今度は選挙人の獲りあい

アメリカ大統領選の予備選にようやく終着がみえた。

インディアナ州の予備選で、共和党ドナルド・トランプが勝ったことで、ライバル候補テッド・クルーズが選挙戦から撤退した。

すでに当ブログで何度も「誰が勝つか」を記してきたとおり、11月8日の本選挙はドナルド・トランプ対ヒラリー・クリントンの戦いになる。

クルーズは4日(米時間3日)、敗北宣言をしたが「トランプ」という名前を1度も口にしなかった。通例、敗者は勝者への祝辞を述べるものだが「これからも自由のために戦う。憲法のために戦う」とは言ったが、トランプへの言及はなかった。ここにこの候補の度量の狭さが垣間見える。

ライバル候補を褒めることは感情的には辛いだろうが、敗北宣言で敗者が勝者を讃えることはアメリカの選挙の慣例であり、「いったいどうした」という思いである。

一方のトランプは「(クルーズには)すばらしい将来がある」と、クルーズは有望な政治家であると褒めた。さらにライバルとして「手強い、頭いのいい候補だった」と口にした。

予備選での戦いは事実上の決着がついたが、予備選は6月7日まで日程が組まれているので今後は形式的にこなされていく。野球で言えば消化試合である。

メディアの関心は今後、7月の党大会や秋に行われるトランプとヒラリーの討論会に移るが、私の関心はすでに11月8日の選挙人の獲りあいに行っている。

本選挙では「選挙人」という「代議員」とは違う名前の人たちが登場する。全米50州に人口比で割り当てられた人たち(たとえばカリフォルニア州は55人でモンタナ州は3人)で、全米に538人。だが21世紀のいまとなっては便宜的に選ばれる市民にすぎない。

選挙当日は州ごとに割り振られた選挙人を獲りあっていき、538人の過半数である270人を先に獲った候補が次の大統領になる。

リベラル州であるカリフォルニア州やニューヨーク州はほぼ間違いなくヒラリーが獲り、南部テキサス州やジョージア州などはほぼ確実にトランプが獲得する。

その中で、当ブログも含めてこれまで11月の勝者はヒラリーになる可能性が高いと述べてきた。だが春になって、アメリカの経済指標が民主党ヒラリーに不利に動いており、現段階ではわからなくなってきた。

大統領選の結果は失業率や1人あたりの実質GDP成長率、インフレ率といった経済指標、さらに選挙対策本部の組織力、資金力、支持率などさまざまな要因を探ることで見えてくる。特に1人あたりの実質GDP成長率が今年1〜3月には0.87という数字で、半年前の2.16から大きく下落している。

ヒラリーとトランプは確実に接戦になる。半年前は「ヒラリーが勝つ」と言っていたが、今はもしかすると「トランプ大統領」もあり得るに変わった。

9月以降、また変化があるかもしれない。

実現するトランプ対ヒラリーの戦い

昨年からアメリカ大統領選の原稿をずいぶん書いている。

今日の予備選結果によって、共和党ドナルド・トランプが代表候補に、民主党ではヒラリー・クリントンが代表候補なることがほぼ決まった。

多くの人はトランプが党代表になることはないと考えていた。考えていたというより、願っていた。今年になってからも、多くの人は「トランプはないでしょう」と言っていた。

私も昨年10月中旬までは、トランプはいずれ消えていく候補だと思っていた。

しかしアメリカで起きている現象を先入観なしで眺めた時、トランプ現象は本物であると悟った(トランプの胎動を考える)。昨年10月19日のことである。

そして11月にアメリカに取材に行った時、「トランプ人気は一過性のものではない」ことを理解した。その時から共和党はトランプが、そして民主党はヒラリー・クリントンが代表候補になると踏んでいた。

トランプが大統領になる可能性もあるが、2人の戦いであればヒラリーが1歩リードしている。それも昨年から変わらないことだ。

いまは7月の党大会が終わってから11月8日の本選挙まで、トランプがどういう攻勢をかけてヒラリーを蹴落としにかかるか、またヒラリーがどう迎え撃つのかが注目される。

これほど熾烈な戦いは滅多にない。歴史に残るであろう決戦となる。

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ひさしぶりに見たヒラリーは終始、険しい表情だった。

ニューヨーク州予備選前日の18日午後、マンハッタン6番街にあるヒルトンホテルの3階で、支持者を前にヒラリーは怒りを表した。

怒りはライバル候補バーニー・サンダースからの攻撃に対してであり、トランプの不当な言い分に対してである。サンダースはヒラリーを「Whore(尻軽女)」と言い放ったし、トランプは「ウソつきヒラリー」と呼んだ。

大統領選もずいぶんと下品になったものである。11月8日の本選挙まで半年以上もあるが、今後はどれほど熾烈な戦いになるのだろうか。(敬称略)

トランプ大統領誕生?!

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やってくれるものである。

米東部マサチューセッツ州最大の日刊紙「ボストン・グローブ」は4月10日、ドナルド・トランプが大統領になったと仮定したパロディ新聞を発行した。

一面トップのタイトルは「強制送還はじまる」。日付は2017年4月9日(日)。ほぼ1年後、大統領になったトランプが選挙公約どおり不法移民の強制送還をはじめたという内容だ。

日本でこれだけのことをする新聞社があるだろうか。社内だけで楽しむレベルではない。大々的に公表してしまうところが何ともアメリカらしい。

ボストン・グローブの編集者には「トランプを勝たせないために」との意図があったのだろうが、逆効果になっているとも思える。

可視的な将来像を有権者にあたえることで、「トランプならば本当にやるかもしれない」と思わせるからだ。移民局と税関の職員数を3倍にしたという記述もある。

さらに、米国が中国とメキシコと貿易戦争を始めたことで、株式市場は急落するという架空の世界も描かれている。トランプが本当に当選した場合は冗談ではすまなくなる。

トランプ圧勝は確実、しかし本選はヒラリーの理由

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Photo courtesy of Motherjones

いまだに米大統領候補ドナルド・トランプの化けの皮が剥がれない。それどころか皮の厚さが増して、本物の皮膚に変化しつつあるほどだ。

国内外でトランプが大統領になった場合の憂慮が真剣に語られ始めている。本当にトランプは大統領になるチャンスがあるのだろうか。

筆者は昨年末から、活字・放送メディアを通して共和党ではトランプが代表候補になると述べてきた。大統領ではなく、あくまで共和党代表という立場である(トランプ圧勝は確実、しかし本選はヒラリーの理由)。