アメリカのイマ

アメリカに渡ってさまざまな人に話を聞いていると、政治的な分断がますますはっきりしてきていることが分かる。

「もしトランプが大統領にでもなったら、私はもうこの国にはいたくない」(50代女性)

「トランプなら、口だけの政治家とは違って結果を残してくれると思う」(30代男性)

分断は共和党候補ドナルド・トランプへの思いを語ってもらうとはっきりする。

パリで起きた同時テロ事件後、トランプは市民が銃を携行していれば結果は違ったという主旨の発言をした。銃は規制して減らすのではなく、自由に所持する方が身の安全を守れるという考え方だ。

アメリカとメキシコ国境に万里の長城をつくるというアイデアは、いまでも繰り返しのべている。本気である。

それで確実に身の安全が保障されるのならばいいが、中長期的な因果関係を考慮すると過激な発言とアイデアがいい結果をもたらすとは思えない。

それでもトランプが演説をすると、全米中の会場には2 万超の人たちが集まる。過去30年ほど大統領選を取材しているが、ここまで大衆を動かす候補はいなかったかもしれない。

オバマの時でさえ数千人である。2万人の中には興味本位で会場に足を運ぶ人もいるだろうが、トランプに対する保守層からの期待はいまや一過性のものを通り越して着実という言葉を使えるほどだ。

首都ワシントンのシンクタンクで米政治の専門家と話をした。

「1980年のレーガンを覚えていますか。彼が出馬して選挙キャンペーンを始めた頃、有権者は誰も真剣な候補として捉えなかった。『レーガンって俳優でしょう?』って。ところが当選する。そして大統領としても一応の成功をおさめるわけです。トランプだってわかりません」

トランプのために汗を流すスタッフたちはいま、全米で地道な選挙戦を展開しはじめている。世論調査でも共和党候補の中では依然としてトップ。

アメリカ・・・大丈夫ですかというのが正直な思いである(敬称略)。

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アメリカの定食屋とも言える「シルバーダイナー」での朝食