プレミアム商品の力

「オールド・リップ・ヴァン・ウィンクル(以下ウィンクル)」

この長い名前を読まれてピンときた方はバーボン・ウィスキーに精通されているに違いない。

バーボンでもワイルド・ターキーやメーカーズ・マークなどは日本でも馴染みが深いが、ウィンクルとなると「知る人ぞ知る」銘柄だ。アメリカでも町の酒屋の棚に並んでいることは稀である。

なにしろウィンクルの年間生産量は7000ケースほどだ。適切な比較対象ではないが、ビールのミラー社ミルウォーキー工場が1日に生産する量は約50万ケース。フランスのワイン、ロマネ・コンティが年間6000本ほどなので、量的にはこちらに比類する。

ウィンクルの年間売上は200万ドル(約1億6600万円)ほどでしかない。薄利多売によって大きな利益を出すビジネスモデルの対極に位置するが、家族経営なので十分に採算は取れている。しかも100年以上もこだわりのバーボンを作り続けることで希少価値はさらに高まり、今ではプレミアムがつく。

たとえば15年モノのウィンクルは市場価格が70ドル(約5800円)前後だが、小売店によっては入手の難しさから、いきなり150ドル(約1万2500円)の値がつくこともある。江戸時代から連綿と受け継がれた陶芸に高値がつくのに似ている、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

CEOの選び方

アメリカの大手企業CEOの選び方に変化が生まれている。

「企業トップを誰に継承させるか」は大企業だけでなく中小企業にとっても大きな課題だ。日本の中小の場合、約7割が息子や娘といった親族が後継者になる現実がある。それが企業にとって最善の選択であるかの疑問は残るが、アメリカ大企業の場合、CEO在任期間が過去10年で8.1年から6.3年へと早まり(Booz&Co社の報告書)、退任年齢も53.2歳と若くなっている。企業も時代の変化に合わせざるを得ない環境になってきている。

それでは新しいCEOはどういった形で選ばれるのか。

取締役会が新CEOを決定する過程で近年、考慮される要件は国際畑の経験者で、ファイナンスや製造分野よりマーケティングや営業分野での経験があること。複数の業界で経営に携わったエネルギッシュで若い人というものだ。

好例がキャンベルスープの現COOデニース・モリソン氏で、今年8月にCEOになる予定だ。彼女のキャリアは世界最大の一般消費財メーカー、プロクター&ギャンブルを皮切りに、ペプシコ、ネッスル、ナビスコ、クラフト・フーズと渡り歩いた後、キャンベルスープに移った。まだ50代の若さで、過去7年は同社の世界市場の営業と顧客管理の社長を務め、前述の要件を兼ね備えている、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

新しい波:ライフスタイル・ビジネス

「ライフスタイル・ビジネス」

また新しいビジネス・コンセプトがアメリカから上陸してきている。日本ではデビュー前と述べて差し支えない。というのも、いまだにアメリカでも「ライフスタイル・ビジネス」の定義が定まっていない段階だからだ。

言葉自体は平易であるが、大多数のアメリカ人でさえ真意は理解されていない。ビジネス界では数年前から使われてはいるが、今年1月、ニューヨーク・タイムズが「ライフスタイル・ビジネス」というコンセプトを新語として扱い、特集した段階である。

あえて言葉の定義をすると「利益至上主義に反旗を翻し、自分たちのライフスタイルに沿ったビジネス活動を実践すること」となる。それは生き方の追求であり、利益を優先せず、起業者のライフスタイルを維持するためのビジネスということだ。

たとえば脱サラでコンビニエンス・ストアのオーナーとして店舗を切り盛りすることを「ライフスタイル・ビジネス」とは呼ばない。主体的に趣味や生き方に根ざした業種を選択する一方で、利益追求型のビジネスモデルを追求しないのが特徴だ。それは組織に対するアンチテージでもある、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

ある中国企業のアメリカ進出

胡錦濤国家主席がホワイトハウスでオバマ大統領と会談した今月19日、アメリカ側は大手企業14社のCEOを招いていた。

マイクロソフトのバルマー氏、ゼネラル・エレクトリック(GE)のイメルト氏、ボーイングのマクナニー氏、ゴールドマンのブランクファイン氏といった財界の重鎮である。人権問題や為替問題、朝鮮半島の安全保障問題などで米中は依然として対立姿勢を崩さないが、「両国間のビジネスは大いに拡大していきましょう」という点で一致していた。

世界最大の中国市場への参入はアメリカの多国籍企業だけでなく、諸外国の企業にとっても右肩上がりで拡大している。2010年の対中直接投資額は09年比で17.4%増の1057億ドルに達している。逆の流れの中国による対外直接投資額も前年比で36.3%も伸び、590億ドルという巨費になっている。

各国企業が中国市場に血まなこになる姿は十分に理解できる。同時に中国が世界各国の資源や技術を求めてマネー外交を繰り広げている点も周知の事実だ。ただここにきて、中国企業によるアメリカ市場への「正当な進出」にも注目が集まっている。

                    
「正当な進出」とは、カネに任せて買いあさるのではなく、周到な準備から土地を買って工場を建て、近隣の雇用を拡大させてアメリカ経済へのプラス要因を生み出す進出だ、、、、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

オバマ経済学

オバマ大統領がホワイトハウスの住人になった2009年の秋、ワシントンで取材中、シンクタンクの研究者が言った。

「オバマ氏はカネ儲けを邪悪と考えているようだ。基本的に理念の人だし、市民活動家としてこれまで反ビジネスの立場にいた。その証拠に誰一人として財界人を閣僚に抜擢していない」

あれから2年。その話は研究者の話というレベルでは収まらなくなった。企業の営業活動はオバマ政権による規制により多少なりとも抑制された。大企業のCEOで構成されるビジネス・ラウンドテーブルは昨年、そうしたオバマ大統領への苦言と提案をリポートにまとめ、ホワイトハウスに提出した。そこには米財界のフラストレーションが綴られていた。

しかし中間選挙で民主党が大敗し、連邦下院の過半数を共和党に奪われたことで状況は一変した。オバマ大統領は共和党と妥協しなくてはワシントンの政治が前に進まない。手を組まなければ法案を通過させることはできない。

状況がよく把握できない人たちはこの「ねじれ」をワシントン政治のさらなる劣化と呼んだ。財政赤字と経常赤字の双子の赤字はすぐに解消せず、失業率も9%台で高止まりしている。経済成長率が鈍化する中で、オバマ政権は身動きができないと捉える。けれども状況は逆である、、、、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。