イスラム国に拘束された日本人の人質事件は日本だけでなく、世界中のメディアで大きく扱われている。

本稿を執筆している日本時間29日正午現在、フリーランス・ジャーナリストの後藤健二さんは解放されておらず、余談を許さない状勢だ。

湯川遙菜さんと後藤さんの映像が公開されてからほぼ10日。日本では2人に関心が集中しているが、実はイスラム国が拘束している人質は2人だけではない(解放か殺害か、人質の明暗を分けるもの)。

iraq1.jpg

イラクの若者に軍事訓練をする米兵

by the Pentagon

イスラム国と人質

イスラム国に拘束されている日本人2名をいかに救出するか―。

アメリカ政府は2億ドル(約237億円)という身代金を払うべきではないと、日本政府に警告している。一貫してテロリストの要求には応じない方針だ。

身代金を払わなかったことから、昨年8月、イスラム国に拘束されていたジャーナリストのジェームズ・フォーリーが殺害されている。

アメリカ政府は人命よりも犯人たちの要求を拒否することの方が重要と判断している。日本政府にもそうした行動を期待する。ただフランスやスペイン、トルコなどは違う方針で、すでにイスラム国と交渉して拘束されていた人質を解放させた。

3政府は公式には認めていないが、身代金をテロリストに支払ったと解釈していい。それでは安倍はアメリカの警告に従うのか。それとも3国の歩んだ道を歩むのか。

安倍は迷っているかに見える。

というのも過去2日の言動に矛盾があるからだ。テロリストも安倍の言動を注視しているはずだ。安倍は 「人命第一」という表現を使った。これは身代金を支払ってでも助けるべきとの意味に受け取れる。

しかし、「日本はテロに屈することなく国際社会によるテロとの戦いに貢献していく」とも述べた。この言葉にはテロリストの要求を飲まないとの意思にも思える。いったいどちらなのか。

アメリカはできるだけの協力をすると言っているが、オバマの一般教書演説でも強調されたように、「(イスラム国を)最終的に壊滅する」意気込みで、「日本よ間違っても身代金は払うな」との考えだ。昨晩、FMラジオJ-WAVEの番組に出演してパーソナリティーの堤未果とその点を話しあった。

今日になっても官房長官の菅は記者会見で「人命最優先に取り組んでいる」と述べた。「身代金は支払うのか」との質問には言葉を濁す。「払うつもりはない」と断言しないのだ。

これは水面下でイスラム国と接触し、多額の身代金を払う用意があるということに等しい。イスラム国はたぶん値段交渉には応じないだろう。

今のような状況で、政府内に集まった重要な情報をメディアに漏らすことほど愚かなことはないと承知している。日本政府がアメリカのように特殊部隊をシリアに派遣するというオプションはもたないはずだ。アメリカはジェームズ・フォーリーを救出するために特殊部隊を送り込み、失敗したと言われる。

日本政府がもっとも歩みそうな道はテロリストの要求を聞き入れるというオプションである。「日本人はやはりカネをだす」という事例をつくる流れに落ちつくのではないか。そんな気がしてならない。(敬称略)

「ヒラリーが勝つよ。賭けてもいい」

世界的に著名な投資家ウォーレン・バフェット氏は2014年10月、カリフォルニア州で行った講演会でこう言った。

「僕は普段、こんなことを簡単に口にしないんだ」

天才的な相場観を持つと言われるバフェット氏の発言だけに、ヒラリー・クリントン前国務長官(67歳)が次期大統領になるという予測は説得力を持つように思われる(バフェット氏が見る2016年米大統領選)。

hillary1.jpg

2012年8月、南アフリカでネルソン・マンデラ氏と。by the White House

「こんなことをしていたらテロリストが増えるだけ」

米バラク・オバマ政権が特定の中東諸国で進めているテロ掃討作戦は、効果をあげるどころかテロリストを助長させているだけだと、中央情報局(CIA)の元分析官が警鐘を鳴らしている。

CIAに27年間勤務したレイ・マクガバン氏は、特に無人攻撃機ドローンによる誤爆や民間人を巻き込む攻撃が反米感情を高めており、負の連鎖が拡大していると述べる(テロリスト量産装置と化した米軍のドローン)。

predator1.jpg

by the Pentagon