プーチン訪中の本当の意味

ロシアのプーチン大統領は16日、中国を訪問して習近平国家主席と会談した。今回の訪中の意味は各種メディアでさまざまに受け取られているが、「中ロの絆を世界にアピールか」(朝日新聞)に代表されるように、米国主導の世界秩序に対抗することを中心にした世界観を中ロで共有するとの見方が主流である。だが本当にそうだろうか。

確かに、プーチン氏は「中国はロシアの戦略的パートナーであり、この2国間関係はロシアの大統領と中国の指導者が選んだ道である」と新華社通信とのインタビューで答えているように、表向きは対等な共存関係があるかにみえる。だが最近は、「ロシアの中国への思い入れ」の方がはるかに強くなっているとの情報が入ってきている。今回のプーチン訪中もそのあらわれで、プーチン氏はなんとか中国からより多くの支援を取りつけたいのだという。

東京にいるヨーロッパからの特派員と話をしても、ロシアではいま欧米からの輸入品が止められていることから、中国製が溢れており、「中国サマさま」なのだという。モスクワでは中国製の車が道を行き交い、スーパーに行くと中国製品が山積みになっている。調べると、昨年ロシアで販売された100万台ほどの車の半分以上が中国製だった。外国車ブランドの上位6位までが中国車である。スマートフォンも中国製が跋扈している。

モスクワに住むエリートたちは子どもたちに北京語の家庭教師を見つけようと躍起になっているとの話もある。これまでは欧米の大学に留学するのが人気だったが、いまや香港か中国本土の大学にいかせるべきとの思いが強くなっている。

その背景にはロシアのエリート家族にとって、西側ヨーロッパは恨みの対象であったが、それに代わって中国がいま、技術的にも経済的にも優れた大国という捉え方に変容してきているからである。ロシアが今後、西側ヨーロッパ諸国と正常な関係に戻ることが容易でない以上、中国をより重視する関係になっていくと思われる。それが今回のプーチン訪中ではっきりしてきたことである。