首相のチャンスを逃した橋下

大阪市長橋下の風俗業発言で、彼の野望であろうはずの内閣総理大臣の座は遠のいた。

これまでも本音トークを連発して、政治家としての危うさを感じてはいたが、「(第二次大戦中の)慰安婦制度は必要なのは誰だってわかっている」(13日)という発言で、首相になるチャンスは潰えただろう。地方自治体であっても政治家である。こうした意識の持ち主を行政の長にしておいてはいけない。

13日の発言後、自身のツイッターで 弁明をくりかえしたが、汚点はすでに点から穴ほどの大きさに広がった。アメリカ政府が文句を言ってきたからという問題ではない。

少なくとも弁護士資格をもち、大阪市長という役職にある人間がこの程度の意識にいるという事実に愕然とさせられる。慰安婦問題の総体にも通じるが、軍隊という国家組織が公に売春行為を推奨することに問題の核心がある。

社会の中には、いつの世でもカビの生えたみかんは存在する。強姦事件は世界中であとをたたない。それは法の下で裁けばいい話である。

政府が売春行為をシステムとして先導することの異常さを見出せなければ、この人物に市民をリードしていく資質はない。いや、政治家であってはいけない。

売春は世界でももっとも古い職業などと言われるが、歴史が前へ進むという意味は、政治活動としてこうした制度を改めていくことにある。

たぶん人間の尊厳というのは、そうした地道な行為の連続によって手中にできるのである。

この点で橋下は日本人だけでなく、世界中の市民から政治家として不適格であると認められてしまった。

私の中ではもう終わった政治家という領域にはいるかと思う。(敬称略)