トランプと金正恩の本当の関係

6月12日にシンガポールで行われた米朝首脳会談。表面的には、両首脳がいい関係を築き始めるきっかけになったかにみえる。

トランプは3日のツイッターでも「北朝鮮とはいい話し合いが進行中だ。過去8カ月、北朝鮮はロケット発射も核実験も行っていない。アジア中が胸を躍らせている」と楽観的なコメントを載せた。

国務長官マイク・ポンペオも今日から北朝鮮を再訪し、完全な非核化にむけての協議を行う予定だ。ここまでは順調に進んでいるかに見える。だが、本当にいい関係ができているのだろうか。

トランプもポンペオもCIAが作成した「北朝鮮は核兵器を放棄することはない」という内容の報告書を読んでいないわけがない。シンクタンクだけでなく、安全保障問題を専門にする多くの学者も「完全な非核化」はありえないと述べており、2人がこうした「現実的な見方」を知らないはずがない。

にもかかわらず、北朝鮮に対して楽観的な見方と態度を崩さない。これは何を意味するのか。

トランプらしい真の楽観を抱えて明るい将来を実現するために動いているのか、それとも「完全な非核化はありえない」という現実を踏まえたうえで、北朝鮮との会談を進めているのかのどちらかだろうと思う。

前者はほとんどありえないので、後者の「完全な非核化はありえない」ことを前提で話を進めているかにみえる。

あとは密約として、金正恩に核兵器や核物質を使用させず、売却させず、製造させずという約束をとりつけている可能性がある。

トランプと金正恩は意外にも、密約を交わすほどの仲になっているかもしれない。というのも、金正恩を暴走させないためには、それがもっとも現実的な策と思えるからだ。金体制の保証もする。

突っ張りあっていてはまとまるものもまとまらない。それが過去の米朝関係だったからだ。したたかな首脳であれば、それくらいのことはするだろう。

いずれにしても今後1年でトランプ・金正恩の本当の関係が露見するはずである。(敬称略)