初バラエティ

いまだに人生初ということが起こる。

6日午前、テレビのバラエティ番組に初めて出演した。大阪、朝日放送の「正義のミカタ」という、いわゆる大阪ローカルの番組である。

これまでもテレビやラジオに呼んでいただくことはあったが、すべてニュース番組だった。だから、芸能人と一緒にテレビカメラに収まるという経験はない。

出演依頼を受けてから、少しばかり気をもんでいた。どこまで彼らのスピードと「乗り」についていけのるか、つっこまれた時にどこまで対応できるか、といった憂慮があった。

ただ私自身、ミーハーな部分もあり、バラエティも経験したいとの思いから依頼を受けることにした。

MCは東野幸治。レギュラー出演者には薬丸裕英、ほんこん、阪神タイガースの元選手檜山進次郎、弁護士の大淵愛子、宮崎哲弥といったテレビでよく目にする面々が大勢いた。

私はアメリカ大統領選について持ち時間の約20分間、フリップを使いながら話していけばいい。バラエティといってもニュースを扱うバラエティで、私にとっては未知の分野ではない。

午前8時に局入り。個人の楽屋というものはなく、大部屋を何人もの出演者と共有する。部屋のすみに荷物を置いた。

「堀田佳男様」とかかれた最新の台本が机の上に置かれてあったが、前日にディレクターから渡された台本に書き込みをしてあったので、そちらを使うことにする。

「同じものですから」(ディレクター)

最新版をめくると、表やグラフがカラーで印刷されているだけだった。すぐにリハーサルをやるとディレクターは言った。

ニュース番組にまずリハーサルはない。いつもぶっつけ本番である。だから、リハをしてくれるというのはありがたかった。バラエティならではなのだろう。リハでは東野役をディレクターが務めていた。

リハが終わると化粧である。10人ほどの出演者が同時に座れるほどの化粧室でドーランを塗ってもらう。すると、東野が「おはようございます」と通り過ぎた。

しばらくすると、下着姿の東野が私のまうしろでヒゲを剃っていて、「大統領選って、、、」とまるで小学校時代の友達に話しかけるような気さくさで話しかけてきた。

「・・・テレビで観るのと一緒だ・・・」

まったく気取ったところのない人で、好印象を抱く。番組中も前後も、東野の態度は同じだった。むしろ気づかいが優しい。出演者の中にはテレビで観る印象と違う人がいたが、そこには触れないでおく。

化粧のあとに全体会合があり、20人弱の出演者が小さめの部屋にあつまり、プロデューサーから番組の説明をうけた。冒頭、プロデューサーから「初出演の堀田佳男さんです」と皆に紹介される。

「よろしくお願いします」と言って頭を下げた。

私の真向かいに薬丸裕英が座っており、眼が合ったので「こんちには」と言って会釈する。顔が小さい、、それが第一印象。

会合がおわると出演者はダラダラとしたペースでスタジオに入る。ひな壇の2階中央が私の席だった。出番は2番目で、CM 中に2階席から下におりる。

いちおう大きなポカもなく仕事を終えた。

1時間半のナマ番組はあっという間の出来事だった。ただ自分の出番以外でコメントを言えなかったのは経験のなさというより、バラエティに対応できる素質のなさなのだろうと思う。

バラエティから再び声がかかるかはわからない。(敬称略)

声が空をゆく

kunimarujapan1.25.16

いったいどれくらいの方が耳を傾けているのだろう。

ラジオのスタジオに入って顔の見えない聴取者の方々に話をしなくてはいけない。眼のまえにパーソナリティー(野村邦丸)とアナウンサー(加納有紗)が座っているので、便宜的には彼らと話をすればいいのだが、万単位の方が声を聴いていると思うと「私の話なんかでいいのか」とも思う。

メディアはつねに一方的である。ネットの登場によって双方向型になりつつあるが、情報量という点では今でも圧倒的に送り手に軍配があがる。

けれども、送り手側の情報がいつも正しいわけではないし、スタジオで話をする人よりももっと事情に精通した人が外部にいることも知っている。たまたま縁があって呼ばれているだけに過ぎない。

与えられた機会を生かして、できるだけ多くの方に、わかりやすく情報を発信することもジャーナリストの使命である。

AMラジオ、文化放送『くにまるジャパン』で米大統領選について話をした。テレビで与えられた時間よりもはるかに長く、ひとつのテーマを掘り下げられる点で、ラジオという媒体は魅力である(『くにまる「アメリカ大統領予備選」塾』文化放送)。

裏側を少しだけ

別に新しいことではない。だがテレビの番組制作の現場をみる機会はそれほど多くない。

今月7日午前9時。テレビ朝日5階の大部屋には40~50人のスタッフがラフな出でたちで、それぞれのパソコンに向かい合っていた。

毎朝、午前10時半に始まる番組「ワイド!スクランブル」の制作スタッフだ。前日の一大ニュースである北朝鮮の水爆実験がその日のトップニュースである。

「半分くらいの人は徹夜です」と女性スタッフは言った。

私が番組に呼ばれたのは、2番目のコーナー「米大統領選候補トランプ」で話をするためだった。すでにスタッフや出演者は水爆実験についての打ち合わせを始めていた。

しばらくして「堀田さん、お願いします」と打ち合わせに参加するように促された。

チーフプロデューサーを筆頭にチーフディレクター、数人のディレクター、そして番組のMCである橋本大二郎、アナウンサーの大下容子、若い局アナ、レギュラー・コメンテーターの中野信子らが席についている。

「よろしくお願いします」と言って席につくと、すぐにチーフディレクターが司会役となってコーナーの進行を説明し始めた。台本にはすでに誰がどういう質問をするかが記されていた。

台本の「堀田:」というところに来た時、チーフディレクターが私にコメントを求めてきた。どういった内容の話を、どれだけ明瞭に、落ち着いて述べられるかが試されていた。少しばかり心拍数が上がる。

思っていることを少し長めに話した。全員が肯いている、、ように見えた。橋本と大下は下をむいて、ずっとノートを取っている。

そのあと橋本からいくつか質問がでたが、どれも的確なもので、問い詰められるようなものではなかった。その場にいた全員から柔和な暖かさも感じて、気が楽になる。

「スマステーション」でも司会をしている大下はテレビで観るよりも小さく、しかも白くみえた。何も語らず、ひたすら台本にメモをしている。

中野は私の右側に座っていたが、最初は誰だか気づかなかった。彼女が2度目の発言をした時にはじめて「脳科学者のあの人だ」とわかった。

番組の前後で少し話をしたが、たいへん人当たりの柔らかい人であることを知った。バラエティー番組で観て想像していた通りの柔軟さをもっているように思えた。

20分ほどで打ち合わせが終わると、私のコーナーが始まる11時15分まで控え室で待つことになる。

11時過ぎになって「堀田さん、化粧をしてください」と呼ばれるまで、下の写真の楽屋で、私はスマホを使って音楽を聴いていた。(敬称略)

 

DSC01468