資本主義はすでに死んだ?

ギリシャの元財務大臣であり経済学者のヤニス・バルファキス氏が『テクノ封建主義(Technofeudalism : What Killed Capitalism)』という新著をだして話題になっている(邦訳はまだ)。

この本の副題に示されているのは、冷戦が終結し、世界中がグローバリズムというものに席捲されている今、誰が資本主義を殺し、新しい時代には何が待ち受けているのかということである。

著者のバルファキス氏は資本主義は打倒されたのではなく、別のものになってしまったという。それを『テクノ封建主義』と名づけている。資本主義が終焉を迎えたのはマルクスが予言したような方法でなく、資本主義そのものに矛盾があったからで、資本と労働という対立が悪化して自滅していくという推論を展開している。

その中で興味深い指摘は「クラウド資本」というものが現在の市場を消滅させて、別のものへと移行していくということだ。つまり社会主義でも資本主義でもなく、新しい体制ができつつあるというのだ。まだ私も本書を手にとっていないので詳細はつかめていないが、是非手にとってみたい本である。

中国への直接投資にはもう関心がない?

from 国家外貨管理局

外国企業による中国への直接投資が減少している。中国の国家外為管理局(SAFE)が今月18日に発表したデータによると、国外からの直接投資は前年比で82%も減少し、1993年以来の低水準に落ち込んだ。まるで「もう中国には関心がありません」と言わんばかりのレベルである。

中国への直接投資は1978年に当時の最高指導者だった鄧小平氏が、改革解放政策として国外からの直接投資(FDI)に門戸を開いたのが始まりだ。以来、外国企業は莫大な市場と安価な労働力を手に入れるため、中国での事業買収や工場建設を進めてきた。

しかし昨年なかば頃から、外国企業は中国経済の成長の鈍化や政治リスクを警戒して対中投資を控えだした。新規投資に慎重になるだけでなく、事業の縮小や撤退を進める企業すらでてきた。米国と中国の対立や昨年7月に施行された反スパイ法を警戒して、さらに足が遠のいてさえいる。

また、中国政府が特定の外国企業への規制や取り締まりを強化したり、米コンサルティング会社への家宅捜索を行ったりしたことで、今後は「中国市場に投資したいという企業はいなくなる」とまで言わるまでになっている。こうした動きが加速すれば、世界貿易の柱になるといわれてきた対中直接投資は地殻変動を起こし、世界経済に大きな影響を与えることになる。

殺人と考える方が自然:ナワリヌイ氏の死亡

このニュースに接した方の多くは「ロシア政府が手をくだしたに違いない」と思われたことだろう。それほど不自然な死だった。

ロシアでは最も名のとおった野党指導者だったアレクセイ・ナワリヌイ氏(47)。ロシア政府当局は16日、同氏が収監されていた北極圏の刑務所で死亡したと発表した。その日、ナワリヌイ氏は散歩から戻った後「気分が悪い」と言い、そのまま意識を失ったという。救急医療チームが蘇生を試みたが、意識は戻らず亡くなった。まだ47歳だった。

同氏の側近レオニード・ヴォルコフ氏はSNSで、「ロシア当局が刑務所でナワリヌイ氏を殺害した」との告発文を公表した。ナワリヌイ氏は死亡前日の15日、刑務所内から動画を発信しており、その映像には元気な姿が写っていた。

米バイデン大統領は同氏の死去を受けて、「彼はプーチン政権によるあらゆる腐敗や暴力、悪行に立ち向かった。それに対し、プーチン氏は彼を逮捕し、でっちあげの犯罪で起訴し、実刑判決をくだした。そして独房に入れさえした。それでも彼は真実を口にすることを止めなかった」と述べた。

ナワリヌイ氏には複数の罪状が課せられていたが、それは当局が彼を拘束するための口実であると言われている。同氏は「未来の美しいロシアへの希望と信念」を決して失わなかったという。彼を支える信奉者たちはプーチン体制の終わりとロシアの政治変革を期待していたが、しばらくは実現が遠のくことになった。

宇宙滞在最長記録

人間はどれくらいの期間、宇宙に滞在し続けることができるのかー。

ロシアの宇宙飛行士オレグ・コノネンコ氏(59)が4日、878日11時間を超えて、これまでの宇宙滞在最長記録を塗りかえた。878日というのはおよそ2年と5カ月。ただ継続的に2年以上いたわけではなく、累計である。

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 from X

最初に同氏が宇宙飛行にでたのは2008年で、今回が5度目の国際宇宙ステーション(ISS)滞在となる。ISSは地球から約420キロはなれた軌道を周回しており、地球への帰還予定は今年9月23日。その日まで滞在すると滞在記録は1110日に達する。

これまでも宇宙に関連する世界記録は米国ではなくロシアが達成する傾向があった。1957年にスプートニク1号という世界最初の人工衛星を地球周回軌道に打ち上げたのもロシアだったし、61年にはユーリイ・ガガーリン大佐が人類初の有人宇宙飛行を行なってもいる。

ただ国際宇宙ステーションは米国とロシアが緊密に協力している数少ない国際プロジェクトの一つで、日本やヨーロッパを含めた多国籍共同プロジェクトでもあるため、このまま継続されてほしいと思う。

日本人が実感できない戦争

年が明けてから悲劇と呼べる出来事が相次いでいる。日本では大きな報道になっていないが、イエメンの反政府武装組織フーシによる商船への攻撃に対し、米英軍が報復攻撃を行っているのもその一つだ。すでに戦争と呼べるレベルで、すぐに収束するとは思えない。

「戦場」になっているのは紅海で、ここはスエズ運河を通してヨーロッパとアジアを結ぶ重要な航路であり、日本を含めた諸外国の商船はここを通過してきた。しかし戦場になってしまったいま、世界50カ国以上の商船はスエズ運河からアフリカの喜望峰を回る迂回路を使わざるをえず、コストだけでなく数週間の遅れが生じることになっている。

フーシはイスラエルを敵であると宣言している。昨年10月には、イスラエルにミサイル攻撃を行っており、「パレスチナで抑圧されている同胞を救うため」と発表した。基本的にイスラエルが攻撃をやめるまで軍事作戦を続ける意向で、ガザでの戦闘が継続される限り、フーシによる商船への攻撃は収まらないだろう。

「紅海の戦場化」により、すでに2000隻以上の商船が紅海をさけるために迂回を余儀されることになっている。今後は沈静化どころかフーシと米英軍による戦闘の激化の可能性もあり、今年はある意味で「戦争の年」になるかもしれない。