一生食べなくてもいいもの

今日のランチは豚肉の生姜焼きだった。

タイトルに「一生食べなくてもいいもの」と書いたが、生姜焼きは今後も食べたいので当てはまらない。私が今後の人生で2度と食べなくてもいいと思っているのは、付け合わせに出てきたナポリタンである。

gingerpoke8.15.18

パスタ全般が嫌いなわけではない。むしろパスタや麺類は大好きで、ナポリタンだけが例外なのだ。

話を1972年にまで遡らせていただく。当時、中学3年生。その年の秋に母親がいきなり喫茶店を始めた。父親は会社員をつづけていて、経済的に問題があったわけではない。喫茶店は母親の趣味と好奇心によるものだった。

私は高校に入学してから、毎週ではないが、日曜によく喫茶店を手伝わされた。最初は皿洗いだったが、そのうちにウェイターをするようになった。

大学に入る頃には厨房で野菜や肉を切ったし、フライパンも振るようになった。メニューにはチキンライスやピラフ、そしてもちろんナポリタンもあった。夏休みとなれば、何日も続けて厨房に入る。

アメリカに留学するまで、どれくらいナポリタンを作っただろうか。1000オーダーは軽く超えていると思う。フライパンを熱し、サラダ油を入れ、玉ねぎ、ベーコン、ピーマン、そしてスパゲティ(パスタとは呼ばない)を投入。塩、コショウ、業務用の調味料を加えてフライパンを振る。1人前の量であれば、ほとんど目を瞑ってもできるほどだった。

チキンライスやピラフも同じくらいの数を作ったが今でも食べたいと思うことがある。だがナポリタンだけはギブアップである。自身の味覚のなかで、ナポリタンだけが飽和して溢れでてしまっている。

花粉症が体内のIgE抗体の飽和によって起こされるように、「ナポリタン抗体」がもういっぱいで、少しも体内に入っていかないという状態である。だから今日の付け合わせのナポリタンは、量は少なかったが辛かった。

これだけナポリタンに苦しんでいる人がいることを、店員さんはじめ、いったい誰が想像できるだろうか。