大地震が地球の裏側のビジネスを破壊する

一つの大事故が他国のビジネスの方向を大転換させる―。

「今後10年で1500億ドル(約12兆円)をかけて国民に十分に行き渡るエネルギーを確保していきます。その一つが原子力で、核エネルギーをより安全に利用するつもりです」

この言葉はオバマ大統領が2008年の大統領選挙でテレビCM用に使ったものだ。

大統領は石油に代わるエネルギーの一つとして、原子力を推進していく方針を明確にしていた。それが選挙公約の一つでもあった。

大統領就任一年後の10年1月、年頭の一般教書演説でも改めて原発の必要性を述べている。

「クリーンエネルギー関連の雇用をもっと増やす必要があります。生産性も効率も向上させてインセンティブも増やします。その一環として安全でクリーンな新世代の原子力発電所を建設していきます」

原発への前向きな考え方は、選挙前と後で変化はない。だが、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

グーグルの買収戦略

出る杭は打たれる―。

アメリカでもこの言葉は生きている。何を隠そうグーグルの「業界一人勝ち」に対して、ライバル企業や政治家からしきりに注文がついている。

無理もない。インターネットのサーチエンジン分野でグーグルはシェア66%を占めている。広告の市場シェアに至っては75%という数字で、ヤフーやマイクロソフトなどから反トラスト法に抵触していると疑われても致し方ない。

実はグーグルの反トラスト法への抵触問題は、10年近く前から取り沙汰されていて、新しい案件ではない。2002年、カンバ―ランド・エンタープライズ社とアドバータイジング社は、グーグルがサーチ分野で独占的な地位を利用し、中小のウェブ事業者を葬り去ろうとしていると糾弾したことがあった。

以後もグーグルが他社と提携する動きがあったり、市場シェアの数字が上向くたびに反トラスト法違反という指摘が繰り返されてきた、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

21世紀版:死の商人(2)―新しいビジネスモデル

オバマ大統領の武器バザールが開店―。

首都ワシントンの辛口批評家の間から、オバマ大統領の武器ビジネスを揶揄する言葉が漏れ伝わってくる。

前回(3 月1日)、アメリカはサウジアラビアに対して600億ドル(約5兆円)の武器売却を決めたことを記した。今後15年間に及ぶ取引だが、特定国に対する武器売却としては史上最高額だ。

サウジアラビアは地政学的に中東の要所であり、多くの国にとって最も重要な産油国であるが、武器を売るという点で、オバマ氏はまるで死の商人になったかのようにさえ見える。ただ武器を売る相手はもちろんサウジだけではない。

昨年11月、オバマ大統領はインドに出向き、大型輸送機C-17グローブマスターを10機、売却する最終章に立ち会った。総額41億ドル(約3400億円)の取引である。サウジとの600億ドルと比較すると桁が一つ違うが、対インドへの武器売却としては過去最大である。サウジだけでなく、こちらでも確実に増額の流れが見られる、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

21世紀版:死の商人(1)―新しいビジネスモデル

カネ儲けのために兵器を売る ― 死の商人。

今に始まったことではない。しかしこの言葉の持つイメージと対極に位置すると思われるオバマ大統領が、その担ぎ役であったならばどうだろうか。

市民活動からスタートした政治家、オバマ氏が武器商人というレッテルを貼られること自体、ゆゆしきことである。戦争という現実を最大限の努力で回避することこそ、これまでの大統領の政治姿勢であったはずだ。だがそれは理想論でしかない。

今回、ここで陰謀論を弄するつもりはない。オバマ氏が極秘に国外へ武器を売却し、利益を個人口座に振り込ませているわけではない。しかし、大々的に喧伝されていない中で、オバマ政権による他国への武器輸出増加の流れが強くなっているのは事実である。

それは不況時に誰もが考えつくビジネスモデルの一つである。他国に武器を売り、低迷したアメリカ経済を少しでも上向かせ、雇用を創出させる。それが兵器ビジネスであっても、である。死の商人というレッテルが本当に相応しいのであれば、オバマ氏の倫理感が崩れたということだ、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

ある男の勝利

今月22日、ラーム・エマニュエルという男が新しいシカゴ市長になった。

   

             

最初に彼と会ったのは1992年のことである。クリントンの大統領選挙で選挙資金を集めていた。ぎょろっとした目が印象的で、お世辞にも親しみやすい男ではなかった。

当時、クリントンの選挙事務所にはジェームズ・カービルやジョージ・ステファノプロスといった、後に名を馳せた参謀がいたが、エマニュエルがまさか今のような「大物」になるとは思わなかった。

クリントンが大統領になったあと、ホワイトハウスに入って補佐官を務めたが、国民皆保険では失敗したし、際立った有能さは感じられなかった。政権時代に何度か顔を会わせても相変わらずで、98年にホワイトハウスを去っ時には「これで終わり」だと思っていた。

ところが2003年に下院議員として政治家デビューする。そしてオバマが大統領になると主席補佐官の座につくのである。極めて上昇志向の強い男である。 

選挙参謀というのは候補を支えることに尽力する者と「いずれは俺も」と狙っているタイプに分かれるが、彼が後者であることに当時はまったく気づかなかった。そしてこれからはシカゴ市長である。

昨年10月、私は彼を取材するためシカゴに飛んだ。トム・ダートという男がエマニュエルのライバルとして名前が挙がっていた。ダートは選挙のプロ、ジョー・トリピという男を雇って出馬準備を進めていたが、結局選挙には出なかった。エマニュエルはオバマの支援もあって、得票率55%で圧勝する。

80年代から選挙の現場にいた男の究極的なテクニックは選挙資金をいかに集めるかにある。クリントンの時はそれが功を奏した。そして自身の市長選では約990万ドルを集金する。日本円でほぼ8億円である。市長選としては破格の集金額である。2位につけた候補のほぼ倍だ。

将来、この男が大統領選の候補として名前があがっても不思議ではない。私はその器ではないと思っているが、少なくとも集金力と場を読む力はある。これからしばらく注視しなくてはいけない政治家がまた増えた。(敬称略)