保守化と夢

先日、都内で講演をした。聴きにきてくださったのは10代と20代の人たちが中心で、講演のあと、若い人たちの話に耳を傾けた。

一人の青年がこう言った。

「最近、周囲に夢を語れる人がほとんどいないんです。皆、官僚になりたいとか大手の金融機関に就職したいといった話しかしないんです」

夢を語らないというのは、堅実な生き方とも言えるが、若者の保守化と言い換えることもできる。

日本の若者が保守化しているという事実はなにも今に始まったわけではない。実は2000年頃から徐々に始まっている。

すでに何冊も本が出されており、社会学的、経済学的な要因が指摘されている。

簡潔に述べると、会社や団体を存続させていく上で、経理上すべての人を正社員、終身雇用で雇用することが不可能になった頃から保守化が目立ってきた。

非正規社員(パート社員)が増える一方で、正規社員の終身雇用は維持されるため、パートとの格差が広がり、就職するのであれば安定した組織でと考えるようになったのだ。

しかも正社員ではないオプションを選択し、努力しても報われないという思いが若者の間に広まった。ホリエモンのように、大学を中退して起業し、自分の思うように生きることはすべての人に真似ができるわけではない。

それでも、、と私は思う。自分が好き勝手に生きてきたからでもあるが、「一つの分野で世界一を目指さないと!」と先日、講演とは別の場所で20歳の女子大生に言ったばかりだ。

特定分野で、誰にも真似ができないくらい突き詰めてほしいと思う。「食えない」といっても餓死することはまずない。まず、とことんやることである。

60歳を迎えた自分にも同じ言葉をぶつけて、さらにジャーナリズムの道を突き進もうと思う今日この頃である。