カテゴリー:アメリカ社会 2010/2/27 土曜日

政治ショーにかり出された豊田

トヨタ自動車社長がワシントンの連邦議会の公聴会に現れた。CNNの映像を観ながら「相変わらずだな」と思っていた。

何が「相変わらず」なのか。

公聴会そのもののあり方である。社長の豊田が証言するということで報道関係者の数はすさまじかった。議員たちの出席率も高かった。それが活気のない普段の下院公聴会と違うところだったが、議員たちの立ち振る舞いと公聴会の流れは相変わらずだった。

1983年末に初めて議会を訪れてから1年弱、私は日本の新聞社のインターンとして毎日連邦議会に通った。90年にジャーナリストとして独立後は記者証をとり、2007年春に帰国するまで議会はつねに取材の場だった。

公聴会というのは大きく4つに分かれている。立法、調査、承認、監視で、そのほかにフィールド公聴会という連邦議会以外の場所で開かれるものがある。

立法公聴会はもっとも公聴会らしいもので、法案を作成する過程で参考人から話を聴く場だ。調査公聴会は、ウォーターゲート事件などを徹底解明するような会である。承認公聴会は大統領がくだした人事を承認するのが目的だ。オバマがヒラリー・クリントンを国務長官に指名し、それを公聴会で承認する時に招集される。

最後が監視公聴会で、豊田が証言した下院の監視・政府改革委員会(House Oversight and Government Reform Committee)などは、諸事の案件の現状を公に聴くことが目的だ。

普段の公聴会では、議員たちは質問するときにだけ姿を見せて2つ、3つ、質問してすぐに退席する。だから、檀上に委員長と質問する議員の二人だけということも珍しくない。しかも入退室は自由なため、議員もスタッフも出入りが激しい。質問もスタッフが考えて、それを読むことが多い。

議員の豊田への質問は、豊田の稚拙な受け答えもあって、過激さが増した。あの過激な議員の態度こそが私にしてみると「相変わらず」なのである。

今年11月は中間選挙である。下院議員は全員改選。彼らの言動は選挙を前にした地元有権者へのパフォーマンスとして考えておく必要がある。

CNNが監視・政府改革委員会の公聴会を生中継することなど数年に1度もない。議員として、これ以上のチャンスはない。それはまさしく政治ショーであり、そこに豊田が乗り込み、火にあぶられたとみた方がいい。

オハイオ州選出のデニス・クシニッチなどは、アメリカのビッグ3の労働者を擁護する立場にあるため、豊田への激しい糾弾がめだった。こうした状況を日本の大手メディアは説明しなくてはいけない。「政治ショー」なのだと。(敬称略) 

         

カテゴリー:Thought for the day, 国際事情 2010/2/23 火曜日

バンクーバーの陰

連日、バンクーバーからオリンピックの話題が届けられているが、テレビや新聞を眺める限り、日本人選手の参加している競技にしか光があたっていない。

NHKのBSを観ればカナダとアメリカのアイスホッケーの試合も観戦できるが、「かなり好き」というレベルでないと、そこまで手が回らない。オリンピックというのは自国の選手を応援する国別対抗戦だから無理もない。

だが、主要メディアによって選ばれた映像だけでなく、情報も伝わらないので、「一部だけしか見せないよ」と言われている気がする。それによって、陰の部分が見えなくなっている。

たとえば、カーリングはチーム青森が奮闘していることから、女子の競技だと思っている人がいるが、もちろん男子もある。日本の男子チームが出ていないだけである。

逆にアイスホッケーは男子だけだと思われているが、女子アイスホッケーも1988年からオリンピック種目になっている。テレビも新聞もほとんど報じないので、知らないだけである。

その中で、いまだに男子だけの競技がある。スキーのジャンプである。男子だけでもいいと思われるかもしれないが、実は女子のジャンパーも大勢いる。

しかも女子ジャンプをオリンピック競技に入れるための訴訟まで起きている。私は当然、女子ジャンプもあっていいと思う。危険という理由はまったく当たらない。男子でも危険であり、女子でもすでに飛んでいる選手がいるので否定する理由がない。

バンクーバーから競技種目に入れる動きがあったが、国際五輪委員会(IOC)は拒否しつづけてきた。けれども2014年のソチから加わる可能性がある。

すでに欧米にはメダルを狙う女子ジャンパーがいるので、日本のキッズも今から鍛練してどんどん空を舞うといい。

       

カテゴリー:中南米 2010/2/19 金曜日

清冽!

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滝をみたくなったので、昨年撮った写真を貼りつけます。

南米イグアスの滝。 

カテゴリー:Thought for the day 2010/2/15 月曜日

もう一人の上村愛子

上村愛子にはなんとしてもメダルを獲ってほしかった。

しかし、現実は厳しい。4年前のトリノで悔しい思いをし、その後、メダルをめざして筋力トレーニングを積み、過酷な練習をこなしてきたがメダルには届かなかった。

実は上村と同じような思いを抱いていた選手が他にもいた。4年前、上村と同じようにトリノで惨敗し、試合後に大泣きしたハナ・カーニー(アメリカ)である。

              

トリノでは勝つつもりだった。しかしメダルも獲れず、数カ月は敗戦のショックからふさいだ。ようやく練習を再開した頃、今度はヒザを負傷し、ほぼ1年間は満足に滑ってもいない。トリノのショックは予想以上に大きく、トラウマは数年におよんでいた。

けれども上村同様、アスリートは練習をすることで自信という階段を一歩一歩登っていくしかない。カーニーはコーチのメニューを着実にこなしていく。昨夏、プールに着水するジャンプを1000回ほどこなした。スキー場でのジャンプは計1万4000回を超えたという。上村も同じように練習したはずだ。 

カーニーは昨シーズン、ワールドカップで総合優勝をはたすが、今シーズンはスランプに陥っていた。1月のユタ州での大会では勝てずに、やはり大泣き。

しかし14日(日本時間)の本番で、カーニーはディフェンディング・チャンピョンのジェニファー・ハイル(カナダ)を破って金メダルを獲る。

何がカーニーと上村を分けたのかは、私にはわからない。実際に二人を取材していない。取材したとしても、その差は目に見えるものではないだろう。

15日朝、民放の解説者は「カーニーは本能で滑ったような気がします」と言ったが、何万回もの練習のあとの滑りであり、本能で勝てる競技でないことがわからないのだろうか。

二人には同じ努力賞を授けたいが、いまの上村はそんなものを喜ばないだろう。

カテゴリー:経済 2010/2/7 日曜日

トヨタもできていなかった危機管理

先週の国内ニュースは小沢一郎の不起訴と朝青龍の引退にもっていかれた感がある。

どちらもがっかりさせられるニュースだったが、もう一つ、財界で大きなニュースがあった。トヨタのリコール問題である。

アクセルペダルに関連した大規模なリコールで会社側の対応がおくれ、日米で批判が噴出している。アメリカ政府はそれを利用しているようにもみえる。

問題が起きることは致し方ない。人のいとなみに完璧はない。人間が完璧でない以上、理念的に完璧なものを創ることはできない。重要なのは問題が起きたときにどう対処するかである。

簡単なことではないが、切り返しがうまければベクトルをマイナスからプラスへ転じられる。しかし、先週のトヨタの対応はマイナスをさらに深まてしまった。

金曜昼、外国特派員協会の仲間とランチを食べながら、トヨタのリコール問題を話し合った。前日に行われたトヨタの記者会見での対応の悪さが皆の口から噴出した。私は出席していなかったので、彼らの思いを記したい。

        
            

フィナンシャル・タイムズ紙のマーティン・コーリン記者は満足な情報が得られなかったという。

「問題の責任者が誰なのかはっきりしていない。記者会見を開きながら、事実を満足に伝えることさえしない。問題を調査中なら、判明した事実を適時インターネットで公開すればいい。こんな簡単なことさえできていない」

ドイツのフランクフルター・アルゲマイネの特派員も批判する。

「記者会見では基本的な事実を記したプレスリリースさえ配らなかった。ブレーキ問題でアメリカでは何件くらいのクレームがきているのか。日本ではどうなのかといったこともわからずじまい。準備ができていないのなら会見は開かないほうがいい」

スイス放送協会の記者もいう。

「世界のトヨタも危機管理ができていなかったことが判明してしまった。情けない」

ただ、三人ともプリウスの性能のよさは認めている。別にトヨタが奈落の底に落ちたわけではない。かんじんなのは、問題が起きた時の対処法である。(敬称略)

(連載記事:堀田 佳男 - プレジデントロイター

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