まさかこんな形で過去の所業が公開されるとは思っていなかったはずだ。

何のことかと言えば、英トニー・ブレア元首相がジョージ・ブッシュ前大統領と交わした秘密の約束事である。本来、ブレア首相が墓場まで持っていくはずの秘め事が英紙によって明かされてしまった。

秘め事というのはブレア氏がブッシュ氏に対し、2003年3月に始まるイラク戦争の1年も前に、「米国についていく」という主旨の約束をしていたことだ(ヒラリーメール公開で明らかになった英国の恥部)。

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Photo courtesy of tonyblairoffice.org

TPPと「世の中こんなもの」

今朝は5時に起きて、ラジオ出演(ベイFM)の準備をする。今日のテーマはTPPだ。「いまさらながら」という感じではあるが、重要なトピックである。

2006年にTPPが始まった時はたった4カ国だけ(シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランド)の貿易協定で、小さな集まりだった。10年になってアメリカやオーストラリアなどが加わり、日本は13年に参加。最終的には12カ国、世界のGDPの4割をしめる大きな体制になった。

TPPが各国にどういう影響を与えるかについては、いまでも賛否両論がある。弱肉強食を前提とする新自由主義に反対する学者たちは、頑なに反対した。国内の農業従事者のほとんども反対。

首相の安倍も当初は反対していたが、のちに賛成にまわる。日本の大企業のほとんどはTPP推進派で、業種によって支持と反対が鮮明になっている。

各国の産業と市場にどういう影響がでるのか、本当のところはわからないというのが正しい判断だろうと思う。

なぜか。興味深い話がある。1994年1月、NAFTA(ナフタ・北米自由貿易協定)という自由貿易を推進する協定がアメリカとカナダ、メキシコの3国間で発効した。

発効前、経済学者の多くはNAFTAによってアメリカは隣国の市場を自国のように使えるので、輸出量が増えると読んだ。それまでの貿易赤字は解消にむかうと推測した。

だが結果はまったく逆だった。アメリカの対2国の貿易収支は94年以来、赤字が増え続け、累計赤字は1810億ドル(約21兆円)に達している。

「世の中こんなもの」と言えばそれまでだが、アメリカ産業界の損失は大きい。雇用は100万超が奪われたといわれる。

さらに、世界最大の農業大国であるアメリカがメキシコに安価な農作物を輸出したことで、メキシコの農業が壊滅的な打撃を受けた。それによって失業したメキシコの農業従事者がアメリカで仕事をしようと国境を越えている。

大統領候補のドナルド・トランプは国境に万里の長城を築くと言っているが、大量の失業者をだすきっかけはNAFTAにあったのだ。

この帰結をNAFTA締結前に正確に読んだ人はほとんどいない。私はワシントンでNAFTAの交渉をずっと見守っていたが、反対派こそいたものの、いまのような貿易赤字の拡大を見越した人は記憶にない。

TPPでも同じように、発効後に予想外のことが起きる可能性は十分にある。

なにしろ「世の中こんなもの」なのだから。

マイケル・J・フォックスからのメール

朝、メールをチェックをすると差出人のところに「Michael J. Fox」という名前が見えた。最初は誰かのイタズラかジャンクメールだと思っていた。

ただ添付ファイルも警告もない一般メールとして来ている。クリックすると、ホワイトハウス経由で本物のマイケル・J・フォックスから送られたものだった(アメリカの良心 )。

フォックスが主演した映画『バック・トウ・ザ・フューチャー』(1985年)で30年後の世界が描かれており、昨日がその日だったことから、ホワイトハウスが気をきかせて彼の書簡を配信したのだ(下記参照)。

内容は、彼が患っているパーキンソン病をはじめとする多くの難病が、30年後の2045年には解決するように活動したいというものだった。

30年後・・・パーキンソン病だけでなく、ほとんどのガンは「終わっている」かもしれない。終わっているというのは、治癒はもちろんのこと、最初からガン細胞を増やさない医療が確立するだろうということだ。脳卒中も心臓病も激減していそうだ。

となると、人間の寿命はどこまで伸びるのか。逆に、そこまで長生きしたくないという声もきこえてきそうである。


We’ve come a long way since 1985.

When Marty McFly and Doc Brown traveled 30 years into the future, we could only imagine the innovations we take for granted today — new ideas and technologies that have completely changed the way we live, learn, and work.

Back then, if you’d have told me that I’d go from talking on a cell phone to talking cell biology, I would never have believed you. But today, The Michael J. Fox Foundation is helping to spearhead research collaborations to speed a future in which we can treat, cure, and even prevent brain diseases like Parkinson’s.

So what’s possible in another 30 years? Call me an optimist, but I believe that by 2045 we’ll find the cures we seek — especially because of all the smart, passionate people working to make it happen. Doctors and researchers around the world are developing new tools to improve the diagnosis and treatment of brain diseases, to tailor treatments — for all illnesses — through precision medicine, and to make life better for millions of people. This truly is the stuff of the future.

Today, on “Back to the Future Day,” I challenge you to imagine the world you want to live in thirty years from now. The White House is hosting a series of online conversations with innovators across the country all day long. Check it out and add your voice here.

We can’t all be brain scientists, but all of us can get involved. One reason Parkinson’s research has come so far in the past 15 years is that people and families living with the disease have stepped up as advocates and innovators themselves, working to build the future we all want.

Together, we’ll make neurological illness a thing of the past.

And if we all eventually get hoverboards, well — that’s a bonus.

–Michael J. Fox

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晩秋の海

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小学生の時に訪れて以来の城ヶ島。

神奈川県三浦半島の南端に位置するその島は18日、静かだった。島の南側には鋭角に刻まれた岩が連なり、人を拒んでいるかにもみえる。

編集関係者を中心にした男女6人での晩秋の遠足。遠くにヨットが浮かんでいた。

トランプの胎動を考える

出馬から4カ月。米大統領候補、ドナルド・トランプは依然として共和党のトップを走る。

9月に行われた討論会のあと、人気に陰りが見えたが(下降しはじめたトランプ )、支持率は高止まりしており、どの候補よりも高率である。

最新の世論調査でも、CNNでは38%で1位、フォックス・ニュースは24%でトップ、CBSニュースでも27%で先頭である。それでもアメリカの政治学者や共和党関係者の多くはトランプが共和党の代表候補になる可能性は少ないとみている。

彼ほど過激な言動を展開し、諸外国を敵にまわしている候補が勝てるわけがないと考えるからだ。それは過去何十年と大統領選を見てきた専門家の経験値からくる判断であり、僭越ながら私もそう読んでいた。ある米政治アナリストは「トランプ旋風はある種のファシズム」とさえ言った。

ただ彼にはエネルギーがみなぎっている。ジェブ・ブッシュに対して「ロー・エネルギー」と言い放ったこととは真逆の真性を携えている。自分に向けられた全批判をプラスにしてしまうほどの勢いが感じられる。それは認めざるを得ない。

そのため、「これまでは彼のような候補は勝てなかったからトランプも勝てない」という専門家の判断は、ことごとく覆される可能性がある。

たとえば、2008年の大統領選でこんなことがあった。今でも鮮明に覚えている。アメリカをよく知る日本人のベテラン・ジャーナリストが、08年夏の段階でも「アメリカ国民は黒人大統領を受け入れる準備ができていない」と言ったのである。

08年春、オバマがヒラリーとの予備選での戦いを制し、民主党の代表候補になった時点で、私はオバマ以外に大統領はないと考えていた。多角的に状況を判断するまでもなく、彼の勢いは共和党候補ジョン・マケインに負けるわけもなかった。

それでもそのジャーナリストはオバマは勝てないと言ったのだ。そこには「オバマに勝ってほしくない」、「黒人は大統領になれない」といった潜在的な思いから脱せられない呪縛にも似たものを感じた。

いま「トランプは勝てない」と述べることは、もしかすると今アメリカで起きていることに目を瞑ることなのかもしれないとも思う。

上院議員や知事といった既存の政治家に対する圧倒的な不信が国民にあるのも確かだ。反体制とポピュリズムがトランプ旋風を加速させる要因になっている。

ジャーナリストとして、いまあるものを冷静に眺めたいと思っている。(敬称略)