トランプ政権が誕生して1年3カ月がたとうとしている。3月下旬に渡米した時、トランプについていろいろな方に話をきいた。
首都ワシントンだけでなくテキサス州ダラスに寄る機会があったので、共和党の票田である同州でもトランプについて質問をした。
たび重なる暴言と女性蔑視の言動、長引くロシア疑惑。それでも「トランプがいい」という人はいったい何を考えているのか。率直にそう思っていた。
ダラス市郊外で生まれ育った男性がはっきりした口調で言った。トランプ支援の代表者のような語り口ですらあった。
「われわれが2年前に選んだのは聖人ではないです。女性問題ではだらしない、大ぼらを吹くドナルド・トランプという男です。でも彼はこれまでのような口先だけの政治家ではないです。ちゃんと経済を上向かせていますし、アメリカを強くしようとしています。だからセクハラ問題が浮上しても気にならないのです」
セクハラ問題で、多くの女性に手を出しても目を瞑れるというのだ。考えてみれば、90年代のビル・クリントンのセクハラ疑惑の方が過激であったかもしれない。
私は政治的にはリベラルなので、正直に述べると心情的にはクリントンに身を寄せていた。だからセクハラで訴えられても大統領を辞めるべきだとは思わなかった。
ホワイトハウス内でモニカ・ルインスキーととんでもないことをやったなとは思ったが、心の底からクリントンを嫌ったりしなかった。
92年の大統領選時、ニューハンプシャー州で私と米人記者2人、そしてクリントンの4人でランチのテーブルを囲った時から人間として魅了されて以来、クリントンのファンになっていた。
ジャーナリストとして中立を保つという点において、クリントンの政策や言動を客観的に批判したこともあったが、人間的にはずっと彼の側にいた。
トランプの支援者はまさに当時の私と同じで、何人もの女性からセクハラで訴えられていても、「それがトンランプらしさなんだから」という思いでいるのだ。
こうした国民がほぼ半分。あとの半分は反トランプである。この構図はトランプが政権の座についている間、変わらないだろうと思う。(敬称略)
Photo by the White House