地球儀を抱いて寝ろ!

東京都内でIMF(国際通貨基金)・世界銀行年次総会が開かれている。世界中から中央銀行の総裁や財務関係者が集まっており、昨日、友人のドイツ人記者と共に関係者2人と懇談した。

会議の席や日本の政府関係者には言わないことをズバズバと口にするので気持ちがいい。

「日本国内でビジネスを展開するには相変わらずコストが高い。しかもデフレ状況は続いたままだし、わざと外国企業や外国人を迎え入れないようにしているとしか思えない規制が相変わらず多い。これでは日本の将来は暗い。目の前にあるドアを自分たちで閉じているようなもの」

日本はGDPで中国に抜かれたとはいえ、相変わらず世界3位の位置にいる。外国にとって巨大市場であることに違いはない。

私は「日本企業はどこの国にいっても適応する努力をしている。外国企業も日本市場に合わせて努力すべきだ」と主張した。

だが、彼らの主張は20年以上も変わっていない。

「市場に入ると非関税障壁がいまだに高いしコストも高い。21世紀になっても保守的で保護主義的なアプローチが横行している」

言い争いをしていても埒があかないが、意見が合った点は日本の政治が外を向いていないということだった。

スポーツ選手や研究者の中には世界で羽ばたいている人が少なくない。企業も国外で多角的な事業を展開している。だが、首相の野田の眼は外に向いているだろうか。国内の政局で手一杯という印象である。日本経済を上向かせるビジョンとその行政手腕も期待できない。

さらに2人は新しい財務大臣の城島にまったく期待していなかった。野田政権がもう長くないことは熟知している。ただ、ホスト役である日本の財務相が、官僚のメモなしで諸外国の財務大臣とマクロ経済の議論もできないのが現実である。日本がなめられるのは当然である。

建築家の安藤忠雄が9月下旬、テレビ朝日の報道ステーションに出演し、若者に対して「地球儀を抱いて寝ろ!」と述べていた。日本の国会議員にもぶつけたい言葉である。 (敬称略)

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不穏な尖閣

これまでも当ブログで尖閣問題については私見を述べてきた(尖閣は実行支配こそがカギ )。

2年前、中国人船長の勾留問題が起きたが、いまは当時と比較にならないくらい中国側での反日感情が強い。個人的にはこうした時の外交交渉に携わりたいくらいである。

もしかすると中国と限定的な交戦にまで発展するかもしれないが、それを食い止めるのが外務省と官邸、さらに日中の議員同士の交渉である。

限定的とはいえ、戦争がもたらすプラス要素はほとんどない。それを阻止するあらゆる手立てを中国共産党指導部としなくてはいけないが、もちろん尖閣を譲るといったオプションは日本にはないし、してはいけない。

尖閣はこれまで日中間の暗黙の了解で、日本の実行支配が効力をもってきた。それでも日本側は中国漁船が「周辺海域」で操業するのを黙認していた。こうした微妙な緊張関係が実は大切である。

外交関係というのは、いつでもお互いが手をつないでルンルンといった間柄でなくていい。緊張した関係であっても、それが平和的な現状維持であれば何の問題もない。むしろその方が好ましいくらいだ。

だが、どう見ても野田政権内に中国共産党指導部との太いパイプがない。ほとんど中国と話がついていないように思える。共産党ももちろん尖閣に軍事侵攻した後の短期的な利益は見いだせないだろうから、大それた真似はしないだろうが、万が一もあり得る。

いま中国国内では反日感情の発露が暴動という形になっているが、日本は冷静にやり過ごすべきである。両国にとってすでに大きな損失になっているが、最大の危機は中国の空挺部隊が尖閣に上陸し、中国艦船が尖閣周辺の洋上に通常配備され、武力による実行支配にでたときである。

82年のフォークランド紛争で、イギリス首相のサッチャーはもちろん交戦を選び、アルゼンチンと戦って3ヵ月後に白旗を揚げさせた。

野田政権は交戦に至らないように交渉力を発揮しなくてはいけないが、最悪の事態になった時には迎え撃つガッツも必要だ。(敬称略)

脳を飛ばす!

長い間、活字メディアで仕事をしている。ときどきテレビやラジオにも呼んで頂くので、できるだけ出るようにしている。

ほとんどの方はお気づきだろうが、テレビやラジオといった放送メディアは、瞬間芸とでも呼べる直感的な機転が必要になる。特にナマ放送では、それなくして伝える側にいる意味がないようにさえ思える。ボーッと座っているだけでは、出演している価値がない。

今週、WOWOWの夜の番組で話をする機会があった。ジョン・カビラが司会をする1時間のナマ番組で、私の持ち時間は約15分間。ホワイトハウスについて話をしたが、いくら自身がよく知ることであってもテレビ向けに話をする時は「分かりやすく」が大切だ。

もちろん台本があり、進行の時間が決められ、それに沿って話をする。だが本番のスタジオには一般参加者が座り、そのうしろにディレクターを始めとした番組関係者がジッーとこちらを見ている。かなりテレビには慣れてきていても、視線が散ってしまう。

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                       By WOWOW

カメラの横にある丸時計の秒針がチクチク動いているのが気になる。流れに乗って話をしていると、テレビカメラの下で跪きながらフロアディレクターが「次の写真はカット」と、リハーサルとは違う指示を出してくる。

その横では違うフロアディレクターが「このコーナーあと2分」といったカンペをかざす。その途中で、右手にあるモニターを見ながら私は「キュー」をだして、新しい写真を写し出してもらわなくてはいけない。

そうしていると、カビラがもちろん台本にはない突っ込みを入れてくる。それに答えながら次の話の内容を考えていると、フロアディレクターが「次に進んで」といった指示を飛ばす。

活字メディアには普通、考える時間がずいぶんとある。文章を紡ぎながら次の表現をどうするか、ハタと考えこんで時間がたつことも少なくない。

テレビやラジオはその対極に位置する。敢えて表現するならば 「脳を飛ばす」ことを知り、その喜びを味わえないといけない。

だが、まだ喜びに変わらない、、、、。(敬称略)

もう一つの領土問題

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北海道根室半島の先端、ノサップ岬。霧の向こうに歯舞群島が見えるはず、、、、わかります?

「返ってくるわけないでしょう。戦後67年、動かないんだから」

岬の断崖のすぐ横で食堂を切り盛りする女将はこともなげに言った。そこからもっとも近い島が貝殻島(ロシア領)という名で、3.7キロ沖合に浮かぶ。この時期は霧がかかりやすいという。

「2島返還でもいいけどね」

地元では4島の一括返還を要求する人たちと、まず2島が返還されればいいという人たちに分かれる。 

竹島の韓国と北方領土のロシアであれば、ロシアの方が交渉の余地はある。