ロシア疑惑(7)

シリーズでお伝えしている「ロシア疑惑」。トランプがいつ特別捜査官ロバート・ムラーに起訴されるのか注視してきたが、4月4日、複数のアメリカメディアは「ムラーはトランプを犯罪対象にしていない」と伝えた。

昨年、起訴された4人の関係者のうち3人が司法取引に応じ、検察側に提供された情報から起訴にあたらないと判断したのだ。しかし報道では「現在のところ」という条件がついている。

何度もお伝えしているが、ロシア疑惑の核心は「ロシア政府が2016年の大統領選で、トランプ陣営と共謀していたかどうか」という点に尽きる。検察側としては、そこに何らかの違法行為があったかどうかを探ってきた。

仮説としては、ロシア政府がトランプを勝たせるために複数の工作を施したというものだ。

トランプが犯罪対象でないと発表された翌5日、今度はロシアの億万長者3人がムラーのチームから事情聴取を受けているとの報道があった。1人はスレイマン・ケリモフという億万長者で、いわゆる新興財閥(オリガルヒ)だ。

ケリモフは10年以上前から西側諸国の株式を取得しはじめ、ロシアでは炭酸カリウム最大手シルビニットの最大株主。金属業界で財を築いた人物で、2000万ユーロ(約26億円)をロシアからフランスに運び、アメリカに持ち込んで16年大統領選に使途したのではないかとの疑いがもたれている。

外国人や外国企業からの献金は違法なため、実証されれば大きなニュースだ。CNNによると、金融機関を使っての送金であると証拠が残るために現ナマを移送させたという。

日本のメディアでは大きく報道されないが、ロシア疑惑の捜査は今でも少しずつ動いている。(敬称略)