ショーンKの深層心理

ショーンKことショーン・マクアードル川上が川上伸一郎であることはすでに万民の知るところであり、彼の経歴詐称は芸能ゴシップのヒトネタになってしまったので、ここでは敢えて真偽を追求しないことにする。

ただ、彼が抱える心の闇に少しだけ触れてみたいと思う。

邪推で終わるかもしれないが、私の興味は経歴詐称や整形疑惑、出生の秘密といったところより、なぜ川上が単なるホラッチョで終わらず、日本中を騙すほどの大うそつきになっていったかの過程にある。

「子どもは正直だ」という言葉がある。それは多くの子どもが周囲の状況を考慮せず、思ったことを口する時に使われる表現で、ウソをつかないという意味ではない。むしろ小学生は大人以上に多くのウソをついたりする。

大人になってからも、口からでまかせを言う人も多いし、自分を大きく見せたい欲求によるウソ、虚栄心や見栄からくるウソ、騙すための意図的なウソ、失敗を穴埋めするためのウソなど動機は数え切れない。

自身を社会の中に投影したとき、理想とする実像を手に入れられなかった10代後半から20代にかけて、川上はウソの経歴を自身の表皮にかぶせることで、少しだけ自身のコンプレックスを表面的に修正していく。

ハーバード大学MBA卒という学歴は、川上にとって最高級の表皮だった。本物ではなく合皮だけれども、磨き込むことで本物に見せかける作業を惜しまなかった。

父親がアメリカ人と日本人のハーフというくだりも実はウソのようだ。中学時代の同級生の「(当時は)日本人にしか見えなかった」との言葉からも、生い立ちさえもウソにまみれているように思える。

白人への劣等意識というより、日本社会のなかで圧倒的なまでの優越意識を獲得し続けたかったにみえる。そこからは、かなり強いナルシシズムを感じないわけにはいかない。

川上と実母の関係はほとんど報じられていないが、ナルシストは母親との特異な関係から生まれることがある。ふんだんな愛情を注がれもするが、家庭内に問題がある場合も多く、貧困や家庭内暴力がみられることもある。

親がナルシストであることもあり、川上は親から能力以上の期待をかけられていたことによるアイデンティティーの危機に直面していた可能性がある。ナルシストは自尊心を損ないやすいため、成人になってからは他者からの関心が常に必要になる。

注目されることで自己愛が保たれるのだ。

私は整形を否定しないし、整形手術をすることで本人が自信を獲得し、納得のいくものであれば結構だと思う。しかしハーフ顔を造りだすことはできても、生物学的にハーフになることはできず、絶えず現実とのギャップにさいなまされる。

英語力を鍛え、経営の知識を身につけてコメンテーターやラジオのパーソナリティーとして評価されつづける努力をすることで、ナルシストの面目が保たれる。

合皮であることがばれてしまったいま、彼に必要なのは自虐かもしれない、と思う。

再起があるとすれば、過去の自分を誰よりも過激に、辛辣に落としこめる術を獲得し、披露することである。自ら地に落ちたことを笑う自虐の術しか再起の道はないように思えるが、いかがだろうか。(敬称略)