昨年11月に新潮新書から出された『スマホ脳』を読んでいると、最近耳にするようになった「グーグル性健忘症」という言葉がでてきた。
この意味は、スマホを含めたデジタル機器を多用するようになって、「スマホを使えばすぐに分かるから」という理由から、自分からすすんで多くのことを覚えなくなる現象をいう。これは私にとっては「ひざポン」なのである。
加齢による記憶力の低下もあるが、以前よりも確実にグーグルに頼る機会が増えたことで、積極的にモノゴトを覚えることが減った。それにより「あああ、また忘れた」という思いを抱くことが日々の中で増えた。
『スマホ脳』の著者、アンデシュ・ハンセン氏は本の中で、こう記している。
「記憶するためには、集中しなければならない。そして次の段階で、情報を作業記憶に入れる。そこで初めて、脳は固定化によって長期記憶を作ることができる。ただし、インスタグラムやチャット、ツイート、メール、ニュース速報、フェイスブックを次々にチェックして、間断なく脳に印象を与え続けると、情報が記憶にかわるこのプロセスを妨げることになる」
つまり、脳は自分で覚えようとしなくなるというのだ。脳も学習して、スマホを使えばわかるからと、記憶に残そうとしなくなる。つまり近道を選ぶというのだ。ハンセン氏は書いている。
「本当の意味で何かを深く学ぶためには、集中と熟考の両方が求められる。素早いクリックに溢れた世界では、それが忘れ去られている危険性が高い」
この指摘は的を得ている。スマホが決して悪いというわけではなく、紙の本も読み、ゆっくりしたペースでモノを考える時間も作るべきということだ。やはり本はいつも手元に置いておきたいと思う。