遅れてきた1通のハガキ

年賀状のやりとりもほとんど終えたと思った今日、1通のハガキが郵便ポストに入っていた。

誰かと思って宛名をみると、F氏の名字が読めた。

「そういえば今年は年賀状が来ていなかった、、、」

2008年に仕事でお目にかかった人である。共に船で上海に行く仕事で、船上でいろいろと語り合った。以後は再会していないが、年賀状のやりとりは続いていた。

私よりわずかに年齢が上で、旅の間は頼りになる兄貴という存在だった。

マンションのエレベーターのボタンを押す。私1人である。中に入りながらハガキを裏返す。「寒中お見舞い申し上げます」ではじまっていた。

身内の誰かが亡くなられたのだと思いながら、エレベーターの箱の中で文面を読みはじめた。すぐにF氏の奥様が書かれたハガキであることがわかった。というのも、昨年4月にF氏は他界していたからだ。

その事実を知った数秒後、両眼からいくつかの滴が頬をつたっていた。そしてエレベーターの中でしずかにF氏の名前を口にした。

自分でも、これほど瞬時に涙が溢れるとは思っていなかった。どういう経緯で亡くなったかは記されていないが、文面の最後に「上海までの洋上生活は楽しかったようです」と結ばれていた。

その文面を読んで、再度F氏の名前を呼ぶと涙がまた溢れた。