低出生率の罠

今朝(6月12日)の朝日新聞の天声人語で、「低出生率の罠」というテーマが論じられている。低出生率は文字通り、日本を含めた東アジアや西ヨーロッパの国々で、出生率が低いことで人口減少が起こり、さまざまな問題が起こることを指すが、この「罠」という言葉は低出生率によって、女性たちはさらに子どもを産まなくなことをいう。

天声人語の中で英国の人口学者ポール・モーランド氏の近著『人口は未来を語る』という本が紹介されていて、出生率が低下すると子どもをもつことへの意識や価値観が変わり、今まで以上に出生率が下がるという指摘があった。

ただ私が知る限り、 オーストリアの人口学者のヴォルフガング・ルッツ氏が2006年に発表した論文に、すでに「低出生率が長く続くと、少子化から抜け出せなくなる」とする「低出生率の罠」が問題提起されている。

そこではまず、親の人口が減れば当然ながら出生数は減少するという事実が指摘されたあと、「兄弟が少ない環境で育った子どもたちは、少なくても良いと考える」可能性が高いと述べられている。さらに、親の世代よりも経済的に豊かになれないと思う子どもたちは、多くの子どもを作ろうとは思わなくなるというのだ。考えてみれば必然的なことで、社会が子どもを必要としているという漠然とした思いが各々にない以上、子どもを産もうとは思わなくなる。

東アジア諸国の合計特殊出生率(2023)をみると、日本が1.20であるのに対して中国は1.00、台湾は0.87、韓国が0.72でいずれも日本より低い。これからいったいどうなるのだろうか。