誰も正確に読めない景気動向

新年になり、エコノミストや経済評論家が今年の景気や株価の推移について予測を述べている。

何人もが今年下半期から来年にかけて、不況に突入すると予測しているが、あくまでも「予測」の域をでていない。彼らは聞かれれば何らかのことを言わざるをえず、確証がないにもかかわらず「不況になる可能性が高い」などと言う。

過去30年ほどジャーナリストを続けてきて確実にいえるのは、将来の株価や景気を読み通せるエコノミストなどいないということである。

ワシントンにいた時にウォールストリートの金融専門家の7割近くが半年先の為替相場や株価相場を読み違えた事実を知り、愕然とした記憶がある。それほど将来を予測することは難しい。

たしかに2019年の世界経済は減速が始まっている兆候がある。特にアメリカの製造業PMI(購買担当者景気指数)は昨年に入ってから下り坂である。株価も不安定なままだ。

しかし今でもアメリカの実態経済は力強いと判断する専門家もいる。大手投資会社ブラックストーンのバイロン・ウィーンは今年の株価は大幅に上昇すると述べている。S&P500種の株価指数は15%も値を上げると予測。金融業界では「びっくり予測」と言われている。

一方、モルガンスタンレーのマイケル・ウィルソンは株価指数は2018年と同じように乱高下し、高いリターンは期待できないとしている。

見方が割れるのは、「予測」に正確さというものが伴わないからだ。だから金融のプロであっても、いやプロでもアマチュアでも、いっそ「予測などできません」と言ったほうがいさぎがよい。

しかも自分の予測が外れたあと、責任をとって職を辞したという話はきいたことがない。少なくとも、私は2016年大統領選の当選者予想を外したあと(ヒラリー勝利)、約束通り坊主になった。

たいした約束ではないが、予測というのはいつの世でも「予測」に過ぎないことを肝に銘じておく必要がある。(敬称略)