タクシーの中へ(7)

以前から抱いていた疑問がある。タクシーと電車、いったいどちらが早いのかということだ。

「都内なら電車の方が早い」という話をよく聞くが、本当はどうなのか。

先日、仕事場から港区青山1丁目までいく用がありタクシーに乗った。午後2時半過ぎ。銀座の晴海通りから青山のツインタワー近くまで、所要時間は18分。道路は渋滞していたわけではなく、車は比較的スムーズに進んだ。

帰りは地下鉄銀座線に乗った。青山1丁目駅から銀座駅までの所要時間が10分。単純に比較すると地下鉄の方が早い。

だが用事のあった場所から駅まで歩いて4分。ホームで電車を待つ時間が3分。そして乗車時間が10分。銀座駅に着いてから仕事場までの徒歩時間を足すと、地下鉄を使う方が長かった。

これは1例に過ぎない。所用の場所が電車の駅からほとんど歩かず、しかもホームに着いたらすぐに電車に乗れる状況であれば、電車の方が早いかもしれない。

以前、朝の通勤時間帯に自宅から仕事場までタクシーに乗ったことがある。道路は混んでいた。運転手さんに訊くと「朝はいつもこんなもんだよ」。

電車であれば「ドア・ツー・ドア」で25分という時間が、その日は行程の半分ほどで45分もかかってしまった。

結論としては、移動する地域と時間帯によって違うので一概には言えない――という口をアングリさせてしまうくらいつまらなくてすみません的な答えに落ち着いた。

本当にすみません!

「米国はキャロライン・ケネディ氏を駐日大使として『使っている』が、彼女は大使の仕事をオファーされた時、信じられなかったんだ。(オバマ政権側が)『大使はいかがですか』と聞くと、『本当ですか?』ってね」

米共和党から大統領選に出馬している不動産王ドナルド・トランプ氏は12日、ミシガン州で行った演説で、ケネディ氏を茶化した。

話の趣旨は、ケネディ氏が大使として不適任ではないかという点と、任命された理由がバラク・オバマ大統領の2度の選挙で資金援助をしたからというものだった(トランプ候補を一番人気にしておく米国の病理)。

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Photo courtesy of Redstate.com

アメリカの病理

アメリカ大統領選に出馬している不動産王ドナルド・トランプの勢いがとまらない。

多くの政治アナリストは「支持率が高いのは今だけ」と評しているし、私もそう考えている。年内には失速するかに見える。

ただ、共和党候補たちによる第1回目の討論回(8月6日)で暴言を吐いたあとも支持率はトップを維持している。というより、勢いが増した感すらある。どの世論調査でもトランプがトップである。もちろん共和党内の話で、民主党はヒラリー・クリントンがトップである。

トランプの支持率が高い理由は、他の政治家が吐かない本音をわかりやすい言葉で語っていることによる。ビジネスで成功した自信が言動にあらわれ、「俺ならこうやって解決する」という単純明快なスタイルが受けている。

個人的に、トランプが述べる話の約9割に賛成できないが、アメリカの一部の有権者の不満を代弁していることは確かである。湧き上がるエネルギーはジェブ・ブッシュの数十倍はあるような印象だ。

彼を支持するツイッターの書き込みをいくつかご紹介したい。

「(アメリカ国内への)不法移民の流入を、これまでどの政治家も阻止できなかった。彼なら本当に阻止できそうだ」(アメリカとメキシコ国境に万里の長城を築くという考えに対し)

「トランプこそが(ワシントンの)屁のように腐りきった空気を浄化できる男だ」

「メキシコ人やハイチ人、中東の人間、それにアフリカ人など、アメリカはこれまでスポンジのように彼らを受け入れてきた。彼らを自国に追い返すのが最良の策だ」(トランプの排他思想に賛同して)

こうしたトランプを推す排他的でかたよった保守思想は、アメリカ社会の中ではごく一部に過ぎない。民主党の有権者はもちろん、共和党の主流派にさえ毛嫌いされている。

これを「アメリカの病理」と呼んで差しつかえないだろう。短期的には反オバマ=反リベラルにスポットライトが当たっているということだ。(敬称略)

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Photo courtesy of Donaldjtrump.com

心に残るヒトコト

これまでの人生で心に残る一言というものがある。

先週、英国の写真家にインタビューした時、久しぶりに「これだな」と思える言葉を耳にした。

写真家は70歳代前半で、ベトナム戦争にも従軍カメラマンとして赴いた老練なフォトジャーナリストだ。ベトナム戦争以後、何万枚の写真を撮ってきたかわからない。

「死ぬまで撮り続けるだろう。それが俺の生き方というより、それしかないからな」

テーブルを挟んで、少しだけ斜にかまえ、あまり視線をあわせない。饒舌のようでいて、言葉を選んでいるようでもあり、独特のスピードで語る。ただ、ひたむきさが伝わってきた。

随分と打ち解けてきたと思った時に「これまでのベストショットと呼べる1枚はありますか」 と訊いた。

「まだベストショットは撮れていない」

即答だった。

その一言で、写真家の生への姿勢を垣間見た。帰路、「これだな、人生はこれだ!」と一人で妙に納得してしまった。

I haven’t taken my best shot yet!

突然、思い立ってカンボジアに行くことにした。

行く先をカンボジアに決めたのは、 アンコールワットを見るためだけではない。急速な経済発展を続ける東南アジアのイマを見ておきたいと思ったこともある。

一方で、カンボジアはタイやベトナムよりも素朴さが残っているような印象があった。アジアらしさと言えばいいのか。そのアジアらしさに触れるのも、今回の旅の目的だった(番外編:カンボジアから自転車が消えたわけ )。

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