.3%で高止まりしているが、インフレ率は安定している。昨年8月に3.8%だったインフレ率は最新の数値(6月)では1.7%まで落ちている。

失業率が高くてスーパーの棚にならぶ商品がどんどん値上がりしていたら、市民は必然的に現職大統領を見捨てる選択をするが、物価上昇は見られない。これは現職には追い風だ。

さらに選挙対策本部がこれまでに集めた資金総額をみると、オバマ陣営が約3億ドル(約234億円)に対し、ロムニー陣営は約1億5300万ドル(約120億円)と相変わらず2対1の比率である。カネという要因だけをみると「オバマが負けるわけがない」ということになる。

けれども専門家によっては今、アメリカの経済成長率が鈍化しているので、僅差でロムニーが制すると予測する人も出ている。今月末まで大統領選は「盛り下がり」の時期だが、党大会以降はいよいよ本格始動する。(敬称略)

オバマ家の愛犬「ボー」。   by the White House

オリンピックと限界

テレビでオリンピックを観ていると、知らないうちに「なんて偉そうなことを言っているんだ」という思いでハッとさせられることがある。

柔道の試合を観ていても、北島康介の泳ぎを観ていても、身勝手なセリフをテレビ画面に向けていたりする。勝手なものである。「それじゃ自分でやってみたら」と言われると、なんとも返答のしようがない。

さらに4年ごとにオリンピックを観て思うのは、それぞれの競技にいつかは世界記録が固定されてしまうだろうということだ。北島が決勝で敗れた時、優勝した南アのキャメロン・ファンデルバーグは58秒46の世界新記録だった。

この記録は今後も破られそうだが、人間の能力の限界は確実に近づきつつある。

1968年のメキシコ・オリンピック。走り幅跳びで優勝したボブ・ビーモンは8メートル90センチを跳んだ。当時小学生だった私はビーモンの飛翔を鮮烈に覚えている。同時にテレビ解説者が、「この記録は今後1世紀は破れないかもしれません」と言ったことも記憶にある。

小学生ながら、この記録が人間として最長の飛翔なのだと思い込んだふしがある。だが23年後、アメリカ人のマイク・パウエルが東京で行われた「世界陸上」でビーモンの記録を5センチ上回って着地した。100年は持たなかった。

だがあれから21年。誰もその記録を超えていない。もしかすると今後1世紀、いや人間が人間である以上、もう超えられない記録かもしれない。今はまたそうした思いに駆られるが、偉大な選手がのちに登場する可能性の方がたぶん高いだろう。

それは柔道やテニスといった記録をめざさない競技以外すべてにいえることだ。

けれども、よく考えてみると100メートル走にしても水泳の100メートル自由形にしても、いつかはこれ以上速く走れず、泳げずという日がくるだろう。

ウサイン・ボルトはすばらしい走者だが、8秒台は無理だ。水泳も、今後人間にヒレでも生えないかぎり、100メートルを30秒で泳ぐことは無理だろう。となるといつかは人間の限界がきてしまうのか。

                           

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こんなつまらない思いにとらわれていてはオリンピックがつまらなくなるし、選手に失礼だ。素直に喜んだり「ザーンネン」と思うことにする。(敬称略)