英語の話し方

本屋の英語関連のコーナーにいくと、何十年も前から変わらない光景がある。

「どうしたら英語が話せるようになるか」をテーマにした本がたくさん平積みにされていることだ。溢れんばかりの数である。

多くの方が英語を話したいと思っていながら、なかなか叶わない現実がそこにある。

ちなみにアマゾンのブック検索で「英会話」と入力すると、書籍数は「1万点以上」とでる。1万点である。ウェブサイトの最初のページには27冊の英会話本が並び、そのうち7冊に「ベストセラー」という帯がついていた。

すでに多くの方は、いくら英会話本を読んでもペラペラにはならないことを知っているが、脳裏のどこかで「この本だけは例外かもしれない」という期待があり、目新しいタイトルの本に手を伸ばしてしまう。

何冊読んでも、付録のCDを聴いても、単語やイディオムをたくさん覚えても、やはりペラペラにはならず、「今回も無理か」といった半ば諦めに近い心境に陥ってしまう。

英会話本だけでない。最近はオンライン英会話もある。また多くの方は英会話学校に入って英米人の先生のもとで勉強された経験があるかもしれない。私もそうだった。1982年に留学する前、英会話学校に通ったが落ちこぼれた。ペラペラになりたいとの思いは強かったが続かず、学校にいかなくなった。

「ああ、これで一生英語は話せないんだなあ」と思った瞬間をいまでも鮮明に覚えている。

それでも留学する気持ちだけは強かったので、手続きをすすめ、TOEFLを受けて渡米する。留学できたことは幸運だったと思う。ただ自分で本当に英語を話していると実感できたのは、渡米後2年目くらいからである。

留学という生活環境の変化がなければ、私の場合は英語を身につけられなかっただろうと思う。日本にいながらにしてペラペラになる方もいるが、並大抵の努力ではないはずで、やはり大多数の方はしゃべれないままというのが現実であろうと思う。

語学だけはサクサクッと短期間でマスターすることができない分野なので、「日本にいながらにして」という条件下であれば、ネイティブ・スピーカーを無理やり生活圏のなかに引き入れる方法が最良だろうと思う。

留学生をホームステイさせる、留学生をルームメイトにする、留学生とつき合うなど、毎日あらゆる場面で、彼らがどういう英語表現を使うかを見聞きしていかないかぎり、オールラウンドのペラペラにはなれないだろうというのが私の答えである。

英会話本にはほとんどの人が共有する限界がある。

あるようでない・・・におい

電車の席で本を読んでいると、とつぜん鼻にガツンとくるにおいが襲ってきた。右隣りに男性が腰をおろしたのだ。

においは眼にみえないものだけれども「ガツン」という物理的なパンチに似ていた。しかも日本人が持つにおいではない。

首を右に回せばすぐにどういった人なのか判別できるが、しなった。右目の端から浅黒い彼の左手が見えた。インド人かインドネシア人らしき肌の質感と色見だった。

彼が座ったあともガツンは断続的にきていた。何年か前にインドにいったときに鼻腔にやってきたにおいに似ていた。

においにはクサイ時の臭い(におい)と香しい時の匂い(におい)があるが、彼のにおいはその中間点からややクサイ方に傾いたものだった。

ただ男性用コロンが混ざっていたので、独特なにおいが醸されていた。

眼を閉じると、インドのプシュカルという町を訪れた時の光景が蘇った。粗末なカフェでチャイをすすった時、横に座った男性がまさに今日のガツンだったからだ(時間のなくしかた)。

ずっと忘れないにおいというものがあることを今日、再確認できたと同時に、インドの懐かしい思い出がしばらく明滅して嬉しくなった。

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あるようでない・・・店

友人のカメラマンといつもの店で話し込んだ。ブログの顔写真を撮ってくれた人である。

この店はこちらから注文しなくとも、手作りのお惣菜を次から次へとテーブルに並べてくれるところで、世間的には小料理屋というカテゴリーに入る。カウンターの前には日替わりのお惣菜が5、6種類、大きなお皿に入れられていて、いつもすべてを試したい衝動に駆られる。

メニューはそれ以外に何十種類もあり、ドラえもんの四次元ポケットのようにあれもこれもといった具合に繰り出される。「カレーは?」と訊くと「あるわよ」とママは当たり前の笑顔をつくっている。

昨晩は予約の電話をしてあったので、テーブルにはすでに焼酎のボトルが置かれていた。何も言わなくとも趣向をこらした肴をいくつもだしてくれたが、日によっては入店直後に皿の中を覗いて「これとこれとこれ」と指を差して取り分けてもらうこともある。

バンダナを巻いた若いバイト店員が切り盛りする居酒屋と違い、手作り、気配り、ぬくもりがそこかしこに溢れていて、笑顔が止まらない。

手作り惣菜で飲めるお店として飲食関係のウェブサイトや雑誌から店を紹介させてほしいと絶えまなく来るが、ママは決してハイと言わない。

「お客さんがたくさんきてしまうと常連さんが入れないから」

だから当ブログでも紹介するわけにはいかない・・・ゴメンちゃい!