称賛の嵐

リオ五輪での日本人選手のメダルラッシュが続いている。

その中でも内村航平の「金」の演技は圧巻だった。国内メディアだけでなく、外国からも称賛の嵐がとまらない。なにしろ経済紙である英フィナンシャル・タイムズや米ウォールストリート・ジャーナルでさえ内村を褒めたたえたのだ。

フィナンシャル・タイムズは「力強さがありながらもバレエダンサーのような品格で、難度の高い技をこともなく演じていた」と書き、内村を「スーパーマン」と称した。

同紙は1976年モントリオール五輪で10点満点を何度も叩きだしたナディア・コマネチからコメントをとっている。

「信じがたいテクニックを身につけているので、史上最高の体操選手と言って差し支えない。普通、スローモーションで体操選手の動きを見ると、ミスや粗雑さが目立つが、スローモーションでさえ彼の演技は完璧」

英選手のナイル・ウィルソンは「日本人選手の完成度はいま、完全に別次元にある」とレベルの差を素直に認めている。ウォールストリート・ジャーナルは内村を「キング」と呼びさえした。

ただ個人総合の最後で、内村はウクライナのオレグ・ベルニャエフ(22)に0.901点の差をつけられていた。最後の鉄棒で、オレグが14.9点を出せば勝っていたが、点数は14.8点。誰もが、審判が内村に配慮したと疑った。会場からも「ブー」という声があがった。

けれどもオレグ自身が審判の偏りを一蹴してみせた。評点は正しかったというのだ。

もちろんオレグは勝ちたかったに違いない。けれども内村に対する敬意と存在の大きさゆえ、異をとなえるどころか内村こそが「金」にふさわしいという言動をとる。

「体操選手に弱者は1人としていません。ましてや、私たちは『伝説(内村)』と戦っているのです。世界でこれほどカッコイイことがあるでしょうか。彼と一緒に信じられないような演技を披露できたことが何よりの誇りです。しかも航平にプレッシャーをかけられたのです」

4年後の東京五輪では、最大のライバルになりそうである。