ロシア疑惑(19):報告書公開

マラー報告書のほとんどが18日に公開された。3月25日に「トランプはシロ」であるとの結論が出されていたので、400頁超の全文が公開されても事態が180度変わることはない。

トランプは勝ち誇ったようにはしゃいで、すぐにツイッターで「ゲームオーバー」と発信して、ロシア政府との共謀と司法妨害はなかったといい放った。

trump4.19.19

Photo from Twitter

ただ司法妨害を含めて14件の違法行為がいまだに疑われており、今後下院司法委員会が追求していくと思われる。それでもロシア疑惑の中心だった「トランプはロシア政府と共謀したか」という疑惑は全文が公開されても「シロ」のままである。

今後しばらく、マラー報告書についての追加報道はあるだろうが、トランプを政権から引きずり下ろすまでにはいたらないだろう。

それでも昨日公開された報告書の中に、トランプの悪事を裏付けるような描写があった。2017年5月、モラー氏が特別検察官に任命された直後のトンラプの言葉だ。

「なんてこった。最悪だな。これで俺の大統領職も終わったな」

憎まれっ子世にはばかる、だけで終わりにしてはいけない。

独裁者トランプ:大統領は代理がお好き

「(政府高官の)代理はいいね。(自分が)すぐに決断を下せるから。物事を柔軟に対応できる」

トランプ政権が誕生して約2年3か月。閣僚を含めた政府高官の多くが職を辞した。

トランプに直接解雇された人たちも少なくない。首都ワシントンにある大手シンクタンク、ブルッキングズ研究所がまとめた数字によると、政権発足以来の離職率は66%に達する。

要職が空席になればすぐに次の要人が指名されるはずだが、トランプ政権内ではいま代理が幅を利かせている。 代理はもちろん正規の長官や高官が決まるまでの「一時しのぎ」だが、トランプにとっては好都合なのだ(続きは・・・独裁者トランプ:大統領は代理がお好き)。

篠山紀信の精髄

今朝(12日)の朝日新聞朝刊の文化・文芸面に、篠山紀信のインタビュー記事がでていた。

普段、このページは読まないが、今朝は週刊朝日の表紙写真「女子大生シリーズ」を撮り続けた経緯が書かれていたので、一気に読んだ。最後の方に、篠山がどういう心持ちで普段写真を撮っているかが書かれていて、たいへん納得させられた。

「女優さんでも学生さんでも、誰だって撮るのは難しいんですよ。(中略)モデルさんへのリスペクトは当然でしょう。対象の魅力を引き出して、みなさんにお伝えするという気持ちが必要なんじゃないですか。富士山を撮るときだって、僕は『よっ、日本一』と声を掛けてから撮る。そうするといい顔をする」

どの分野でも同じだろう。仕事をする時に愛情を注げばいい結果がついてくる、ことが多い。業種によってはなかなか「愛情」というものを表せないかもしれない。でも肝心なのは「どれだけ心を込められるか」ということである。

78歳まで第一線で活躍してこられた篠山紀信の精髄をみた思いがした。(敬称略)

shinoyama4.12.19

Photo from Youtube

2020年米大統領選(10):もう一人の候補

このブログではここまで、2020年米大統領選の主要候補(民主党)を9人ご紹介してきた。9人というのは、私がこれまでの経験から来年の本選挙まで残ると思われる候補たちである。だから独自判断による人選だ。

4月7日の当ブログで書いたとおり、正式に出馬を申請した候補はもっと多く、4月8日現在、670人にのぼる。そのほとんどは「青春の1ページ」的に申請した人であり、ご本人も勝てるとは思っていないだろう。

今後出馬してくる候補で注目されているのは前副大統領ジョー・バイデンくらいである。ただすでに出馬宣言をした中で私が見落としていて、主要候補に入れるべき人がいる。1月23日に出馬公表したピート・ブダジェッジ(37:日本語版のウィキペディアではピート・バティジーグと表記されている)。

Pete Buttigiegというスペルなので、ウィキペディアを書かれた方が無理やり読んでバティジーグと書いたのだろうが、アメリカではブダジェッジと発音されている。

buttigieg4.11.19

Photo from Facebook

インディアナ州サウスベンド市の市長で、若干37歳。なぜ主要候補の中に入れたかといえば、すでに何度も行われている世論調査で5位前後に入ってきているからだ。

まだ日本ではほとんど知名度がないし、今後彼がバイデンやサンダーズを抜き去って民主党候補のトップに躍り出る可能性は低いが、主要候補の中にいれておくべきであると考えた。

彼はゲイであることを初めて公言した大統領候補であり、主要候補の中では唯一軍隊経験があり(2014年にアフガニスタンに派兵)、かつハーバード大学とオックスフォード大学で学位を取得した知性派ということで、特定層で支持が強い。

語り口も理知的で爽やかで、多くの点でトランプとは真逆の人物といえるかもしれない。(敬称略)

出馬した日時順:

フリアン・カストロ(44:前テキサス州サンアントニオ市長)1月12日表明

カースティン・ジリブランド(52:ニューヨーク州上院議員)1月15日表明

カマラ・ハリス(54:カリフォルニア州上院議員)1月21日表明

ピート・ブダジェッジ(37:インディアナ州サウスベンド市長)1月23日表明

・コーリー・ブッカー(49:ニュージャージー州上院議員)2月1日表明

エリザベス・ウォーレン(69:マサチューセッツ州上院議員)2月9日表明

エイミー・クロブチャー(58:ミネソタ州上院議員)2月10日表明

バーニー・サンダーズ(77:バーモント州上院議員)2月19日表明

ジェイ・インズリー(68:ワシントン州知事)3月2日表明

ベト・オルーク(46:前テキサス州下院議員)3月14日表明

30年前のあの頃

昭和から平成になってまもない頃、私は会社を辞めようかどうか迷っていた。まだアメリカで会社員をしていた頃である。

1989年の日記を読み返すと、日々の鬱積した不満がつづられている。上司や同僚に対する憤懣はほとんどなかったが、仕事そのものには満足していなかった。

アメリカには留学のために行き、当時からモノを書く仕事をしようと思っていた。小説家になりたいと思っていた時期もある。大学院卒業後、2つの会社に勤めたが、両社ともに「この会社こそが私の望む場所」という思いにはいたらなかった。

最初の米企業で永住権をとり、2番目の編集関係の会社は待遇的に不満はなかったが、仕事内容と会社という組織で拘束されることにだんだんと耐えられなくなっていた。毎日会社に行くことが辛かった。

はっきり言えば、留学までして「好きな仕事でメシを食っていない」という自分に腹がたっていたのだと思う。だが、実際に辞めるまでにはそれから1年近くの歳月が必要になる。

辞める前の準備として、日本の雑誌に原稿を書き始めていた。これは友人の紹介もある。また会社に内緒で日本人向けのワシントン観光ガイドブックの編集長もしていた。これは会社にバレて、あとで社長から注意されたが、それでクビにはならなかった。S社長にはいまでも感謝している。

dccherry4.8.19

結局、「辞めさせてください」と切り出したのは1990年春だった。だがフリーランスのジャーナリストとして独立しても、勝算は五分五分といったところだった。その頃の日記には「本当に食っていけるのだろうか」という憂慮がよく書かれている。

あれから29年がたった。最初は「ジャーナリストです」と名乗ることも恥ずかしいくらいだったが、その5年後には誰の経済援助も受けずにマンションを買うまでになった。

こう書くと自慢話になってしまうが、35年ローン(アメリカでは30年ではなく35年が一般的)を、しかもフリーの立場で組むのはなかなか大変なことだった。実は独立後3年たった時にマンションを買うつもりで不動産屋に行ったのだが、フリーの人間は2年分の確定申告を提出しないとローンが組めなかった。

それはその前の2年間、安定した収入があって、月々のローンを支払っても生活できるかどうかを見定められるということだった。その時のローン申請は見事に却下された。悔しかった。

「ヨーシ、やってやる」

それで5年たって、ようやくローンが組めるまでになったのだ。いま思うと懐かしいし、過去30年近く、多くの方にお世話になってここまで来られたというのが実感である。感謝の言葉しかない。これは私の本心である。