堀田佳男 Profile
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メタ情報
カテゴリー: Thought for the day,国際事情 ― 2019年5月27日
トランプ来日に思う

トランプが来日し、日本のテレビや新聞は大騒ぎである。国技館では升席を外して特別席を設置する破格の扱いだ。

過去何十年と続いてきたアメリカ優遇の姿勢が、いまだに日本の隅々にまで染みわたっているかのようですらある。それは特に日本の政財界トップに顕著にみられることで、「アメリカには逆らえない」という思いが底流としてあるからなのだろう。

トランプ来日直前、経団連会長の中西宏明は「トラの尾を踏まないよう、対応策をしっかりとらないといけない」と発言した。21世紀、いや令和の時代になってもいまだに「トラの尾を踏まないように」といった消極的な発言をアメリカに使っている。

それほどアメリカが怖いのかと思う。トランプに張り手を食らわせることは決してしないのだ。理念よりも実利を取る政策はほとんど揺るぎがないと言えるほどである。

突っ張ることで制裁関税を課され、巨額の損失を被るよりはマシとの考え方があることは分かる。だが、一国家が国益を追求し、時に理念を押し通すことも必要だ。

いつかそんな日は来るのだろうか。(敬称略)

カテゴリー: 国際事情 ― 2019年5月20日
トランプの本性

トランプがまた毒づいた。米時間5月20日、イランに対して強烈なカウンターパンチを食らわせた。ツイッターでこう呟いている。

「イランが(米国との)戦いを望むなら、その時はイランが本当に終わる時だ。だから決して米国を威嚇するなよ!」

民主国家の大統領が使うべき表現ではない。

他の大統領であっても、同じようなことを考える人はいるだろうが、言葉を選ばないといけない。アメリカが本気になって米軍を総動員させたらイランが敵わないことは子どもでもわかる。だからこそアメリカは配慮ある言動をしなくてはいけない。

高圧的なツイッター外交は止めないと恥ずかしい!

カテゴリー: 国際事情 ― 2019年5月9日
上皇天皇が述べた「平和の海」

平成の時代に天皇だった明仁さまは今、上皇明仁と呼ばれる。いまも昔もすぐにお目にかかれる方ではないが、1993年6月、私はホワイトハウスでお目にかかる機会があった。

当時のビル・クリントン大統領が両陛下をワシントンに招待し、ローズガーデンという南庭で両陛下にお目にかかったのだ。私は前年にホワイトハウスの記者証を得ていたので、日本人ということもあり招待されていた。

陛下はクリントン氏と招待客に対して長めのご挨拶をされた。その中で、ドワイト・アイゼンハワー大統領を訪ねて以前にもホワイトハウスを訪れていたことを知った。

もっとも印象的だったのは、日米両国の関係に言及された時の言葉だった。「これからも平和な交流が長く保たれ、太平洋が『平和の海』になることを切に希望します」と話されたのだ。

「平和の海」という言葉は新鮮だった。いまでも新鮮な響きがある。知性主義に根ざした両国の思いがその言葉に集約されているように感じ、大変心地よかったと同時に実践していかなくてはいけない、と思ったことを覚えている。

トランプ大統領が国賓として今月下旬に来日する。そこで同大統領はいったい何を語るのだろうか。

rosegarden5.9.19

カテゴリー: 国際事情 ― 2019年3月15日
クジラに乗る

感触は柔らかめのタイヤ—。

クジラの背中にまたがって海面をすべる・・・夢をみた。不思議な夢だった。数日前に、友人にクジラ獲りの話をしたからかもしれない。

私は商業捕鯨には反対だが、生存捕鯨はいたしかたないと考えている。30年以上前、米アラスカ州北端のバローという町で生存捕鯨を取材したことがある。

イヌピアットという先住民族は5月になると、アザラシの皮で造ったカヌーに乗って北極海に漕ぎだす。氷が溶け始めて割れ目ができるとクジラが北上してくるので、そこを狙うのだ。

彼らは自分たちが食べるためだけに銛を投げこむ。銛がクジラに命中すると、無線で村中に知らせがまわって大人も子どもも氷上に集まってくる。何十人もが綱引きをするようにしてクジラを海から氷上にひっぱり揚げる。それは1年間待ちに待った祭りのようで、周囲は歓喜と喜悦につつまれる。

男たちはすぐに大きなナタを手にして解体をはじめる。まずタイヤのような表皮と真っ白な脂肪を剥いでいく。長さ50センチ、幅30センチくらいのブロックに切って氷の上に並べる。その脂肪のかたまりを今度は一片2センチほどのサイコロ大にする。

氷上にはコンロと大きな鍋が用意され、サイコロ大の脂肪を茹でるのだ。海水で茹でたと記憶している。茹で上がると、バサッと氷の上にすべてをぶちまける。子どもたちは待ってましたとばかりに脂肪の塊を口に入れる。まるでチョコレートを奪い取るような忙しさで、いくつもいくつも食べるのだ。

さぞやおいしいのだろうと、私も1つ口の中に放り込んだ。

「ウグゥゥゥゥ」

飲み込めなかった。というのも、ガソリンを口の中に入れたような味とニオイだったからだ。飲み込むことは困難で、すぐにその場から走り去って皆に見えないように氷上に吐き捨てた。それほどガソリン臭が強かった。いまでもあの体験は鮮烈に脳裏に焼きついている。

クジラに乗った昨晩の夢から30年以上前のクジラ獲りの思い出が蘇った。

カテゴリー: Thought for the day,国際事情 ― 2018年12月6日
パパブッシュの思い出

パパブッシュ(ジョージ・ハーバート・ウォーカー・ブッシュ)元大統領が亡くなった。

私にとってはたいへん思い出深い大統領である。というのも、ワシントンでフリーのジャーナリストとして独立した年(1990年)の大統領がパパブッシュだったからだ。

ホワイトハウスの記者証を得て、あの白い館に出入りするようになったのもパパブッシュの時代だ。92年の再選時、ビル・クリントンに敗れた時の表情はもの憂げで、手を差し伸べてあげたいほとだった。

彼が再選で負けた理由の1つは、選挙公約を破ったことにある。

「リード・マイ・リップス(言うことを信じて)!増税はしません!」

こう宣言して大統領になったが、増税を実施してひんしゅくを買った。クリントンは選挙期間中、ブッシュが言った上のセリフをテレビCM用に切り取って繰り返し流した。

「こんなウソつきを次の4年も大統領にしていていいんですか」という内容だった。

私は共和党支持派ではないが、少しだけパパブッシュの弁護をしたい。実は政権発足後も、彼はずっと増税反対派だった。その政治スタンスは変わらなかった。しかし連邦議会は民主党が主流派で、増税案を成立させたのだ。

パパブッシュが法案に署名しなければ法案は法律にならない。署名しないオプションもあったが、国家としての財政赤字が膨らんでおり、税収をあげることは共和党サイドからの要望でもあった。

そして民主党と増税案を調整し、最終的に署名したわけだ。結果的に増税することになり、選挙公約は破られることになったが、苦渋の選択だった。

人のいい、穏やかなおじいちゃんに見えるが、中国大使を経験し、CIA長官も務めた外交の表も裏も知る老練な政治家だった。

ご冥福をお祈りいたします。(敬称略)

georgebush12.6.18

Photo courtesy of NARA

中国大使時代。妻ローラ・ブッシュさんと。