トランプ選対から送られてきたメール

今朝(4月13日)、パソコンのスイッチを入れると、トランプ前大統領の選挙対策委員会からメールが入っていた。

MEMO FROM PRESIDENT DONALD J. TRUMP!

I’ve been endorsed by the strongest AMERICA FIRST PATRIOTS in Congress.
I’ve been endorsed by 38 Senators from across this beautiful country.But I’m still missing the most important endorsement of all…

YOURS!ENDORSE PRESIDENT TRUMP

 Your patriotic support means THE WORLD TO ME.With you by my side, WE WILL TAKE BACK our Country on November 5th! 』

『ドナルド・J・トランプ大統領からのメモ!

私は議会で最も強力な政治団体であるAMERICA FIRST PATRIOTSに支持されています。そしてこの美しい国の上院議員のうち、38人に支持されています。

しかし、私はまだ最も重要な人たちからの支援を受けていない、、、

それはあなたです。どうぞトランプ氏を支持してください。
皆さんの愛国的な支持は、私にとって大きな意味を持ちます。11月5日には、皆さんと共にこの国を取り戻しましょう!』

私はトランプ氏の支持者ではないが、時々こうしたメールが送付されてくる。同氏からはどうしても大統領に返り咲きたいとの思いが伝わってくる。

トランプ:元側近たちの本音

ドナルド・トランプ前大統領(以下トランプ)は大統領選で共和党の代表候補になることがすでに決まっているが、米メディアにはかつての側近から反トランプの意見が数多く出されている。

共和党内での支持率は依然として82%(Morning consult調べ)という高い数字を維持しているが、トランプの「本当の顔」を知っている人たちからは厳しい声が聴こえてきている。

トランプ政権時代に副大統領を務めたマイク・ペンス氏はフォックス・ニュースとのインタビューで、「トランプを支持しない」と発言。4年間、従順な副大統領だった同氏は、トランプはいまは違う人になってしまったという。

「(前政権で)私たちが追求してきて保守的な案件とは相反するものを彼は求めている。それが明確になってきた」

またトランプ政権時代の国防長官を務めたマーク・エスパー氏も「トランプに投票することはあり得ない」と反旗を翻す。自分自身を何よりも優先するトランプは大統領にふさわしくないと言い切る。

ケーブルTVのMSNBC に出演した時、「選挙で選ばれる人はいくつかの基本的基準を満たさないといけない。それは自分よりも国家を優先させられるかということ。さらに党派を超えて国をまとめ上げられなくてはいけない」と述べ、トランプはその要件を満たしていないとした。

さらに、トランプ政権の司法長官だったウィリアム・バー氏は今年2月、米メディアに「トランプに投票するということはロシアンルーレットで遊ぶことと同じ」と発言し、トランプ指名に強く反対した。

トランプが横暴で、人の話を聴かず、独善的な判断をくだすという話は今にはじまったことではない。トランプを個人的に知っている人たちの声は米有権者にどこまで届いているのだろうか。

米大統領選:鍵をにぎるダブルヘイター

いま米国で「ダブルヘイター」という言葉が使われ始めている。バイデン大統領(81)とトランプ候補(77)の両方をヘイト(嫌う)する有権者という意味で、両候補ともに嫌いであるという市民が増えているのだ。

ABCニュースの世論調査によると、バイデン氏に好感を抱いている市民は全体の33%であるのに対し、好ましくないと答えた人は54%に達していた。同様に、トランプ氏に好感を抱いている人は29%で、好ましくないと思っている人は59%。

この数字を見ただけで、「両おじいちゃん」が今あまり好かれていないことは歴然としている。今年11月の本選挙では2人のどちらかを選ばなくてはいけないのだが、できれば両方ともパスしたいという有権者が増えているというのがいまの社会状況なのである。

ダブルヘイターの多くはバイデン・トランプ両氏の年齢を気にしていると同時に、バイデン氏の弱々しい指導力とトランプ氏の横暴で独善的な人柄にも憂慮をいだいている。

USAトゥデイ紙の取材を受けたミネアポリス市に住む35歳の男性は、バイデン氏があと4年間大統領が務まるとは思えないと語ると同時に、トランプ氏については「本音を言うとあいつはクズだね」と毛嫌いしており、両者に対してダメ出しをする。

そうなると、無所属から出馬している「第3の候補」であるロバート・ケネディ・ジュニア氏(70)が選挙の趨勢を左右する可能性があり、今年の大統領選はこれまでにない番狂せがあるかもしれない。

トランプ:なぜ未だに支持されるのか

米保守派のドナルド・トランプ前大統領(以下トランプ)への思いがどうしても理解できない。

トランプは現在、ニューヨーク州地裁から金融詐欺を働いたとして4億5400万ドル(約681億円 )の支払いを命じられているが、資金繰りが厳しく、すぐに支払うことができない。そのため大手保険会社にかけあったが了承を得られず、選挙戦の真っ最中にあって金銭問題で巨大な壁にぶつかっている。

それだけではない。トランプは今年に入ってから2件の民事訴訟で負けており、計5億4000万ドル(約810億円)を超える制裁金をもとめられてもいる。さらに4件の刑事訴追も抱えており、針のむしろの上にいながら火であぶられているような状況である。

その中で大統領選を戦っているのだが、いまだに共和党内では高い支持率を維持しており、予備選では断トツの強さを誇っている。党内で2番目に支持を集めていたニッキー・ヘイリー元国連大使が今月7日に選挙戦から撤退を表明したことで、共和党=トランプという図式ができあがった。

日本であれば、これだけ訴訟にまみれた政治家が国のトップになろうとすること自体に眉をひそめる人が大勢いるだろうかと思う。だが、党内ではそんなトランプへの支持は強く、ヘイリー氏が撤退したあとは支持率がむしろ上昇したほどだ。いくら訴訟慣れしている米国であっても、保守派のトランプへの不抜の精神と呼べる心持ちはなかなか理解できない。

バイデン対トランプの最新の世論調査をみると、 エコノミスト誌 はバイデン(44%)対トランプ(43%)、ロイターはバイデン(31%)対トランプ(32%)で両者ほぼ互角である。

米国はいったいどこへ行こうとしているのか。

スーパーチューズデー(3):トランプ好きの精神構造

トランプ氏がスーパーチューズデーで圧勝したことにより、11月の本選挙は「バイデン対トランプ」という流れができた。米国では約半数の有権者がトランプ氏を推しているかに思えるが、米独立調査機関「ピュー・リサーチセンター」の調査によると、63%の米国人はトランプ氏を「好ましくない」と答えていることがわかった。

63%もの反トランプ派がいながら、なぜ予備選ではトランプ氏に票が集まり、共和党の代表候補になろうとしているのか。そこにはなかなか表には出てこない人間の心理が作用しているかにみえる。

かつてドイツにエーリヒ・フロムという社会心理学者がいた。同氏が書いた『 自由からの逃走 』という本を読むと、人間は何故ヒトラーのような独裁者であり殺人者を支持するようになったかが解き明かされている。トランプ氏はヒトラーではないが、ある意味で横暴で独善的な行動をとりがちな政治家という点では共通項があり、いつの時代でもこうしたリーダーは一定層の市民から支持を得ることができるという。

人はおうおうにして特定の人に従属し、破壊行為に加担したり、独裁的な政治体制に身を置くことがある。組織を破壊にまで追いやるリーダーの愚行に熱狂的なまでにつき従う追随者が存在しもする。時に人は追随することの心地よさを知ると、リーダーが多少非倫理的なことをしても許容し、つき従うというのだ。

同時に、多くの人は生きている間中、従う相手を求めている。つき従うことの心地よさを覚えると、絶えず導いてくれる人を求めるものだという。そうした点では、良い悪いは別にすると、トランプ氏は強いリーダーといえるのかもしれない。 『 自由からの逃走 』 を読みながら、そんなことを考えた。