イスラム国と人質

イスラム国に拘束されている日本人2名をいかに救出するか―。

アメリカ政府は2億ドル(約237億円)という身代金を払うべきではないと、日本政府に警告している。一貫してテロリストの要求には応じない方針だ。

身代金を払わなかったことから、昨年8月、イスラム国に拘束されていたジャーナリストのジェームズ・フォーリーが殺害されている。

アメリカ政府は人命よりも犯人たちの要求を拒否することの方が重要と判断している。日本政府にもそうした行動を期待する。ただフランスやスペイン、トルコなどは違う方針で、すでにイスラム国と交渉して拘束されていた人質を解放させた。

3政府は公式には認めていないが、身代金をテロリストに支払ったと解釈していい。それでは安倍はアメリカの警告に従うのか。それとも3国の歩んだ道を歩むのか。

安倍は迷っているかに見える。

というのも過去2日の言動に矛盾があるからだ。テロリストも安倍の言動を注視しているはずだ。安倍は 「人命第一」という表現を使った。これは身代金を支払ってでも助けるべきとの意味に受け取れる。

しかし、「日本はテロに屈することなく国際社会によるテロとの戦いに貢献していく」とも述べた。この言葉にはテロリストの要求を飲まないとの意思にも思える。いったいどちらなのか。

アメリカはできるだけの協力をすると言っているが、オバマの一般教書演説でも強調されたように、「(イスラム国を)最終的に壊滅する」意気込みで、「日本よ間違っても身代金は払うな」との考えだ。昨晩、FMラジオJ-WAVEの番組に出演してパーソナリティーの堤未果とその点を話しあった。

今日になっても官房長官の菅は記者会見で「人命最優先に取り組んでいる」と述べた。「身代金は支払うのか」との質問には言葉を濁す。「払うつもりはない」と断言しないのだ。

これは水面下でイスラム国と接触し、多額の身代金を払う用意があるということに等しい。イスラム国はたぶん値段交渉には応じないだろう。

今のような状況で、政府内に集まった重要な情報をメディアに漏らすことほど愚かなことはないと承知している。日本政府がアメリカのように特殊部隊をシリアに派遣するというオプションはもたないはずだ。アメリカはジェームズ・フォーリーを救出するために特殊部隊を送り込み、失敗したと言われる。

日本政府がもっとも歩みそうな道はテロリストの要求を聞き入れるというオプションである。「日本人はやはりカネをだす」という事例をつくる流れに落ちつくのではないか。そんな気がしてならない。(敬称略)