トランプの楽観

いまから13時間ほど前(日本時間4日午後10時頃)、トランプはツイッターで、同日午前に北朝鮮から発射された飛翔体(たぶんミサイル)についてのコメントを出した。驚くほど前向きで肯定的な内容だったので、こちらが驚かされた。

これまでアメリカ政府は北朝鮮がミサイル発射や核実験をするたびに非難してきたが、今回は「いまの世の中いろんなことが起きますから」とトランプは述べたのだ。ミサイル発射を「いろんなことが起きますから」で片付けたところにトランプの金正恩に対する期待の高さがあるし、金正恩が2人の約束を破るわけがないだろうといった楽観をみる。

北朝鮮が今後大きな経済発展を遂げるために、金正恩は米国とこれまで協議してきた内容を「中断または中止する」わけがないとの態度である。4日午前に発射した飛翔体は何かの間違いであってくれといわんばかりの対応だ。

ミサイルが発射された時間からツイートまでの時間が長かったことから、トランプは安全保障担当補佐官たちと協議をしたあと、北朝鮮を刺激しない方針に落ち着いたとも思える。いかにトランプがいま米朝関係を大事にしてきるかのサインでもあるが、こうした懐柔策が通用するかどうかはわからない。

ひとり飲み

長年の友人であり仕事仲間でもあるカメラマンのO氏と、上野の焼き鳥屋を数軒はしごした。

O氏とは20年くらいの付き合いである。彼はニューヨークで、私はワシントンで長年仕事をしたあと、互いに日本に戻ってきた。最初の仕事は雑誌「アエラ」で一緒にフロリダに行った時だったと記憶している。

最初に入った焼き鳥屋では、並んでカウンターに座った。我々の左横に4席分のスペースが空いていて、順次おひとり様の男性がやってきてグラスを傾けている。生ビールの人もいれば、ホッピーセット、焼酎のお湯割りを注文する人もいる。

それぞれが自分たちのペースで好きなものを食べ、飲み、そして1時間か1時間半くらいで帰ってゆく。私はカウンターの右端に座っていた。少しカーブのついたカウンターだったので、全員の顔が見渡せる。

ひとり飲みの彼らはほぼ間違いなく常連で、メニューを見ることなく食べ物を注文した。しかも全員が酒に強いように見えた。顔を赤らめずに2杯以上飲んでいる。こうした飲み屋ではかなり「普通」の光景である。

彼らは自分の世界を持っているし、それを誰からも邪魔されたくないとの思いがあるので、互いに話しかけることもない。店員とも話をしない。

ただこの光景をアメリカ人が見たら、「なぜ彼らは隣の人と話をしないのか」との疑問を抱くだろう。一人で寂しくないのかと訊くに違いない。しかもそれぞれのスペースはそれほど広くはなく、小声でも隣の客と話ができる距離なのだ。にもかかわらず全員が黙々と焼き鳥を口にいれ、酒を飲んでいる。そして静かに帰っていく。

まるで「自分はそこにはいませんでした」と断言できるほど存在感をなくしているかのごとくなのである。

私もたまにひとり飲みをするので、彼らの気持ちはよくわかる。けれども私はおしゃべりなので、すぐにマスターや店員さんと話をしてしまう。ひとり飲みの人が横にいたら話しかけてしまうこともある。

狭いスペースでひとり飲みの彼らが次から次へとやってきて、自分の空間と時間を大切にする彼らの姿をみて反省するのである。

「これからはひとり飲みの人にむやみに話しかけるのはよそう」と。