「イラク政府はもう対処できない!」

10日午後、東京青山にある国連大学でイラクの現状についての少人数の会合があり、出席してきた。

イラクに常駐している国連の調整官リズ・グランデから話を聴きくと、イラクは来年になると今よりもさらに状況は悪化するという。17都市がいまイスラム国(IS)の支配下にあり、今後1100万人から1200万人が自分の家に住めなくなる可能性がある。

東京都の人口とほぼ同じ人数が自宅を追われるということである。シリアの難民問題も深刻だが、イラクの状況も悪化しているのだ。

1ヵ月ほど前の当ブログで、国連はイスラム国を殲滅させるような戦闘集団ではないと書いたとおり(国連は機能しているのか )、イスラム国を駆逐するという点で、国連は手立てをもたない。戦いは米英仏を中心とした有志連合に頼らざるをえない。

グランデが所属する国連開発計画(UMDP)は逃げだした無辜の市民に手を差し伸べることを使命とする。イラク政府はほとんど何の対処もできず、お手上げ状態であるという。

シリアにしてもイラクにしても、その惨状は日本で生活しているかぎり想像の外側にある。

会合が終わったあと、アメリカの特殊部隊の活動について訊いてみた。知っているはずだと思っていた。

グランデはアメリカ政府が発表する人数よりもはるかに多くの特殊部隊がイラク領内に送り込まれていると言った。そして「米軍は優勢で、イスラム国を叩いている」と口にした。

目をおおいたくなるような現状報告のなかで、それが唯一の希望と呼べるものだった。(敬称略)