トランプは自滅か

アメリカ大統領選をずっと追っているが、8月になって少し拍子抜けしている。

というのも、7月の党大会以後、トランプの劣勢がはっきりしているからだ。私はかなり早い段階からヒラリー有利とさまざまなメディアで述べてきた。ここにきて、トランプの勝てるチャンスは以前よりもさらに少なくなっているように見える。(どういう角度から予測してもヒラリー勝利)。

今朝の米ニュースでは、トランプはヒラリーのことを「bigot(頑固者)」と言って攻撃したが、何の足しにもならない。両者ともに1年以上も選挙戦を行っており、抽象的な言葉による攻撃ではもう誰も耳をかさない。

ヒラリーのメール問題はいまだに尾を引いているが、決定的なダメージにはいたっていないし、今後もならないだろう。ヒラリーへの攻撃はすでに出尽くした感がある。

だがトランプの汚点は少しずつ、新しいことが表面にでてきている。本選挙を2カ月半後に控えて選挙対策本部の人事異動をしたり、不法移民に対する言動が二転三転したり、負債総額が書類上の2倍にあたる約650億円だったりと、マイナス要因が多すぎる。

11月8日の本選挙は総得票数ではなく州ごとの戦いになる。州ごとに集計するということだ。現段階からどう計算してもヒラリーが負けないという答えが出てしまっている。

ここまで断言する人はあまりいないが、全米の州ごとの取り分け図は2008年のオバマ対マケインの戦いに極めて近い。州に割り当てられた選挙人というものを積み重ねていくのだが、総数が538。過半数の270を奪った候補が勝ちとなる。

08年選挙ではオバマが365、マケインは173でオバマの圧勝だった。今年もほぼ同じ州を奪ってヒラリーが勝つ可能性が高い。

9月からトランプとヒラリーによる討論会が3回予定されており、よく「討論会次第だ」という方がいる。だが過去30年も見てきて言えるのは、討論会後の支持率に大きな変化は生まれないということだ。

いまの段階までくると、有権者の9割以上はすでにどちらに票を入れるか決めている。討論会は単に確認の意味で観るだけに過ぎない。たぶん今日投票を行っても、2カ月半後に投票を行っても数字に大きな変化はない。

それがアメリカ大統領選の特徴でもある。

hillary8.26.16

Photo by Pinterest (若かりし頃のヒラリー)

 

悪太郎に戻ったトランプ

共和党全国大会で党をまとめたはずだったドナルド・トランプだが、モラルの低い言動で再び党内がざわついている。「トランプで共和党は大丈夫なのか」といった空気なのだ。

「決して大丈夫ではないですよ」と言ってやりたい。

イラク戦争で息子をなくしたイスラム教徒のカーンさんという人が、民主党全国大会でトランプに対し「あなたは何も犠牲にしたことがない」と批判した。するとトランプは無慈悲な対応をし、その言動に非難が集中した。

さらに自身の政治集会で乳児が泣いていたところ、「私は赤ちゃん、好きですから」と一時は問題視しなかったが、すぐに「会場の外にだして」と態度を変えた。

また、トランプ支持を打ち出している下院議長のポール・ライアンや上院議員ジョン・マケインを冷たくあしらった。両議員は今年11月が再選で、トランプは返礼として両者への支持表明をすべきところだが、支持しない意向である。

私は連載原稿の中でもテレビやラジオでも「ヒラリー有利」と言い続けており、トランプがトランプでいる限り、ヒラリーを勝たせる結果へと進んでいるように思える。

共和党内の一部からは本選挙を前に、「トランプを他の候補に差し換えられないか」といった声さえ出ている。

11月8日は州の取り合い形式の選挙で、スイングステート(激戦州)のバージニアやオハイオ、フロリダは現在ヒラリーが獲得しそうな勢いだ。ノースカロライナもヒラリーが獲る可能性さえある。そうなるとヒラリーの圧勝が見えてくる。

トランプ人気が急加速、悪役クルーズ登場が契機に

米大統領選は大手メディアに煽られているーー。

オハイオ州クリーブランドで開かれていた共和党全国大会を取材し終えて抱いた思いである。いきない著者の思いから入って恐縮だが、現地で見聞きしたこととメディアで報道されている内容の違いが目にとまったので報告したい。

党大会前、ドナルド・トランプ候補(以下トランプ)の支持率は不支持率よりもかるかに低く、党内がまとまらずに分裂する危険性もあるとの見方があった。

なにしろトランプは共和党の重鎮から嫌われていた(トランプ人気が急加速、悪役クルーズ登場が契機に)。

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党大会の会場外でプラカードを掲げる反トランプ派

トランプ党の誕生?

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(私が座っていた場所からの1枚。外国人記者は上の方・・・)

ドナルド・トランプはマキャベリストなのかー。

米オハイオ州の党大会で正式に共和党の代表候補になったトランプ。同党が18日に公表した党綱領(マニュフェスト)を読み込むと、トランプという人物が「目的を達成するためには手段を選ばない」マキャベリストではないかとの思いを抱く。

どういうことなのか。

全58頁の綱領を精読すると、トランプが選挙戦で繰り返しのべてきた公約がほとんど詳述されていないのだ(トランプが現実路線に 党綱領には受けの良い斬新政策なし)。