あぶないつけ麺

先月、香港に行った時、ホテルのそばに三田製麺所がオープンしていた。

開店してまだ数日しかたっておらず、ピカピカの店内には人があふれている。三田製麺所は東京を中心に、20店舗近くもあるつけ麺専門店である。

「香港に来てつけ麺というのもなあ」と思い、店には入らなかった。

だが先日、有楽町店に行くことになった。友人のオランダ人記者が三田製麺所の大ファンで、ポイントカードも持っており、一緒に食べることになったからだ。

本当に久しぶりだった。店内に入っただけでかつおの香りが鼻腔をくすぐる。ねっとりした出汁に太めの麺がからみつき、際限がないほど口の中にはいっていく。

「あぶない、あぶない。これは危ない食べ物だ」

そういうと、オランダ人記者は2年前のことを話してくれた。

「最初食べたときからすっごく気に入って、何度もくるようになったんです。お店の人とも知り合いになったし、ポイントカードも勧めてくれました。でも最近はあまり来なくなりました」

「どうして?」

「最初、つけ麺のスープも全部飲み干していたんです。おいしかったから。ほぼ毎日、ここに来ていたので太りました」

「ハッハッハ」

笑ってしまった。

いまはダイエットがうまくいき、彼は細身の体型を取り戻している。中国人もオランダ人も、もちろん日本人も共有するおいしさはあるのだ。

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香港、九龍半島ネイザンロード近くの店舗。

ラスベガス事件、父親はサイコパス

アメリカ、ラスベガスでとんでもない事件が起きた。

死傷者の多さもさることながら、32階のホテルの窓ガラスを叩き割り、そこから弾丸を打ち続けた行為に呆れる。というより、正常ではない精神の持ち主であることをうかがわせる。

映画『ランボー』の世界に飛び込んで主役を演じたかのような倒錯があるように思う。

米メディアはすでに、犯人スティーブン・パドックの父親ベンジャミンは有名な銀行強盗で、実刑をうけたが脱獄。そのあとも銀行強盗を行うほどの悪党だったと報じている。

さらに父親はサイコパスであり、自殺願望があったとも記している。息子スティーブンに資質の遺伝がなかったと言ったら嘘になるだろう。

またこうした事件が起こるたびにアメリカ社会の銃規制問題が浮上するが、現実的な規制にはほど遠く、むしろ動きは逆だ。

一般市民は銃を購入して身の安全を守ろうとする。そこが日本社会ともっとも違う点である。

民主主義という混沌

民主主義が進むと政治はより混沌とするーー。

私がここ数年、考えていることである。北朝鮮のような独裁国家であると市民の声は政治に反映されないが、独裁者(金正恩)の意向はまっすぐ下に降りてくる。弊害は大きいが、政治システムという点で曇りがない。

だが民主主義は多くの声を拾い上げはするが、まとまらない。その傾向が強い。アメリカの2大政党制に対する羨望が日本の中にあるが、アメリカの連邦議会の内側をのぞくと混沌が渦巻いている。

連邦議会の支持率は過去何十年も10%台でしかない。それほど信用されていない。いまの共和党内の意見の対立は市民を落胆させつづけている。

日本はアメリカ以上に混沌としている。安倍の突然の衆議院解散には論理性がないし、民進党も生まれたばかりの希望の党へ入ることでほとんど解党してしまった。

民主主義は本来、有権者の声を聞き、意見が集約されて国政に反映されるものだが、そんなものは理想論でしかない。議員は選挙区の代表のような顔をしているが、身勝手な言動で政治は混沌としている。

それでも独裁社会よりはいいというレベルか。ああ民主主義・・・である。(敬称略)