ヤクザのような・・・

5日の当ブログで、国務長官ポンペオと北朝鮮側との会談内容の「読み」を記した。トランプ政権側の北朝鮮への見方があまりにも楽観的なので、すでに密約が交わされているかもしれないとの読みである。

すると会談を終えた7日夜になって、北朝鮮政府が英語の声明を発表し、ポンペオの会談での態度が「まるでヤクザのようだった」と批判した。仲がいいどころの話ではなかったのだ。

ヤクザのようだったは英語で「gangstar-like」という単語である。ポンペオはほとんど脅しに近い交渉をしたというのだ。

ところが今朝(8日)、日本の新聞を読むとヤクザという言葉はでてこない。朝日、読売、毎日、産経を読むかぎり、北朝鮮外務省は「米側の態度と立場は実に遺憾だった」という表現でとどめている。「ヤクザのようだった」はない。

これは新聞記者たちのメモ合わせなのだろうと思う。北朝鮮とアメリカを刺激しないための配慮なのかもしれないが、北朝鮮政府がヤクザという言葉を使っている以上、「それを書かないでどうするんだ!」というのが私の思いである。

ワシントン・ポストやブルームバーグといった外国メディアはしっかりと「gangstar-like」という単語を使い、実は米朝両国が決していい関係に落ち着いているわけではないことを指摘している。

北朝鮮はアメリカ側からの非核化の要求がヤクザまがいの強硬なものと受け取り、逆にポンペオは今回の会談が「生産的で、いくつもの議題で前進があった」とまったく逆の思い抱くにいたっている。

そうなるとアメリカ側の変わらぬ楽観はいったいどこからくるのかとの疑問がさらに沸くし、米朝関係が簡単に友好関係にはならない現実もわかるのである。(敬称略)

トランプと金正恩の本当の関係

6月12日にシンガポールで行われた米朝首脳会談。表面的には、両首脳がいい関係を築き始めるきっかけになったかにみえる。

トランプは3日のツイッターでも「北朝鮮とはいい話し合いが進行中だ。過去8カ月、北朝鮮はロケット発射も核実験も行っていない。アジア中が胸を躍らせている」と楽観的なコメントを載せた。

国務長官マイク・ポンペオも今日から北朝鮮を再訪し、完全な非核化にむけての協議を行う予定だ。ここまでは順調に進んでいるかに見える。だが、本当にいい関係ができているのだろうか。

トランプもポンペオもCIAが作成した「北朝鮮は核兵器を放棄することはない」という内容の報告書を読んでいないわけがない。シンクタンクだけでなく、安全保障問題を専門にする多くの学者も「完全な非核化」はありえないと述べており、2人がこうした「現実的な見方」を知らないはずがない。

にもかかわらず、北朝鮮に対して楽観的な見方と態度を崩さない。これは何を意味するのか。

トランプらしい真の楽観を抱えて明るい将来を実現するために動いているのか、それとも「完全な非核化はありえない」という現実を踏まえたうえで、北朝鮮との会談を進めているのかのどちらかだろうと思う。

前者はほとんどありえないので、後者の「完全な非核化はありえない」ことを前提で話を進めているかにみえる。

あとは密約として、金正恩に核兵器や核物質を使用させず、売却させず、製造させずという約束をとりつけている可能性がある。

トランプと金正恩は意外にも、密約を交わすほどの仲になっているかもしれない。というのも、金正恩を暴走させないためには、それがもっとも現実的な策と思えるからだ。金体制の保証もする。

突っ張りあっていてはまとまるものもまとまらない。それが過去の米朝関係だったからだ。したたかな首脳であれば、それくらいのことはするだろう。

いずれにしても今後1年でトランプ・金正恩の本当の関係が露見するはずである。(敬称略)

出演キャンセル

明日(14日)のTBS『ゴゴスマ~GOGO!SMILE!』の出演がキャンセルになりました。

 

「明日も米朝会談ネタではもたない」というのが番組側の考えです。妥当だと思います。

それでも、昨日の首脳会談は一応「成功」と呼んでいいと思います。最初から2人が細部を詰めないことはわかったいたので、非核化の詳細が共同声明に記されていないとか、体制保証の定義があいまいという批判は、当たらないでしょう。

今後、実務者による協議が何度も行われていく中で細部が議論されていくはずです。

ただ、いきなりトップ同士の会談から始めたというのは、10階建てのビルを建てる時に基礎固めをせずに、いきなりヤグラを乗せたことに等しいです。

枠組みを置いただけでヤグラを乗せた。トランプと金正恩はこうした工法でもビルが建つことを証明しなくてはいけない。

多くの専門家は北朝鮮の完全な非核化は無理だと判断しています。昨日までは私もそう考えていました。いまでもダメになる可能性は高いと思いますが、私はうまくいく可能性もあるという見方に変わっています。

いまはその可能性に希望を託したい。未来のない話はしたくないからです。個人的には両首脳とも好みではありませんが、北朝鮮が少しでも開かれた国になっていく過程の紆余曲折であれば歓迎したいと思います。

シンガポール会談

12日に迫った南北首脳会談。主要メディアは溢れんばかりの情報を発信している。

だが日本の新聞・テレビは情報の入手が遅い。欧米メディアに数歩先を行かれている。たとえば国家安全保障担当補佐官のジョン・ボルトンが首脳会談から外されたというニュースは今日(7日)の朝日朝刊、読売朝刊にでていたが、毎日、日経はあつかっていない。

あつかったとしても7日という時点で遅すぎる。ワシントン特派員のアンテナは低すぎる。

自慢のようになって申し訳ないが、私は月曜(4日)朝、文化放送のスタジオから「ボルトンが外されている」という話をした。まだアメリカのメディアも報じる前のことである。

他の記事を読んでいても「エッ、今ごろ」、「的を得ていない」と思うことが多い。特派員の取材力の問題なのか、語学の問題なのか、その両方なのかはわからない。

ワシントンからの独自情報を総合し、見込まれる会談の中身と両首脳の思惑を記したい。

 

・トランプは北朝鮮への「最大限の圧力」という言葉を辞め、圧力を緩和したことで、短期間での核廃棄ではなく「段階的」な廃棄をあらためて金正恩に認めさせる。両者はその流れで話を進める。

・その中でトランプは完全な非核化を最終目標として掲げる。

・しかし金正恩は決して核兵器の廃棄をしない。非核化という言葉は使うが「朝鮮半島の非核化」という表現を使う。これが金正恩の大前提。

・金正恩は廃棄をしないばかりか、核兵器と核ミサイルを製造しつづける。

・準備期間が短く、いきなり両首脳が顔を合わせた会談では、どちらか、または両者が多くの要求を口にしがちになる。

・トランプは「ディールができた」と過大に吹聴するだろうが、実際は金正恩の得るものの方が大きい。中国や韓国は経済制裁を緩めてすでに貿易を拡大させている。プーチンとの会談も今年9月に実現する可能性がある。

・朝鮮戦争を終結させて平和協定の文書に署名する可能性がある。(敬称略)

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意外に知られていないチビ・マーライオン。大きいマーライオンはすぐ後ろに立っています。

米朝はどれだけ真剣か

6月12日の米朝首脳会談が取りやめになったと思ったら、すぐにトランプらしい心変わりで会談実現の流れが戻ってきた。

トランプと金正恩は世界でいま、もっとも嫌われている首脳といって差し支えないと思う。だが両氏が直接顔を合わせれば、意気投合する可能性があり、平和条約から国交樹立へ進んでいく道もないことはない。

朝鮮中央通信は27日、金正恩が文在寅と会談した後、「歴史的な朝米首脳会談に対する確固たる意志を披れきした」と記しており、少なくとも金正恩はトランプとの会談に前向きであることがわかる。

実はトランプと金正恩はこの点でブレていない。

それよりも両国高官のなかで、会談に懐疑的な人物がおり、彼らが両首脳の考え方に影響を与えているとみられる。北朝鮮では第1外務次官の金桂冠(キム・ケグァン)であり、アメリカ側は国家安全保障担当補佐官のジョン・ボルトンである。

両氏は10年以上前から互いを知っており、罵りあうことさえある。しかし、トランプと金正恩がトップとしての意思を示し、会談に前向きであれば6月12日は歴史的な日になりうる。

もちろん、「非核化」の定義が両国で違うため、政府高官による妥結点の探り合いが難しいが、トップが同じ方向を向いた以上、政府高官たちはすり合わせをしなくてはいけない。

しかし、当欄で過去何度も述べている通り、金正恩が所有している核兵器をすべて廃棄するとは考えにくい。この点で、本当の意味での「非核化」は実現できないだろう。(敬称略)